神聖な盗賊
「本音で言えば奴隷なんて扱えないと思ってたんだけどねー……酷すぎると思ってさ」
チラッとお義父さんは雑種のリザードマン達の方を盗み見ますぞ。
「奴隷たちに笑顔で魔物を倒せる様に教えるとか元康くんに言われたし、未来の俺はどんな外道なんだって思ったもんだよ」
「実際はどうなんだ?」
「まあ……シオン達が男だから少しは気が楽かな。それでもどうかと思うけど、サーカスをして貰ってるけどやる気があって助かってるよ」
「さっきのやり取りからして無理やり働かせてるわけじゃねえみたいだし良いだろ」
ちなみにお義父さんは奴隷たちにしっかりと給金を与えてますぞ。
雑種のリザードマン達は必要なものを買うために貰っていますがおつりはそのまま返してましたぞ。
ヴォルフは給金は使うとかそういうのが出来ないのでそのまま返してましたぞ。
「実にアンちゃんらしいじゃねえか。じゃあ装備はどうするんだ?」
「アレですぞ。お義父さん、蛮族の鎧を作ってもらうのが良いと思いますぞ」
お義父さんのトレードマーク的な鎧ですぞ。アレがぴったりですな。
ちなみに俺の装備はすでに自作済みですので問題ないですな。
フィロリアル様の抜け羽を集めればいつでも作成可能ですぞ。
「よく知ってるじゃねえか、それで良いのか?」
「もちろんですぞ。必要素材は分かってますぞ」
槍からポロポロと素材を出して渡しますぞ。
「何処から出てくるんだって言いたくなるがアンちゃんたちは勇者なんだからありえるか」
「なんでも勇者だからで片付いちゃいそう」
HAHAHA、お義父さんの要望なら出来る限りなんでも片づけますぞ。
ちなみにウェポンコピーは既にお義父さんに教えておりますのでゼルトブルでかなりの盾を網羅してますぞ。
「後はこの武器屋に隕鉄の盾があるのが分かってますので後で見せてほしいのですぞ」
「本当、なんでも知ってやがるな」
「後は武器屋の奥で少し話をしますぞ」
この先はメルロマルクに留まった時と同じくドロップ品を武器屋の親父に預けて上手い事、支給装備に回してもらうことにしましたぞ。
交渉は問題なく進みましたぞ。
後は三勇教が確信を持たない範囲で奴隷たちの装備を揃えさせましたぞ。
フィロリアル様達の装備? 管轄は魔物商人らしいのですぐに発注して貰えてますぞ。
メルロマルクにとどまったループでサクラちゃんは天使姿メインで二刀流でしたがフィーロたんはまだ卵なので武器の用意はまだしておりません。
そして今回、波に参加するフィロリアル様で人が扱う武器を好んで使う方の数はそこまでいないのですぞ。
「んじゃ急いでアンちゃんの鎧を優先して作るで良いんだな? 残りは……まあ色々と用意してやるよ」
武器屋の親父が苦笑気味に俺が渡した賄賂の武具を誤魔化して渡すことになりましたぞ。
雑種のリザードマンは斧を用意するそうですな。
ウサギ男は杖を求めましたな。覚えた魔法を使うつもりですが雑種のリザードマンに言われて短剣も持たされることになったそうですぞ。
とりあえず武器屋で注文出来る代物はしましたな。
「ま、頑張れよアンちゃん達! 応援してるぜ」
「うん。では後日」
と言う訳で武器屋を後にしましたぞ。
「なかなか良い人格者な方でしたね」
「武器の品揃えや質も悪くは無かったな」
「そうだね。良い人だとは思うよ」
お義父さんが奴隷達の感想に同意しましたぞ。
「クロ、剣を使うかなー」
「馴れない事はすべきでは無いですわよ」
「うーん」
そうして後日ですな。
お義父さんが見慣れた蛮族の鎧を試着しましたぞ。
「ふむ……なかなか様になってるじゃないか。野性味があると皆が喜びそうだな」
「とても似合ってますよ」
「わおーん!」
奴隷達が各々お義父さんの格好を褒めておりますぞ。
「なんでシオンは子供を相手にするみたいな言い方してるのか気になるけど……まあ、こんなもんなのかなー」
「蛮族の鎧が似合ってるじゃねえか」
「この蛮族ってさ」
「ああ、この国じゃ亜人獣人を意味するぜ? アンちゃんは盾の勇者だからそっちに寄った方が好まれるだろ?」
武器屋の親父の返事に奴隷達は揃って頷いてますぞ。
独特の感性で似合うと思うデザインの鎧だったのですな。
やはりお義父さんはこの鎧を着てると俺もこれから戦いだと意識を切り替えられますぞ。
みんな加工された武器を手にしましたぞ。
「じゃあアンちゃん達、頑張れよ」
「うん。頑張るよ。親父さんの期待に応えられるようにね」
「はは、アンちゃんはその顔で居るのが一番だと思うぜ。あんまりスレた顔をせずに仲良くやって行ってくれよ」
武器屋の親父の言葉に俺は最初の世界のお義父さんを思い出してしまいますぞ。
辛かったでしょうな。
それでもお姉さんが居たのできっと少しは気を楽にしていたのでしょう。
そう思いたいですな。
さて、次に立ち寄るのは龍刻の砂時計ですぞ。
本来はお義父さんの鎧を受け取った日に行くと錬と樹に会えるのですが日数を調整して今日会えますぞ。
と言う訳で施設に行きますな。
ですが施設の管理をしているのは三勇教の連中ですからヴォルフは建物の外で待機させておく事にする様ですぞ。
「ヴォルフはここで待ってて」
「くーん……」
犬のキールは入れる事は出来ましたが狼男のヴォルフはさすがに難しいだろうと言う話でしたからな。
重要施設には入れられないのを前提に今回の買い出しに同行を許可されたのでヴォルフもそこまで駄々を捏ねる事はありませんでしたぞ。
「まあ……ちょっと面倒な事になりそうだからね。シオンもテオも大人しくしてるんだよ」
「ああ」
「わかってますよ」
それからお義父さんは俺とユキちゃん達に顔を向けましたぞ。
「あー……元康くんは大丈夫だよね」
「もちろんですぞ」
ここで会うのは錬と樹ですからな。三勇教の連中などどうでも良い程度ですぞ。
「ねーもとー闇の剣士はー?」
「もうすぐ会えますぞ」
ちょうど錬がここに居るはずですからな。
クロちゃんに見て貰うのが良いでしょう。
錬をとても気に入って遊んで居ましたからな。
そんな訳で俺達は建物の中に入りますぞ。
「ブ、ブー!」
入ると同時に豚が出迎えですな。
何やら強めの怒気の籠った鳴き声がしましたな。
「あ? なんだ?」
お義父さんが演技とばかりにガラの悪い返答をしましたぞ。
「ブ、ブブ」
バツが悪そうに豚は一度咳をしましたぞ。
「ああ、明日が波らしいから来た」
波が近いですからな。お義父さんが用件を伝えますぞ。
ですが豚は案内をする前に何やら鳴きますぞ。
「ブブブ、ブブ」
「なんで襲って来た盗賊の話をしなくちゃいけないんだ?」
なんでもこの三勇教の豚はお義父さんに盗賊に襲われたそうですが怪我が無いか、盗賊のその後を聞いてきたそうですぞ。
「盗賊のその後なんて知らん」
「ブブブ」
「……」
「……」
雑種のリザードマンとウサギ男は成り行きを不快そうな顔をして沈黙を貫いてますぞ。
間に入ってはいけないみたいですな。
後で聞いた所だと盗賊はしかるべき所に連行する事を注意されたそうですな。
アレですな。奴隷としてシルトヴェルトで売ってる真実は把握出来ない、けれど何らかの処理をされているのは分かっている。
だから遠回しに文句を言いたいけれど言えないから盗賊を自警団に連行しろと注意してるのでしょう。
お義父さん曰く、この豚の家族……兄弟なり親なりが盗賊として襲撃して捕縛、シルトヴェルトに出荷されたのを個人の範囲で文句を言おうとしたという事らしいですぞ。
自業自得であるのに文句を言ってるのですな。
三勇教はどうやら人食いサーカスと風聞を広げようとしているようでしたからな。
ですが各地を巡るサーカスの何処にもそれらしい証拠は無く、お義父さんのサーカスはそこそこ盛況なのですぞ。
興行内容もメルロマルクに合わせた亜人獣人の虐待サーカスなので内容に文句は言えないですぞ。
「どうして盗賊なんて犯罪者の話をここで咎められるんだ? まさか、間違っても神聖を謳う教徒が盗賊だったとでも?」
お義父さんの挑発に豚が激昂するような顔になりました。
「ブブ!」
「ブ、ブブ――」
そこに他の豚が注意するように豚を注意したので豚は再度咳をして苦虫をかみつぶしたような顔で案内を再開したそうですぞ。
ちなみに龍刻の砂時計はシルトヴェルトで既に確認しておりますしポータルスキルをお義父さんは既に習得済みですぞ。
未来での出来事をある程度既に伝えておりますな。
今回は錬や樹を刺激しないように卒無くを意識するそうですぞ。