酒場で勧誘
魔物商人の子飼いの者やシルトヴェルトの使者も手伝いをしながら大きめのテントを建てていくのですな。
雑種のリザードマンがお義父さんの指示を聞いて馬車から荷物を降ろしますぞ。
それをお義父さんも共に手伝いますな。
もちろん俺も手伝って行きますぞ。
フィロリアル様方は楽しかったとばかりに皆で馬車のひき具合を語り合っていましたな。
そして賑やかな楽団とばかりにお歌の練習を皆でしております。
とても楽しげな光景ですな。
「「ピヨピヨ!」」
ユキちゃん達も楽しげに跳ねております。
そうしてテントの建築の目処が立ちましたな。
サーカスが来ていると言う点で町の者たちもこちらの様子を見にくる者たちがチラホラいますぞ。
魔物商の部下がその辺りの広報してくれるそうですぞ。
「さてと……骨組みの建築は進んでいますが、勇者様……道中で仕入れた奴隷の準備が整いましたのでよろしいでしょうか?」
シルトヴェルトの使者が俺にシルトヴェルトへの密かな移動提案をしました。
「わかりました。お義父さん、行ってきますぞ」
「うん。その辺りは色々と任せるよ」
「では行きますぞ! ポータルスピアですぞ!」
スッと移動ですな!
俺達はシルトヴェルトに到着ですぞ。
「おお……確かにシルトヴェルトですね。ですが時刻がメルロマルクと違うような」
「時差ですぞ」
忘れがちですが場所によって日の傾きは存在するのですぞ。
なので遠い所にポータルをすると時間さえも跳躍したような錯覚をしてしまうでしょう。
「通信関連で観測されていますが、ここまで一瞬での移動だとこんな感覚なのですね」
シルトヴェルトの使者がそう呟き、魔物商の部下へと視線を向けますぞ。
どうやらこちらの魔物商人とのコンタクトを取る様ですな。
「では私共も国への報告も兼ねて色々としましょう。槍の勇者様はどう致しますか?」
ふむ……そうですな。
「ピヨ?」
今俺達がいるのはシルトヴェルトですぞ。
そしてサーカスをしながら奴隷売買ですな。俺達の方はサーカス活動がメイン、そして……コウがこのまま育ってしまうとお義父さんを侮った成長をしてしまい恐ろしい目に遭いかねません。
お姉さん達はまだ治療中でいずれは合流するのでしょうが懸念点はありますぞ。
ならば必要な人材……見世物という点でパンダとゾウが居ると心強い気がしますぞ!
何でもパンダとゾウは傭兵だそうなので金で雇用するのが良いですぞ。
とはいえメルロマルクの監視もあるのである程度注意しなくてはいけませんがな。
「俺もこちらで勧誘して連れて行きたい人材がいるので声を掛けに行きますぞ」
「それはどのような?」
「フィロリアル様の有能な教育係なのですぞ」
全てはコウにトラウマを植え付けない為、フィロリアル様の楽しい合唱の時間を提供してくれるゾウを勧誘するのですぞ。
パンダはお義父さんの癒やし枠でしょう。
芸が得意なので玉乗りも出来るかと思いますぞ。
お姉さん達も体調が安定したら手伝って下さるでしょうが、ゾウは居ても損にはなりません。
そんな訳でゾウとパンダの勧誘ですぞ。
確か時期的に……記憶を頼りにする限りは日程的にシルトヴェルトに居るはずですぞ。
そんな訳でフォーブレイに向かった時のお義父さんの証言、パンダとゾウを見かけたと言うのを参考にあの時泊った宿を中心に捜索ですぞ。
なーに、ゾウは体付きが大きいですからな。探せばあっさりと見つかるでしょう。
シルトヴェルトは亜人獣人の坩堝でありますが、大型獣人に意識を向ければすぐですぞ。
と、記憶を頼りに捜索をしていき、数時間ほどいろんな所出歩いた所で見つけました。
「盾の勇者が冤罪に掛けられたって事で待機してるけど戦いになるのかねー」
パンダが酒場で部下と共に酒を飲みつつゾウへと話していますぞ。
「ちょっとまだ分からないわね。どっちにしても私は早めに次に行くつもりよ」
「なんだい。ノリが悪いねぇ」
「そんなの私の勝手でしょ。まー……しばらく用事を片付けたらフォーブレイの方にでも行って、暇だったらゼルトブルに戻るわ」
「ほー……なんかあるのかい?」
ゾウはテーブルに足を乗っけて行儀の悪い飲み方をしているパンダに眉を寄せますぞ。
「何も無いわよ」
ゾウの様子から何かありますな、おそらく元配下のネズミ達と密かに会いにきたとかその辺りなのでしょう。
良いゾウですからな。ネズミ達のチュー義が高かったので間違いないですぞ。
「はいはい。闘技場で会ったら容赦しないから覚悟しときな」
「それはこっちの台詞でしょ。あんまりだらけて何処かでぽっくり逝ったらつまらないから程々にしなさいよ」
などとゾウはパンダと一緒に雑談をしていらっしゃる様ですな。
そこに俺が近づいて声を掛けますぞ。
「ちょっと良いですかな?」
「あん?」
「……何?」
パンダとゾウが揃って怪訝な目を俺に向けますぞ。
「なんだ? 姉御達に一体何の用だあの人間」
「身の程を知らねえ奴だ」
「命知らずって奴じゃね?」
パンダの配下が少し離れた所で囁き合っていますな。
「おい。俺達に黙って姉御に何の用だ」
「用があるので声を掛けたのですぞ。お前等の許可が必要なのですかな?」
「な……」
「俺達の許可なく声を掛けるとはふてえ野郎だ!」
ほう、パンダの部下に許可が必要なのですかな?
パンダを見ると否定でも肯定でも無く様子を見てますぞ。
お義父さんがいらっしゃる時とは反応が異なりますな。
ふむ……なんだかんだパンダの部下は雑務をする連中ですので仕留めたりするのは良くないでしょう。
何より下手に暴れては勧誘に失敗しかねませんぞ。
ならば……パンダの部下達にとって一番困る話で脅すのが良いですな。
お義父さん直伝の交渉術ですぞ。
俺はパンダの部下に素早く近づき、耳元で囁きますぞ。
「そんな態度で良いのですかな? お前達が慕う姉御に泥酔させた時の楽しみを暴露しますぞ」
ピク! っとパンダの部下の耳が大きく跳ねつつ大きく距離を取られましたな。
「て、てめぇ! なんでそれを知ってやがる!?」
「許可は頂けますかな?」
「お、おい……」
「その口を黙らせてやるぞ! コラァ!」
おや? 逆効果ですかな?
「おい、何を言われたんだ?」
部下の仲間が尋ねますぞ。
ここで話をした部下が他の部下に囁きました。
「え? おい……ヤバくね?」
「困る」
「口封じすっか?」
「やるなら相手をしますぞ。殺さないように加減をしてやりますぞ」
「良い度胸じゃねえか!」
バーンとパンダの部下がテーブルをひっくり返して拳を鳴らしました。
「ピヨ!」
「ピヨピヨ!」
ユキちゃん達をソッとゾウに手渡しますぞ。
「は?」
ゾウが唖然としつつユキちゃん達をその手に乗せております。
やはりゾウは良いゾウですぞ。
「では一気に終わらせてやりましょう! はあ!」
素早くパンダの配下の後ろに回り込み、槍を首に引っかけて軽く叩きつけますぞ。
「うぐわ!」
「なんだコイツ! クソはええ!」
「取り囲んでボコすぞ!」
「おう!」
っと、叩きつけられた部下以外の連中が俺を取り囲んで飛びかかろうとしました。
「やめな!」
ブン! っと俺達の合間に酒瓶が投げつけられました。
「お前等がなんとか出来る相手じゃないよ。何より今出禁にされると面倒臭いだろ」
パンダがそこで即座に仲裁に入ったのですな。
「ですが姉御」
「良いから下がりな」
「へ、へい」
「お、おい。絶対にバラすんじゃねぇぞ?」
パンダの部下は渋々と言った様子でテーブルを元に戻して酒場の主人に頭を下げに行きました。