琥珀色の友好
「あるいは……ラフタリアちゃん」
「なに?」
「君にとって村とは場所? それとも人のどちらだい?」
「えっと……」
お姉さんは俯きながら考え始めますぞ。
「みんなと居る場所……だと思います」
「うん。そうだね。だから今はみんなを取り戻そうと頑張ってる。場所はいずれどこでも確保すれば良いんだよ。もちろん、ここが一番だけどね」
これは遠回しにこの村の場所ではなくても村の者たちとで何処かで村を再建するのも考えて欲しいという事でしょうな。
「うん……」
ですがお姉さんは納得しているようでして居ないという顔ですぞ。
「この辺りは後で考えていこう。ね? サディナさん」
と言うお義父さんの妥協案に対してお姉さんのお姉さんはちょっとだけ考えたようでしたが頷きましたぞ。
「わかったわ。じゃあお姉さんもお手伝いするわね」
「ええ、サディナさんはラフタリアちゃん達と一緒に安全なゼルトブルで過ごしていて下さい。生活はできる限り保証しますので」
「あらー? さすがにお姉さんも養われっぱなしにはならないわよ?」
「ラフタリアちゃん達のお世話をお願いしたいのですが……」
お義父さんがそれとなく提案しますがお姉さんのお姉さんは引く様子は無いですぞ。
「もちろん、お姉さんが手伝える事を見てから判断はするわ。それで良いわよね?」
お姉さんのお姉さんなりの協力という奴ですかな?
「良いとは思いますが……」
「あのね。勇者様達はね。みんなを集めるためにサーカスをしてるんだって、手伝いたいって言ってるけどダメだって手伝わせてくれないの」
お姉さんの友人がお姉さんのお姉さんに説明しますぞ。
するとお姉さんのお姉さんはお義父さんを見つめますな。
苦笑するお義父さんはサーカスがどんなものであるのか暗にお姉さんのお姉さんに声を出さずにやりとりしているように見えました。
元々察しの良いお姉さんのお姉さんですからな、それだけで分かったようですぞ。
「わかったわ。お姉さんもしっかりと確認してからみんながお手伝い出来るか判断するから待っててね」
「本当? ちゃんとお願いしてね!」
「ブブー!」
という訳でお姉さんのお姉さんはお姉さん達と約束してから合流したのですぞ。
こうしてお姉さんのお姉さんと合流したお義父さんのサーカスはますます賑やかになりましたな。
ちなみに奴隷売買でお姉さんの村の者が居るかの確認はお姉さんのお姉さんが来る事になりましたぞ。
お義父さんからしてもお姉さんに頼むよりもお姉さんのお姉さんに来て貰う方が気が楽なんだそうですな。
なんだかんだ頼りになる方なのでしょう。
「うう……」
「やだーエルメロちゃん。まだまだお酒飲み足りないわよー」
「サディナさんは飲み過ぎだと思うけどなー」
サーカスを終えた後の仕事終わりに街にある亜人酒場にお義父さんが頑張った報酬として奴隷やゾウ、お姉さんのお姉さんを連れて行った所で、お姉さんのお姉さんがゾウを酔い潰してしまわれましたぞ。
ちなみに酒代は別口の三勇教の襲撃者を売ったお金ですな。
お姉さんのお姉さんの相手が出来るのはお義父さんだけなので俺も少し離れた所で待機ですな。
シルトヴェルトの使者と魔物商の配下は知っている店という事とお姉さんのお姉さんに酔い潰れたのでお義父さんが気を使ってお留守番となりましたな。
「ヴォルフちゃんもお酒飲まないのー?」
「ヴァウヴァウ!」
ヴォルフはお姉さんのお姉さんの誘いに関して威嚇の声を上げて居ますぞ。
「ほらほら飲みなさいなー」
「ヴァフ――」
ゴッゴッゴ……とお姉さんのお姉さんにヴォルフは酒を飲まされて行きますぞ。
一口目は警戒して居ましたが二口目からは自ら飲んでおりました。
「く……くーん。ヒック……くくーん」
やがてポロポロとヴォルフは、すすり泣くような声を上げながらお姉さんのお姉さんに向けて鳴いてからお義父さんに絡みました。
そこから更にくーんくーんと何やら喋っていますが全くよく分かりませんな。
「ヴォルフは泣き上戸って奴かな?」
「くーん……くくーん。ヴァウー!」
それから何やら布をバンダナ巻きにしてビリィ! っと力強く引き裂いてましたな。
「フー……フー……」
やがて興奮したままテーブルに突っ伏しましたぞ。
「うーん……よく分からない酔い方だね。ヴォルフ」
「あらー」
で、お姉さんは新たなターゲットとして雑種のリザードマンとウサギ男に目が行きますぞ。
ビクッと即座に反応したウサギ男が雑種のリザードマンを盾にするように回り込みました。
「シオンちゃんはどう? 楽しく飲みなさいよー」
「自分なりに楽しんでいる。あまり泥酔するのは好まないし、立場を理解して居るつもりだ」
「そーおー?」
「……村の再建が出来ると良いな。応援している。だからあまり仲間を酔い潰して本音を探らないでくれ、自分とテオドールは盾の勇者の力になりたいと思っている。お前もそうなんだろ?」
「まだお姉さん入ったばかりだからみんなと仲良くしたいのよー」
「抜かせ……言ってはなんだが自分はお前に稽古を付けて貰いたい」
あらーと雑種のリザードマンの言葉にお姉さんのお姉さんは驚いた様な声を上げますぞ。
「エルメロちゃんが戦闘顧問をしてるのに?」
「お前も相当な実力者だろ。戦い方を教えてくれ……自分はまだまだ未熟なのだ。ヴォルフも技術があるが、お前の方が動きが良く見える」
やがてチラッと雑種のリザードマンは俺の方を見ますぞ。
なんですかな? 俺に教わりたいのですかな?
その視線に気付いたのかお義父さんが俺の方に顔を向けました。
「シオンの稽古に元康くんも参加して貰うかい?」
「そいつが一番強いのは知っているが一人では無く沢山の者から教わって幅が欲しい」
「そういうことね。サディナさんとしてはどう?」
「えーお姉さん、そんな強くないから教える事が出来るか分からないわー」
お姉さんのお姉さんが警戒してるのがなんとなく分かりますぞ。
信用してくれると割と気さくに相手してくれますぞ。
「……まだ波が来る前に噂で聞いた事がある。セーアエット領のとある村に恐ろしく酒が強く、腕も立つ奴がいるとな。サディナ、お前の事だろう?」
「有名人だったんだねー」
「そこまでじゃないわよー大事な時に村に居られなかったもの」
お姉さんのお姉さんが後悔しているのか酒のグラスをテーブルに置いて淵を指でなぞっております。
「セーアエットの領主様のお願いで遠洋漁業に出てたのよねー。そっちも海が大荒れで……お姉さん以外生き残れなかったし」
「サディナさん……」
お義父さんがお姉さんのお姉さんに同情しておりますぞ。
「船が沈む時にみんなのお父さん達にお願いされちゃったのよね。もしも生き残ったら子供達を頼むって」
お姉さんのお姉さんは最初の波が発生した際に遠洋に出ていたそうですな。
その際に漁の手伝いをしていた者たちも居て船が沈んでしまったのだと後に語っていたのですぞ。
「……領主の頼みでは無い。あれは……国からの指示だった」
「あら、そうだったの」
雑種のリザードマンがやや不快そうに補足しました。
そう言えば聞いた様な気がしますな。
赤豚が久しぶりに帰ってきたとかで遠洋の珍しい魚を望んだとかですな。
奴は文字通り疫病神ですぞ。
「セーアエットを悪く言うことは許さん。何より、波での被害を抑えるために先頭に立って領民を逃がしていたのだからな」
「それで死んじゃ後に残った者は大変じゃないのー。みんな困っちゃったわー」
ドン! っと雑種のリザードマンは不快そうにテーブルに拳を叩きつけますぞ。
「シオン?」
ハッと我に返った顔をして雑種のリザードマンはお義父さんを見つめましたぞ。
「……失礼した。彼女の言う事はもっともだ。ただ、民を大事にしていた領主であったのは事実だと理解してもらいたい」
「別にお姉さんもそこは否定しないわよ。惜しい人を亡くしたわ……本当にね」
そこは共通の認識の様ですな。