新たな精霊
「うん。なんかよくわからないけど勝手にここまで降りて来ちゃってさ」
「はあ……なんとも、話に聞いてましたが相変わらずフィーロちゃんを追いかけてるんですか?」
相変わらず? この精霊も俺の事を知っているような口ぶりですぞ。
隣の精霊もそうですがどこかで会った事がありましたかな?
「そうそう、現在フィーロを再現しようとしている最中に色々と仕出かしてる最中だよ。好きにやれとは言ったけどね」
「そうですか……相変わらずのようですね。まあ、個人的には暴れるのは程々にしてほしいですね」
しかし……なんでしょう。この言葉のどこかにトゲがあるような感覚は。
誰かに似ている様な気がしますな。
「ああ、一応自己紹介をすべきかな? 彼女は……将来的には防御系、服とか鎧、盾とかの聖武器の精霊になる子だよ。具体的には最初の世界の尚文くんが着てた鎧に宿る感じだね。あ、分岐したこっちの世界の槌の眷属器のサポートも今はしてるよ。いずれは鎧としてって感じ」
「はい。私に因縁もありますし相性も良いですからね」
「お義父さんの鎧ですかな? 後年、お義父さんの鎧は聖武器になるのですな」
確かに納得の性能を宿した凄い鎧でしたからあり得る話ではありますぞ。
「はい。ある程度、馴染んだら旅だって担当世界で柱をして行くことになります」
「そうなのですな」
精霊としての役割はよくわかりませんが、何やらお仕事でやっているようですぞ。
「……好き勝手して良いと槍の精霊様は仰ってますけど程々にしないと……どこかで撲殺されたり刺されますよ?」
ゾクっと目の前の精霊が背筋が凍りつくような事を言いましたぞ。
脳裏にお姉さんに槌で殴られた時の事が思い出されますぞ。
「それとフィーロちゃんを病ませたショックで廃人にもなってましたし……」
「ヒィ……」
あの時の事が少し思い出されました。
「や、槍の精霊。俺の悪評を風聞するなですぞ」
「別に風聞してる訳じゃなく精霊故に認知出来てるだけだよ。一応、こっちの事情も知ってはいるからね。何せ彼女は尚文くんとは親しかった訳だし」
「なんですと?」
お義父さんと親しい? つまり……。
「という事は……お姉さんですかな?」
お姉さんが死後、半分が精霊になったのでしょうかな?
「違います。ラフタリアさんがフィーロちゃんをちゃん付けで呼びますか?」
「彼女は精霊種じゃないねー」
「ふむ……お姉さんのお姉さんやパンダとかですかな?」
「それも違いますよ。サディナさんにはお世話になりましたがラーサズサさんは商品をお預けした関係ですね」
「まー……難易度はそこそこ高めかな? ヒントとしてはそこに叔父も一緒に居るね。近い時期に死んで半分が精霊になった精霊種だよ」
槌の精霊とか何とか言っていた精霊が上下しますぞ。
「懐かしいですね……いやー寿命で死ぬまで理解してなかったので驚きましたよ」
「精霊種だった頃に相当、色々と成長しないと精霊としての部分に強い力が宿らないからね」
む……叔父が居るのですかな?
叔父が居る精霊……。
「そこの精霊がクズでお前は虎娘ですな!」
虎娘にとって叔父がクズだったはずですぞ。
そして虎娘は精霊としてお義父さんのサポートをしていると聞きましたし俺の夢枕にも立った覚えがあるので間違いないはずですぞ。
というかクズめ! 精霊にまでなっているのですな! 杖の精霊はどこまでクズにほれ込んでいるのでしょうか。
きっと死後も魂と融合して精霊にしたのでしょう。
「違います。ここまでヒントを出して外すのは、本当に槍の勇者様ですね。まったく学習してないようです」
「何と言いますか……お変わりがないのですね。元気なようで何よりです」
違うのですかな?
「君の知る、村で親戚が居る知り合いって所で探せばわかるはずなのにそれでも外す鈍感というか愚かさ……」
「うるさいですぞ! さっさと教えるのですぞ!」
「まあ、君が最初にラフタリアちゃんと間違えた所はある意味、かなり正解に近かったんじゃない?」
と、槍の精霊が思わせぶりで答えを言いませんぞ。
いい加減教えろですぞ! と俺は二つの精霊の光を凝視すると薄っすらと何やら動物の姿が見えますぞ。
この姿は……?
「そうですね……盾の勇者様、ナオフミ様は私を幼いころのラフタリアさんみたいで可愛いと仰っていましたからねぇ……」
「俺もこっちだとラフタリアちゃんみたいだなって思うよ。生前の方が可愛げあったんじゃない?」
「余計なお世話です。何時までも子供ではいられないじゃないですか、責任ある立場になる訳ですから……それでもまたナオフミ様の元へ行って昔みたいに話がしたいです。けど難しいですね」
モグラが二匹、形作られているように見えたのですぞ。
「あんまり可愛げある事をしてるとラフタリアちゃんに嫉妬されて大変じゃない? 一度命乞いしてラフタリアちゃんを困らせてたよね」
「う……話を変えましょう。今回のループだと……どうやら私は忘れられちゃったみたいですね。それでもラフタリアさん達が助けられたのは幸いです。幾ら無数にある可能性とは言え、助けて貰える方が幸せですものね」
あ! ですぞ。
モグラの所で奴隷狩りが来るのをすっかり忘れてましたぞ。
つまりこの精霊二つはモグラどもですかな!?
「モグラですかな!?」
「ここまで話てやっと気づくとか、実に君らしいね。そう、彼女たちはこの世界に居る精霊種なんだよ。で、君たちの所でいろいろと学んで人生を終えた後に半分が精霊になったんだ」
俺もこんな感じで精霊種としての生を生きたんだよ。と槍の精霊が何やら抜かしてますぞ。
く……確かにお義父さんはモグラを昔のお姉さんみたいで可愛い所があると仰っていたのを覚えております。
なんとも気まずい状態ですぞ。
俺がループしてるのをお姉さんに知られて助けずにループしている最中に遭遇したような状況に近いですぞ。
「なんか困った顔をしてますね」
「まあ、ラフタリアちゃんの事を苦手に思ってるから重ねてるんじゃない? 何より気まずいでしょ。すっかり助けるの忘れちゃあさ」
「言いたいことはありますけどね」
ちなみにモグラもその叔父も爪と槌を使っていましたぞ。
ここで俺を罰するためにどこからともなく槌を出して撲殺しようとしたりしませんかな?
お姉さんにボコボコにされた記憶があるので返答には注意が必要かもしれませんぞ。
「ループの因果が私にも影響を及ぼしているお陰でこうして精霊としての格も上がってますので別に怒っては無いです。もしかしたら懐かしい人とも会えるかもしれないですから」
ふむ……どうやら命拾いは出来たようですぞ。
これで腹いせにループ出来ないようにアークが施してくれた何かを外されて元の日本に戻されて何もかも忘れさせられたら溜まったものじゃないですぞ。
精霊ですから出来るような気もしますな。
「ここで気まずさを全開にさせるために彼女を槍の精霊としてしばらく交代しようかなー? チェンジを望んでたよね?」
槍の精霊がここぞとばかりに挑発してきました。
「ダメですぞ!」
お姉さんみたいなところのあるモグラが俺の槍に宿る? 非常に気まずいですぞ。
チクられてお姉さんが俺を撲殺に来たら困るのですぞ。
「相性がありますから無理ですよ。するつもりも無いでしょう? いじわるしたくなるのは分かりますけど程々にしてください」
モグラが苦笑気味に助け舟を出してくれましたぞ。
何にしても機嫌を損ねたら何をされるかわからないかもしれない因子ですぞ。
もう少しモグラに関して配慮しなくてはいけないかもしれません。
お義父さんが可愛がっていたという所はちょっと羨ましい所ではありますな。