娯楽に割く余裕
「サディナさんでも止められないかー……」
「ラフタリアちゃんが特に頑張っててね。今のメルロマルクじゃ虐待する方を望まれたりするから辞めた方が良いんじゃないかしらーって言っても引かないのよー」
「うーん……まあ、テオとシオンの虐待ショーが一定の需要があるのは否定できない」
お義父さんが渋い顔で同意しますぞ。
確かにそこそこ初めのショーは気に入っている客がいるのも事実ですぞ。
お義父さんが辛い場合はなまけ豚が代行していますな。
最近では雑種のリザードマンとウサギ男も慣れてますがな。
「かといってラフタリアちゃんたちをそっちに回す気は無いよ? 飽きたって客がいるとしてもさ」
「もちろんよ。ナオフミちゃん、毎日ぐったりとしててテオちゃんやシオンちゃんの方が元気に応援してるくらいだものねー」
お姉さんのお姉さんがクスリと笑っておりますぞ。
「まあ……じゃあ本格的な練習としてラフタリアちゃんたちが参加できそうなのだと……フィロリアル達のコーラスのバックダンサーな感じで背後でジャグリングとか背中に乗って両手を振るとかかなー」
「キールちゃんは綱渡りや空中ブランコをやりたいって言ってたわよ」
「キールくんは元気だなー……奴隷商人の配下の話だと失敗して叱られる役とか指導が入る奴だよ。あれ。上手く渡るのは人の方で亜人は失敗するって筋書きなんだよね」
嘆かわしいとお義父さんは仰いました。
「そもそもねー……」
やや愚痴り気味にお義父さんはテーブルに肘を載せておりますな。
「思ったより儲からない……現状は奴隷商人の子飼いで貴族から奴隷を預かって運ぶ、斡旋がメインって感じなんだよね」
そうですなぁ。
名目としてはサーカスでいろいろとやってはいるのですが収益の伸びは芳しくないのですぞ。
もちろん、サーカスの雰囲気やテント周辺に楽し気に集まる町民や村民はいるのですがサーカスのチケットは一定の金を持つものが一部来るにすぎない状態となっております。
お義父さんや怠け豚の話では三勇教や盗賊狩りの方が金になってしまっている状態ですぞ。
「あらー大変ねー」
「まあまだ始まったばかりだってのはあるんだけど、それ以外の原因は分かってるんだ……どうしたものかなー」
お義父さんが行商をした際は中々に繁盛した挙句、神鳥の聖人とまで言われるのですが何か違うのですかな?
「何が理由ですかな?」
「ああ……まあ、言ってしまえば町も村も余裕がないって所だよ。波の影響で飢饉になってるんだってさ。作物が結構ダメージを受けちゃってるし、海は荒れてるから漁も上手く行かないってね。だから娯楽に割く余裕が持ちづらいって事さ。身売りも結構多い」
ふむ……確かにサーカスなどの娯楽を楽しむには生活の余裕が無くてはいけませんぞ。
波の影響で魔物も活発化しており危険もある状況、病などもあるので薬の需要はあってもサーカスは需要外だったという事ですな。
「エレナさんなんて俺がサーカス前で屋台をした方が儲かるなんて言うんだよ。道中で遭遇した魔物を捌いて安めに売ってサーカスを見てもらうほうが儲けられるってさ」
「あらー確かにナオフミちゃんのお料理、美味しいものねーお姉さんもお酒のお供を作ってほしいわ」
「屋台の馬車じゃないから。まあ……サーカス前に屋台を出すのはいいアイデアだとは思うけどね。どっちにしても安定が大事って事だよ」
うーむ……今回は今までのループとは異なることをしようと思ってお義父さんに行商に関しては避けるようにお願いしたのが裏目に出ているようですぞ。
ですがお姉さんの友人たちを探して購入するための資金を不自然じゃない範囲で確保しなくてはいけませんぞ。
メルロマルク国内をサーカスでめぐっているのにはそういった意味があるのですからな。
「なんだかんだ維持費とか、奴隷以外の雇用費、宣伝費とかエレナさんに色々と言われてるから……何か劇的な要素で国民の財布の紐を根本的に緩めないといけないかな……じゃないと虐待ショーをするサーカス止まりになっちゃう」
それこそみんなで鉱山掘りした方が儲ける結果になりそうとお義父さんが愚痴りました。
食糧問題は解決しなくてはいけないのですな。
さすがに避けることはできないのは中々歯がゆいですぞ。
ですが民衆の財布の紐を緩めるのに必要ならばこの元康、制限はどんどん解除していきますぞ。
なに、お義父さんや俺の手柄として風聞しなければよいのですぞ。
「わかりました。些か不服ではありますが俺も一肌脱ぎますぞ」
「解決手段がある感じ?」
「もちろんですぞ。後ほどお義父さんに報告しますぞ」
当然のことながらバイオプラントを俺が確保して広めるとしましょう。
「怠け豚の実家が独自開発した植物という事で食糧問題を解決できる植物を確保しますぞ。そうすれば住民たちの飢饉をある程度解決できますな」
「手だてはあるんだ?」
「本来は俺がしでかした問題でお義父さんが改良して広めることでお義父さんの手柄になるのですぞ」
「あんまり俺の活躍にすると三勇教が目を付けることになるみたいだからね。まあ……よく監査が来るよね。毎度毎度さ」
そうですな。各地の街へ行く度に監査とばかりにテント内をまさぐられますぞ。
人間の奴隷はいないのかとしつこいくらい調べられますぞ。
全てシルトヴェルトに出荷しておりますからいませんがな。この所為で身売りの引き取りは別口になってしまわれたそうですぞ。
「奴隷商が三流って言う手だてで儲けが出るのも悲しいもんだよ。シルトヴェルトでの売買が積み重なるばかりさ」
なんとも……順調に見えても中々上手く行っていなかったのですぞ。
やはりバイオプラントだけは解禁しなくてはいけないのですぞ。
そんな訳で俺はバイオプラントを確保して怠け豚の家から各町村へと広める事で国民の財布の紐を緩める事になったのですな。
「まあ、元康くんの案でメルロマルク内でも儲けが出せるようになると良いね」
「そうですな」
お義父さんの手柄に出来ないのが惜しい所ではありますがやむなしですぞ。
なんて感じに雑談しながらお義父さんとお姉さんのお姉さんが酒を飲み交わしてパンダが来るのを待っているのですが全然来ませんな。
ゾウもパンダを探しているようで酒場を出たり入ったりして知り合いに声をかけていましたぞ。
やがてゾウがこっちに来ましたぞ。
「エルメロさん、目当ての人物はいない感じ?」
「はい。槍の勇者様がラーサを再度、盾の勇者様と会わせて話がしたいと仰るので色々と声をかけて聞いてみました。どうもあの後気分転換にと仕事を受けてどこかへ行ってしまったそうで……」
「ありゃま」
ゾウの話では俺にお義父さんの警護を頼まれたことが不愉快だったという訳で何やら別の大きめの仕事を受けて出かけて行ってしまったそうですな。
「傭兵ですからあり得るとは思いましたがどうしましょうか? どうもいつ帰るかわからないそうで……言付けをしてしばらく経ってから会いに来ましょうか?」
「うーん。元康くん、その人ってどんな人なのかな?」
「お義父さんとお姉さんのお姉さんとは仲良く出来る方で、色々な事が出来る人材ですな」
「うん。それは聞いたけど……」
「サーカスにはピッタリだと思ったのですがタイミングが合いませんな」
「ピッタリって?」
「具体的にはパンダの獣人なのですぞ」
「あー……」
お義父さんもしっくり来たのか何度も頷いて下さいました。
「確かにそれなら俺も納得するね。日本人の感覚だと見世物枠としてピッタリだと思う」