包囲網
「あらー? そんなにナオフミちゃんは気になるのかしらー? お姉さん妬いちゃおうかしら?」
お姉さんのお姉さんが茶化しておりますぞ。
こういう時はお姉さんのお姉さんは微塵も思っていないのがさすがの俺でもわかっていますぞ。
「まあ……サディナさんやエルメロさんも活躍は出来ると思うよ。ただ……確かにパンダはサーカスで居るなら欲しい人材かもね」
ゾウ、パンダ、ライオン、チーター、馬はサーカスっぽいとお義父さんは続けました。
「エルメロちゃんも適任なのね」
「一応ね。もっとダイナミックにエルメロさんをプッシュする手もあるけど……牢屋に入れて見てもらう枠とショーでフィロリアル達と演技して貰ってるからねー」
「種族が種族なので身なりの良い客に時々攻撃されますけどね」
ゾウが苦笑気味に答えますぞ。
不届きな客は厳重注意してますぞ。
どうもシルトヴェルトとの戦争に出た軍人や兵士などはゾウの脅威を知っているようですぞ。
「まあ……私が入っている檻の前で聞くシルトヴェルト側の敗走の武勇伝は……性格が悪いですが嫌な気持ちにはならずに聞けますので悪くは無いです」
ゾウがくすくすと含みのある笑いをしておりますぞ。
「大丈夫エルメロさん?」
「ええ、あれほど誇らしげに自慢している方がメルロマルク側ではあのように言われているのを聞くと事実がどのように歪曲しているのか比べるのは中々に面白いものです」
どうやらゾウの実家であるマンモス共に関する話のようですな。
おそらくマンモスが敗走した際の出来事をゾウの前で貴族が武勇伝のように語っていたのでしょう。
ちなみにゾウは少しだけメルロマルクの言葉が分かるとの話ですぞ。
片言でも判断できるという事ですな。
「ちょっと闇があるなー……エルメロさん。嫌だったら言ってね。出来る限りは対処するから」
「問題ありません。むしろコウさんを始めとしたフィロリアル達がけがをしないかが不安ですね。コウさんが客の態度を不満そうにしているのをなだめるのに苦労してます」
ゾウは心も広いのですぞ。
そしてコウは順調にゾウから教わっているようで安心ですぞ。
ゾウに対して罵倒に近い武勇伝を語る貴族にブーと抗議してましたぞ。
お義父さんに怒られて臆病になってしまう事はきっと避けられてますぞ。
何にしてもお義父さんのサーカス拡張計画の為、ユキちゃんにもサーカスで草レースをさせてあげたい俺の野望の為にもいろいろと動かねばいけません。
非常に不服ですが怠け豚にバイオプラントを預けることにしましょう。
「何にしてもパンダかー……」
「手先も跳ね回るのも上手なので演目に良い人材なのは間違いないですぞ。しかも金勘定も得意ですな」
「適任でスカウトしたいのは分かったけどいないからどうしようもないね……」
チッ! スカウト失敗したのが響いてますぞ。
お義父さんが声をかければ一発だと思ったのですがな。
「そういえばパンダの同郷の奴が城下町にいるそうですぞ。そっちに声をかけてみますかな? 探さないといけませんな」
むしろどこで店をやっているのですかな?
「ラーサの親戚がいるのですか」
ゾウは知らなかったようですぞ。
「うーん……」
「もしくはパンダの実家の村へと行きますかな?」
ポータルは所持しているので一発で行けますぞ。
「なんか元康くん、その人の事ずいぶんと知ってない?」
「お義父さんとは色々と腐れ縁とばかりに出会いますからな。家族構成もループで把握済みですぞ」
そういえばパンダの初恋の相手の娘である虎娘をクズに斡旋しなくてはいけませんな。
ですが今のメルロマルクの城には赤豚が居ますから見せるのは避けるべきですぞ。
シルトヴェルトの使者もシルトヴェルト側からして虎娘の種族をお義父さんの配下にするのは困ると渋い顔をしていたのを覚えてますぞ。
下手に虎娘を赤豚に知られたら迷うことなく虎娘を謀殺しかねませんな。
さすがの俺もそんな真似はしませんぞ。まずは赤豚の排除をしてからクズに虎娘を見せて戦意を削り取ってやりますぞ。
「ラーサ……逃げられないじゃないの。どんだけ知られてるのよ」
「あらー」
「ちなみにゾウの実家も全て知ってますぞ」
「うっ……お願いですから言わないでください」
おや、ゾウに止められてしまいましたぞ。
ゾウの武勇伝に出来るのですがな。
「まあ、ゾウの家の問題はメルロマルクの問題が片付いてからやりますぞ」
「お願いですからやめて……」
「エルメロちゃん大変ねーお姉さんはー?」
「お姉さんのお姉さんはお姉さんを探していたのですぞ」
「あらーそれ以外は無いのー?」
「無いですな」
「あらーそうよー。いやーお姉さんエルメロちゃんみたいな大変な過去無くてよかったわー」
「あなた……」
ゾウがお姉さんのお姉さんに呆れるような声で見つめていますぞ。
思えばお姉さんのお姉さんはどうにもよくわかりませんな。
お姉さんの両親と親しかったくらいしか知りませんぞ。
「まあまあ……元康くんはエルメロさんには善意的に接しているからエルメロさんが本当に困ることはしないと思うよ?」
「そうだとよいのですが……」
「それで元康くん。件のパンダの家を知ってるそうだけど、行って大丈夫な所なの?」
「問題ないと思いますぞ? パンダの祖父は現状パンダより強い気の使い手ですからな。パンダの代わりに祖父をスカウトするのも手ですな」
やめてくれってんだよ! っと脳内でパンダが抗議しましたがきっと気のせいでしょう。
「パンダの村はパンダが沢山ですぞ」
「うわー……夢のある場所だねー」
パンダの村に行くとお義父さんは楽しそうにしてましたぞ。
「そういえばパンダの祖父はメルロマルクの老婆と旧知の宿敵で出会うと仲良く戦っていましたぞ」
「そんな人もいるの? どんどん新情報が出てくるんだけど」
「そうですなー……老婆は戦闘顧問としてどのループでも有能な人材ですぞ。病で弱っておりますがお義父さんが善行をして、薬を飲ませると心から協力して下さいます」
「それってゲーム的に表現すると善行値足りずにスカウトできないんじゃない?」
おや? その可能性がありますかな?
「まあ、病が完治するのに少し時間が必要ではありますが説得を続ければ出来ると思いますぞ」
病を直接治すことでも恩義を感じてくださっているようでした。
「そっちの方は自信が無いなぁ……下手にループ知識で声をかけると勧誘失敗しそう」
「確かに、ラーサに声をかける失敗をしてますからあり得ますね」
うぐ……ですぞ。
「そうだね。俺も元康くんに助けられたけど信じるのは中々大変だったし」
「ではどうしますかな?」
「う……ちょっとパンダの村ってのは興味あるかも、老婆の方は善行しないと行けなさそうだけどパンダの方は娘さんと話をしてみればどうにかなりそう」
「まあ、ラーサは金さえ積めば引き受けてくれると思います。槍の勇者様の交渉を誤解してるだけなので」
「元康くん一体どんな交渉したの?」
「特に何も問題は無いですぞ」
「いえ……まるで老人の介護……性的な意味も含めてみたいな言い回しでしたよ」
なんと、俺の勧誘はそんな風に受け取られていたのですかな?
確かにそれっぽい返事をパンダはしていたような気がしますな。
「元康くん。俺を老人として紹介したの? というかそのパンダの人に何を……」
「誤解ですぞ」
「槍の勇者様の盾の勇者様の呼び方が一番の問題でしたね」
「ああ……なるほど、事情を知らないとそうなるよね。俺もそう思ったし……俺の童貞に関してかなりしつこく聞いてきたし誤解かちょっと怪しいなぁ」
お義父さんがなぜか黄昏てますぞ。
何にしてもこれ以上評価を下げる訳にはいきませんぞ!
「では挨拶だけでも行ってみますかな」
「まあ、偶然立ち寄った旅人って事でも良いから見てみたいな。パンダの村」
「わかりました。では出発ですぞ」