『半分姉弟』(1)で和美が友人のシバタに怒りをぶつけるシーン。この他、中国人の母を持つ女性など、さまざまなミックスルーツの人物が登場する。現在もトーチwebで連載中
『半分姉弟』(1)で和美が友人のシバタに怒りをぶつけるシーン。この他、中国人の母を持つ女性など、さまざまなミックスルーツの人物が登場する。現在もトーチwebで連載中

異質の存在だと認識

 大阪に住むミックスルーツでイスラム教徒(ムスリム)のバーヌさんもその一人だ。

 イスラム教は豚肉の禁止や、露出の少ない服装などが求められる。小学校のときは、毎日給食の献立を見て、担任に「〇〇が食べられない」と報告する。体育の授業は夏でも長袖、長ズボンを履き、プールは見学。そのたびにつきまとう「なぜ?」の質問に、何度も何度もその理由を話さなくてはならなかった。

 小学5年生のとき、親からヒジャーブをつけるように言われた。学校で何か言われたら嫌だなと思いつつ、親には逆らえない。ヒジャーブをつけて登校すると、「なにそれ? どうしたん!」と真っ先に笑ったのは教師だった。バーヌさんはヒジャーブをその場で脱ぎ捨て、ランドセルに詰め込み、「何もなかった」ように下を向いて歩き続けた。

 高校生になると、“ハーフ”であることをうらやましがられるようになる。

「かっこいいやん」「目が大きくていいな~」と褒められると、「〇〇ちゃんもめっちゃかわいいやん」「でも、視力悪いけどな」と笑いながら返す。

「友達はみんないい子なんです。でも、自分が意識していないことを言われたり、自分に向けられるまなざしだったりが、『私は異質の存在なんだ』ということを嫌でも認識させられました」

 高2で「自分は何者なのか」と、アイデンティティー・クライシスに陥った。うつ状態になり、学校へ行けないことも増えた。登校した日は、図書室で心理学や哲学の本を読み漁ったが、自分の気持ちを言語化するものには出合わなかった。

 大学でも似たような経験は続いた。特に就職活動はつらかったと話す。「日本人より日本語が上手ですね」「日本語を習得するためにがんばったことは?」と聞かれるのは日常茶飯事。ムスリムと知ると、「礼拝の時間は考慮できないです」と、相談する余地もなく言い渡される。「ヒジャーブをしてないですけど、結構信仰心が緩いんですね」と言われたこともあった。最終面接までいった会社もあったが、メンタルの限界が来て、就職活動を続けられなかった。

「自分が受けてきたことがマイクロアグレッションだと知ったのが数年前です。ようやく腑に落ちました」

 ミックスルーツに限らず、あらゆる場に日常的にマイクロアグレッションは潜む。AERAで取ったアンケートでは、「同僚から『割と仕事早いのね』と言われた」「痩せていることを気にしていたときに、友人や知人から『細いですね』『痩せた?』と言われ、心をえぐられるように傷ついた」「なかなか妊娠できないことに対して『堕胎したことあるのか?』と言われた」「いろいろな人に『障害者なのに頑張っている』などと言われ傷ついた」と声が寄せられた。

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