社会の分断が深まり、言葉が人を傷つける武器になっているいま、AERAでは「やさしくなりたい」という思いが広がるような発信を様々なかたちで行っています。「言葉」を考えるシリーズの今回は、無意識の偏見や思い込みによる言葉が、誰かを傷つけてしまう「マイクロアグレッションを考えます。AERA 2025年11月3日号より。
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「お姉さん めちゃくちゃ日本語上手だね 英語喋れんの?」
もう何百回、何千回と聞かれてきたことに、へらへらと笑いながら和美は返す。「英語全然わかんないっすね!」
米山和美マンダンダは、父がフランス人、母が日本人の“ハーフ”だ。日本育ちの日本人で、英語もフランス語も話せない。濃い色の肌にカーリーヘアの和美は、物心つく頃からジロジロ見られ、「日本語上手ね」など、ずっと「ガイジン」扱いされてきた。そのたびに嫌な気持ちになり、傷つく。ある日、「あんた…純粋な日本人じゃないな」と知らないおじさんに言われたことをきっかけに、自分の傷つきを理解できない親友シバタと大喧嘩になってしまう。「お前らなんかにわかるわけないんだよ!!」と。そして叫ぶ。
「わたしシバタとふたりでいても ずっと息が出来ないくらいひとりだったよ!!」
これは藤見よいこさんの漫画『半分姉弟』(リイド社)に出てくるワンシーン。こうした日本に暮らすミックスルーツの人たちの生きづらさや、日々受けるマイクロアグレッションをテーマに物語は進む。
マイクロアグレッションとは、無意識の偏見や思い込みによる相手を傷つける言葉や態度のことをいう。一つ一つは小さな傷つきかもしれないが、それが積み重なると大きな傷となる。藤見さんは、「まだあまり語られていない『ハーフ』という立場の人に光を当てたい」と当事者やその親、支援者などにも取材し、ストーリーを練り上げた。
藤見さん自身も父がスペイン人で母が日本人。日本生まれ、日本育ちだが、道で英語で話しかけられることがしばしばあるという。
つい最近も藤見さんが池袋駅で電車を待っていたら、急に中年男性が近づいてきて、「ウェア・アー・ユー・フロム?」と聞かれた。「ちょっと英語は……」と日本語で返すと、「犬がしゃべったというような顔で」(藤見さん)驚かれたあと、こう言われた。
「顔、ガイジンじゃん」
「もうびっくりしました。ひどいですよね。それは本当にへこみました」
社会学者の下地ローレンス吉孝さんと、カウンセラーの市川ヴィヴェカさんによる海外にルーツのある人への調査によれば、98%の人が日常生活でマイクロアグレッションを経験し、メンタルヘルスの不調は全国調査と比べると約5倍と高い。















