参院予算委で答弁する高市首相=14日午前
政権発足後、初の予算委員会で基本的質疑を終えた高市早苗首相。体験談などを織り交ぜ「分かりやすい」答弁を重視した。安全保障など思い入れの強い政策では答弁書に頼らず、自身の言葉で語る姿勢も。「首相らしさを出せた」と周囲は手応えを得る一方で、台湾有事を巡る「存立危機事態」では事務方が準備した“答弁ライン”を越えた。日中関係の緊張に発展し、予断を許さない。
「(5兆円の恒久財源があれば)自民党に怒られるかもしれないが、食料品の消費税をずっとゼロにする」「睡眠時間は大体2時間から長い日で4時間。だからお肌にも悪い」
7日に始まった予算委で首相が意識したのは分かりやすさだった。各省庁が用意した答弁書に自らペンを入れ、「官僚言葉」をかみ砕いた。ユーモアや体験談も交えて率直に語る首相に、野党も「ストレートで分かりやすい」(参政党の神谷宗幣代表)と舌を巻く。
売春防止法の改正を求めた、衆院会派「有志の会」の緒方林太郎氏の質問には、その場で後方の平口洋法相に検討を指示し、即断即決をアピールした。首相側近は「初日より2日目、3日目とだんだん良くなった」。
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自身の政治信条に根差す分野では強気の姿勢を貫いた。象徴は、台湾有事を巡る「存立危機事態」だ。
立憲民主党の岡田克也氏との質疑で、首相は集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得ると明言。具体的な地名やケースに言及せず「個別具体的な状況に即し情報を総合して判断することとなるため、一概に述べることは困難だ」などとする従来の政府見解から踏み込んだ。官邸幹部は「しつこい追及に耐えられなかった」と明かす。
その後、首相は「特定のケースを想定したのは反省点。今後は慎む」と弁明したが、撤回せず。野党は反発を強め、中国外務省は異例の撤回を突き付けている。官邸筋は「間違ったことは言っていない」と応じるつもりはなく、日本の外務省幹部も「従来の立場と変わりないと丁寧に説明するしかない」と語る。収束の見通しは立っていない。
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政府が長年、財政健全化の指標としてきた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標についても、首相は単年度から複数年度に見直すと強調。基本方針の「責任ある積極財政」を印象付けた形だが、自民党中堅は「看板ばかり先行し、中身が追いついてない」と批判する。
高い内閣支持率を背にしてエンジンを吹かす高市氏。衆参で少数与党の中、焦点の補正予算案成立には野党の協力が不可欠だ。石破茂前政権の幹部は首をかしげる。「どう賛同を得るつもりか。苦労するだろう」
(岩谷瞬、山口新太郎)
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