リユート村の弟子
「では話しに行きますぞ」
という訳でパンダの養父へ声を掛けに行くと何やら客と話をしているようですな。
「おやさね。どうしたのさね」
「あっちの村へとコウが行きたがっているのでついでに送るか聞きに来たのですぞ」
「そうさね……どうしたものさね」
やや困った様子でパンダの養父が考えてますぞ。
「どうしたのですかな?」
「ああ、この辺りで出店をよくしてるからか、昔のお客に声を掛けられる事が多いさね。それで弟子たちの所にコツを教えに行ってくれないかとお願いされてるさね。ちなみにお金が支払われるさね」
ううむ……パンダの養父はパンダの付き添い枠でお義父さんと一緒に屋台をして貰っているのですぞ。
ここで荒稼ぎをして良いのか悩ましい問題ですな。
「なんでそんな依頼が来るのですかな?」
「波の影響で飢饉を懸念して、普段は食べない代物も料理として美味しく出せるようにしたいようさね」
「バイオプラントを怠け豚の家から広めているので問題ないはずですぞ?」
「それだけだと飽きるさね」
パンダの養父の言い分もわからなくは無いですぞ。
フィロリアル様も魔物の肉だけでは飽きてしまわれますから色々と提供して食べて貰っているのですぞ。
お義父さんはフィロリアル様は足が生えている物は椅子と机以外は何でも食べると仰っていたそうですが違うのですぞ。
「近場のリユート村で弟子が居て試験に一度落ちたので助け船としてそれとなく行ってほしいと言われたのさね」
ふむ……? そんな催しがあったのですかな?
今までそんな事は無かったと思いますが……いえ、なんか記憶の片隅で見たような気がしましたぞ。
「たぶん、大丈夫な気がしますぞ。丁度その村にはお義父さんがいらっしゃいますからな。もしかしたら行くまでもなく解決してるかもしれないですぞ」
「ああ、なるほど。盾の勇者様が居るならきっと問題ないさね。関わって無かったら後で手伝うさね。じゃあそう伝えておくさね」
パンダの養父もお義父さんの料理の腕前は知っておりますぞ。
よく一緒に作って下さってフィロリアル様達は大喜びですからな。
という訳でパンダの養父はリユート村の件に関しては後回しにすることにしてコウたちと一緒にパンダの村へと一旦戻る事にしたのですな。
「じゃあいこー」
「キタムラ殿」
そうして準備をしているとエクレアとワニ男が何やらこちらに声を掛けて来ました。
「なんですかな? 休まないのですかな?」
「ある程度休んだのでな。魔法による生命力の回復も受けて改善しつつある」
ふむ……一日でそこそこ回復したようですな。
ですがまだ疲労の色はあるようでワニ男は心配しているのでしょう。
「少量の運動として特に予定が無いのならば父の領地を見てきてよいだろうか? 足の速いフィロリアルが居るとの話であろう? 貸していただけないか?」
「誰か行きたいフィロリアル様はいらっしゃいますかなー?」
「走るのー? いきたーい」
と、何名かのフィロリアル様が挙手してくださいましたぞ。
エクレアたちが様子見に行くのですな
さて……俺は今日、どうしたら良いでしょうかな?
コウについていってパンダの村で遊ぶか、それともエクレアたちと一緒に行くフィロリアル様についていくか。
「キタムラーコウ、エルメロとおじさんと一緒にみんなと遊んでるから後で来てくれたらいいー」
コウがここで挙手してますぞ。
「わかりました。ではコウ、みんなを任せるのですぞ」
「わーい。ラフーやリファナと一緒にねーエルメロから色々とお勉強するんだよ。楽しくお歌を歌ってみんなで笑うのー」
「ふふ……ではお先に行くさね」
「ではいってらっしゃいですぞ」
という訳でコウたちを俺はポータルで飛ばしました。
「ではエクレアとワニ男、心配なのと暇なので付いていきますぞ」
「そこまで露骨に暇と言うのはどうなのだ?」
「別にそこまでしなくても良いと思うが……まあ、しょうがないのか?」
「行きますわよー! では出発しますわ!」
そんな訳で予定を変更しつつ俺たちは将来、お義父さんの領地となるはずのお姉さんの村の隣にあるエクレアの実家へと向かう事にしましたな。
とは思いつつ……昨夜見た夢が非常に気になっておりますぞ。
何か……不吉な事が起こらない事を祈るばかりですな。
「いってらっしゃい」
「ウサギ男、明日は予定通りに行動するのですぞ」
見送るウサギ男に俺はしっかりと釘を刺しますぞ。
「勝手に変な役目を与えないでほしいのですけど……」
「逃げたらギルティですな。何が何でもやってもらいますぞ」
じゃないと怠け豚辺りに頼むことになりますぞ。
それは不服も良い所ですからな。
今日も空中ブランコの網をハンモックにして爆睡してますぞ。
「好き好んで妙な役をさせられましても……」
「お義父さんに好かれる方法を教えた代わりだと思えですぞ」
「実践する暇ないですけどね」
ええい、屁理屈がうるさいですぞ。
お前も開拓妖精にしてやりますかな! いや、したら喜びそうなのでダメですな。
何にしても、こうして俺たちは一路、エクレアの元領地へと行ったのですぞ。
「うぷ……」
「大丈夫ですか? エクレール様」
エクレアが目的地近くまで来た所でフィロリアル様の高貴な酔いによって青ざめて居ますぞ。
「だ、大丈夫だ。しかし……多少は乗りなれているはずなのにどうしてここまで乗り物酔いを……」
「自分も最初は酔った。皆、最初は酔いますが馴れるしかない」
「ううむ……少しずつ慣らしていきたい所であるな」
まだ全快ではないエクレアはそれでもと歩きで領地の廃墟となった町へと到着しましたな。
懐かしいですな。
最初の世界では婚約者が復興させたとも言われるエクレアの領地である町ですぞ。
もしもですぞ。もしもワニ男をお義父さんが最初の奴隷として選んだ場合、ここがお義父さんの領地となったのかもしれない場所ですな。
ワニ男だけ選んだルートでのアダルティなフィーロたんを思い出しつつ、廃墟となった町を歩きますぞ。
波の被害はお姉さんの村と同じく爪痕として残っておりますな。
そんな町の一角でエクレアは足を止めて地面を見つめましたぞ。
「……」
「エクレール様」
「……ああ、ここで父が息を引き取った。雄々しく、民を守る為に前に出ていたそうだ」
「そう……だったな。自分は避難を任されて離れていたので死の瞬間には立ち会う事は出来なかった」
酷い戦いだった……とワニ男とエクレアは波での被害を思い出しているようですぞ。
お姉さんも逃げるだけで精一杯だったような話があるそうですぞ。
波のボスは三頭の頭を持つ次元ノケルベロスだったそうですな。
俺が聞いた話を纏めると……エクレアの親たちが注意を引き付け連携して戦ったけれど強く、返り討ちにあったそうですぞ。
それがお姉さんの村の方まで来て虐殺したとの話ですな。
ですが次元ノキメラの強さからしてそこまでのボスだったのですかな?
やや疑問ではありますが……ゲーム知識を参考にしても良い話では無いですな。
「エクレアは戦ったのですかな? 波のボスと」
「私の名前を何度も間違えるのは今回は気にしないようにしよう……私はその場にはいなかったのだ。父の所で波が起こったと聞いて急いで駆けつけた頃には……」
ふむ、立ち会うことが出来なかったのですな。
うまくその場にいたらエクレアの親は生き残れたのでしょうかな?
そのようなタラレバを数えてもキリがないと思うかもしれませんが俺はそのタラレバでここに居るのですから考えても良いはずですぞ。