夜渡りinキヴォトス   作:名無しのごんきち

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目覚め

 

 

「…………!」

 

 

 

(これで……終わりか…………)

 

 

 

 追跡者は、そう思いながら夜の王だったのものの前に立つ。

 

 手には、銀の雫が握られていた。

 

 

 

(これで……巫女は解放される……)

 

 

 

 そしてその銀の雫を、追跡者は喰らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、新たな夜の王が生まれた

 

 円卓は消滅をまぬがれ、作り変えられるだろう

 新たな夜に備えるために

 

 それは巫女を解放するに足るものだったか

 確かめる術は、もはや男にない

 

 王は歩み続ける

 たとえ、双子の馬が再び出会うことがないとしても……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 男は気付けば歩み続けた砂漠が夜ではない事に気付いた。

 

 

 

 

(おかしい)

 

 

 

 

 かつて追跡者と呼ばれたその男は違和感を覚えた。

 

 自分が夜の王であるならば、太陽を見ることなどあり得るはずがないのだから。

 

 

 そして男は、直に自身が夜の王としての姿ではなく追跡者と呼ばれていた頃の姿となっていることに気がついた。

 

 

 

 

 何故、姿が戻っているのか。

 

 生まれ変わりが不完全だったのか。

 

 円卓は……その巫女は、どうなったのだろうか。

 

 解放されているのだろうか。

 

 

 

 

 追跡者の中で疑念が渦巻く。

 

 だが、砂漠を歩み続ける。

 

 

 

 

 確かめるすべなどあり得はしないのだから。

 

 

 

 

 夜の王ではないからなのか、陽光は容赦なく追跡者を照らし、汗が体から流れ続ける。

 

 

 

 だが、歩みは止めない。

 

 

 止めてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、追跡者は倒れてしまった。

 

 体から水分が抜け、力が入らない。

 

 

 

「…………!」

 

 

 

 追跡者はそれでも進もうとした。

 

 しかし立ち上がる事も叶わず、むしろ意識が朦朧とし始める。

 

 

 

(ここで終わりなのか……)

 

 

(妹は、今何をしているだろうか)

 

 

(それを知ることなど叶わない筈だ)

 

 

 

 

 

(だが、願わくば…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(平和に暮らして居て欲しい…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう願いながら、追跡者は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風鳴り丘に、日が落ちかけている。

 その名を示すように、身を切る風が鳴り止まない。

 

 

 

 

(まただ)

 

 片割れとの別れの時の事を、夢に見る。

 

 

 

 じき約束の冬が来る。

 初霜が降りる頃には、片割れは旅立ち、もういない。

 押し黙る追跡者に、   は、いつもの笑みをこぼした。

 そして耳飾りを指で弾く。

 

「しばしの別れです、兄上。事を成せば、また会いましょう」

 

 

 名前さえ未だ思い出せぬ。だが、妹は確かにそう言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ここは?」

 

 

 

 追跡者は、目が覚めた。

 

 

 追跡者は、あそこで死ぬ物と思っていたがまたも生き延びた。

 

 

 

 そしてまず始めに驚いたのは自身の発した言葉だ。

 

 

 

 自身がかつて円卓にいた頃に用いた言語とは全く異なる、だが意味がなぜだか理解出来る。

 

 

 何故発する言語が変わったのか。

 

 

 

(……今はそれを考えても仕方がない)

 

 

 

 そう思い、一先ず追跡者はそれ以上この事は考えない事にした。

 

 

 

 

 

 

 そして次に、建物の中にいる事。

 

 

 

 

 

 

 誰が何の目的で運び込んだのか。

 

 しかも、建物の様式も見慣れないものばかりだ。

 

 それに、使い慣れた、片刃だけボロボロになった大剣がない。

 

 幸いにもクローショットと襲撃の楔は左腕に付いたままだ。

 

 

 

 

(最悪クローショットと拳で応戦するつもりでいないといなさそうだ)

 

(……だが、眠っていた場所がふかふかのベッドだった…………運んで来た者に敵意はないのかもしれない)

 

(……もし何かあるとすれば、自身の体…………かつて夜の王だったこの体が目的という可能性もある)

 

(だか体が目的なら監禁する筈だ今いる部屋は窓があり、容易に開くないし窓を割って外に出ることができる)

 

(……そうなると、何も知らない者が善意で助けたということか?)

 

 

 

 

 

 

 

 ガラガラ……

 

 

 

 

 

 追跡者がそう考えていると、扉が開き、手に大きな何かを持った金髪の少女が入ってきた。

 

 

 

「あら? 起きていたんですね〜」

 

 

「……俺を運び込んだのはお前か?」

 

 

 

 追跡者は質問する。しかし、勘で彼女が助けた訳ではない事は薄々気が付いていた。

 

 

 

「いいえ、シロコちゃんが助けてくれましたよ〜」

 

 

「そうか……感謝する」

 

 

 

 追跡者はそのシロコという者に、どういう訳か助けられた事を理解した。

 

 

 

「貴方のお名前は?」

 

 

 

 名前……追跡者は既に自身の名を忘れていた。

 

 それ故に、名乗る名がなかった。

 

 

 

「追跡者、と呼んでくれ」

 

 

「……本名は教えてくださらないのですか?」

 

 

「……名はもう忘れてしまった」

 

 

「え?」

 

 

「…………夜との長い戦いで、記憶がなくなっていったのだろう」

 

 

 

 夜渡りの戦士は、その存在と記憶を擦り減らしながら戦う。

 

 どれだけの夜を戦い続けているのか、もはや定かではない。

 だが、一つだけ確かなことがあった。

 

 夜の王を追い、そして屠る。

 

 ただその一事のみが、追跡者の為すべきことだった。

 

 

 

「そう……なんですか……」

 

 

 

 金髪の少女は驚いた顔をして、こちらをみていた。

 

 それより、追跡者には気になっていた事があった。

 

 

 

「…………ここはどこだ?」

 

 

「ここはアビドス高等学校の保健室ですよ〜☆」

 

 

「アビ……ドス……?」

 

 

「……知らないのですか?」

 

 

「あぁ」

 

 

 

 追跡者はそんな場所の名前など聞いたことがなかった。

 

 

(自分は狭間の地で夜の王になったのではないのか?)

 

 

 そう疑問を持ち、追跡者は質問する。

 

 

 

「ここはリムベルドではないのか?」

 

 

 

 夜の影響か何かでリムベルドではない所に来ているのではないか……

 

 追跡者はそう予感していた。

 

 

 

 

「それは……レディさんが言っていた場所ですか?」

 

「!!!」

 

 

 

 追跡者は、驚いた。

 

 共に夜を渡った妹の当時の名を、出してきたのだから。

 

 そして同時に安堵した。

 

 自らが夜の王になったことで妹が円卓から解放された事の、何よりの査証だったからだ。

 

 

 

「そうだ…………それより、レディは何処にいる?」

 

「私達の仲間と一緒にいますよ〜」

 

「そうか……案内を頼めるか?」

 

「いいですよ〜☆元々アビドスの皆の所に連れて行く予定でしたし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うへぇ〜……ノノミちゃん遅いね〜」

 

「もしかして……あの男に襲われたりして」

 

「ん、それはないと思う」

 

「ノノミ先輩なら返り討ちじゃない?」

 

 

 

 

 ガラガラ…………

 

 

 

「ノノミちゃん!」

 

「ん、あの時の人もいる」

 

「大丈夫ですか?」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

 

 

 

 

「…………久しいな。()()()

 

「! …………」

 

 

 

 

 レディは、円卓に始めて来た時と同じ格好をしていた。

 

 そして、追跡者の事を兄上ではなく『追跡者』と呼んだ。

 

 

(覚えていないのか……愛想を尽かしてそう呼ばないのか……どちらでもいい。無事に解放されたのだから……)

 

 

「そうだな…………」

 

「追跡者が来たことだ……今ここにいる者達も交えて話しておかなければいけないことがある」

 

「?」

 

 

 

 追跡者は、勘がいい。それ故にその先の言葉を薄っすらと予測していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜の王が、この世界に潜んでいるようだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 追跡者は薄っすらと予測こそしていたが、そうであってほしくなかったという嘆きもあり、驚いた。

 

 そして同時に、巫女は再び円卓に囚われてしまったのかとても気になった。

 

 

 

「もしかして、この人も夜渡りだったの〜?」

 

 

 

 だが、追跡者が口を開く前に桃色の髪の幼女が質問する。

 

 追跡者は、何故ここまで小さく幼い少女が夜渡りの事を、と聞かれた瞬間は思った。

 

 だが、追跡者は彼女の目を見た瞬間、彼女が只者ではない事に感づき、改めて気を引き締める。

 それに、夜渡りの事はレディから聞いているのだろう。

 

 

 

「あぁ。『追跡者』という者だ」

 

 

 

 追跡者は簡潔に答える。何か、余計な事を話せば殺して来るような恐ろしさが、桃色の髪の幼女から感じていた。

 

 

 

「レディさんもそうですけど、本名は伝えて下さらないのですか?」

 

「そのことなのですが…………」

 

「……追跡者は本名を忘れてしまっている」

 

「「「「!!!」」」」

 

 

 

 レディがそう言うと、灰色の獣耳の少女も、黒色の獣耳の少女も、桃色の髪の幼女も驚いた。

 

 それは何処か憐れみも混ざっていたようだった。

 

 

 

「それは……」

 

「前も言った通り、私達夜渡りはその記憶と存在を擦り減らして戦う。そのせいよ」

 

「……俺の名が無くなろうと関係ない。夜の王が何度も蘇るならば、何度でも殺すまでだ」

 

「……どうしてそこまで? …………」

 

「…………夜の王によって滅ぼされた、一族の無念を晴らすため……ただそれだけだ…………」

 

 

 

 追跡者のその言葉には、強い怒りと、悲しみが込められていた。

 

 それが、彼女たちにも伝わったのだろう。

 

 彼女達は、それ以上俺について詮索して来なかった。

 

 追跡者は、何故か桃色の髪の幼女の瞳が少し柔らかくなったように感じた。

 

 

 

「もう! こういう暗い話は無しにして!!!」

 

 

 

 黒色の獣耳の少女が重い空気に耐えかねそう叫ぶ。

 

 

 

(確かに、初対面にしては話し過ぎたか?)

 

 

 

 追跡者は自身の境遇が少女達にとって余りに暗い境遇である事は理解していた。それ故に、少し話し過ぎたと反省する。追跡者は、少女達より幾分かは大人びていた。それはその境遇故だろうか。

 

 

 

「すまん……」

 

「というか、私達自己紹介とかしてないじゃん!」

 

「ん、確かに」

 

「それじゃあ、私から行きまーす☆」

 

 

 

 自己紹介など必要なのか疑問に感じたが……だが名も知らないのはいささか不便だと思い、黙って聞くことにした。

 

 

 

「私はアビドス高等学校の2年生の『十六夜ノノミ』でーす☆」

 

「ん、私はアビドス高等学校2年生、『砂狼シロコ』」

 

「俺を助けたのは、お前だったのか」

 

 

 

 追跡者は、自分より小柄な彼女があの砂漠の真ん中でよく助けられたものだと、少し感心した。

 

 

 

「ん、お前じゃない。シロコ」

 

「すまない。感謝する、シロコ」

 

 

 

 追跡者はお前と呼ばれて不服そうなシロコに謝罪しつつ、感謝を伝える。

 

 

 

「うへぇ〜……次はおじさんかな〜? …………おじさんはアビドス高等学校の3年生『小鳥遊ホシノ』だよ〜」

 

「わ、私はアビドス高等学校1年生の『奥空アヤネ』と言います! よろしくお願いします!」

 

「よろしく頼む」

 

「最後は私!? ……私はアビドス高等学校1年生の『黒見セリカ』よ!」

 

 

 

 追跡者はアビドス高等学校に所属しているのであろう者達の一通り自己紹介を聞いて、名前を覚えた。最も、何時まで覚えていられるかは分からないが……

 

 

 

「私はレディ。夜渡り達の集う円卓の巫女だった者だ。改めてよろしく頼む」

 

「レディ……一つ聞いてもいいか?」

 

「……なにかしら?」

 

「お前は、円卓に囚われたままなのか? ……」

 

 

 

 追跡者は恐る恐る、そうでないことを願いながら質問した。

 

 

 

「いや、囚われいないだろう。事実、円卓の存在はなくなっている」

 

「……そうか」

 

 

 

 追跡者は、とても安堵した。

 

(妹は、無事に解放されていたのだ……あぁ……よかった……)

 

 と。

 

 だが、夜の王という怨敵がいる事に変わりなかった。

 

 追跡者はすぐに切り替え、夜の王について聞こうとしたその時だった。

 

 

 

 ドカ────ン!!! 

 

 

 

 この建物から少し離れた所で、爆破音が聞こえた。

 

 

 

「またヘルメット団が来たのね!」

 

「ん、何度だろうとぶっ飛ばすまで」

 

 

 

 どうやら、襲撃者が来たようだ。

 

 

 

「追跡者さんとレディさんはここで待って」

 

「俺も戦おう」「私も戦うわ」

 

 

 

 追跡者とレディは同時にそう答えた。やはり兄弟なのか、二人共前線で戦うつもりだった。

 

 

 

「でも、銃を持ってないよね〜?」

 

「なんだ? その……ジュウと言う物は」

 

「……大砲をクロスボウのサイズまで小さくしたもの……、と言えば伝わるだろうか? この世界の一般的な兵器らしい…………」

 

 

 

 レディが説明してくれた。

 

(大砲を小型化か……少女達が持っているものと同じと取っていいだろう。油断するつもりはないが…………)

 

 

 

「成る程。それは……恐らく無くても大丈夫だ」

 

「私も平気よ。回避には自信があるわ」

 

「でも……ヘイローもありませんし…………」

 

「ヘイロー?」

 

 

 

 追跡者は聞く単語が度々聞き馴染みのないものばかりで、少し困惑した。

 

 

 

「私達に浮いているこの輪っかのような物です。これのおかげで銃弾が致命傷にならないそうなのですが……」

 

「致命傷など、幾度となく受けてきた。気にするな」

 

「もう! 行くよ!」

 

「あぁ」「勿論よ」

 

 

 

 二人はそう答えながらも、再び双子の馬が駆ける喜びを噛み締めていた。

 

 






追跡者の遺物



追跡者の耳飾り

獣の暗き夜

にび色の砥石


(深層の遺物)

ガーカン強化+2(被ダメ時睡眠蓄積)
敵撃破時アーツ蓄積+1(技量信仰低下)
最大HP上昇(被ダメ時出血蓄積)

大教会のボス撃破で最大HP上昇
発狂耐性上昇

スキルに出血付与
リゲイン+1(被ダメ時冷気蓄積)
出血耐性上昇+1



レディの遺物


アーツ中敵撃破で攻撃力上昇
封牢の囚を倒す度攻撃力上昇
精神力+1

狩人の暗き夜

霞の暗き夜


(深層の遺物)

大教会のボス撃破で最大HP上昇
魔力攻撃力+4(全状態異常耐性低下)

杖潜在
石剣の鍵持ち込み
聖カット上昇

スキル中僅かに無敵
致命でスタミナ回復速度上昇
属性攻撃力上昇+1(回避直後の被ダメ増加)



 投稿主の遺物構成です。
 キヴォトスでは深き夜の効果はある状態となっています。
 追跡者、レディの格好は共に追憶衣装です。

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