高市早苗首相が3日、都内で開かれた拉致被害者の帰国を求める国民大集会で、北朝鮮に金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談開催を打診したと明らかにした。「私たちの代でなんとしても突破口を開き、拉致問題を解決したい」と意欲を見せる首相。拉致問題の解決へ道は開くのか。

 拉致問題を解決するためには、日朝首脳会談の開催が不可欠であるが、これまで、小泉政権での2002年9月と04年5月の計2回しかない。

 それらが可能だったのは、北朝鮮の国内問題として深刻な食料不足があったとともに、国際環境では02年1月の一般教書演説で米国のブッシュ大統領が大量破壊兵器の開発やテロ支援を理由に北朝鮮、イラン、イラクの3カ国を「悪の枢軸」と名指ししたことがある。

 実際、その約1年後の03年3月には、米国が主体となってイラクへの侵攻が行われた。北朝鮮は相当恐怖を感じたはずで日本に頼ってきたのだろう。

 ところが、現在の環境はかなり厳しい。そもそも西側諸国で最近、金氏と首脳会談をしたのは、18年9月の文在寅・韓国大統領、19年6月のトランプ米大統領ぐらいである。18年の南北首脳会談は、トランプ大統領が後押しした。

 現段階で高市首相が金氏と首脳会談をするためには、トランプ大統領がまず首脳会談をし、その後押しが必要になってくる。

 トランプ大統領は、先日のアジア歴訪のスケジュールで訪韓中に米朝首脳会談の実現に意欲を示していた。ところが、金氏の反応は芳しくなかった。というのは、19年当時と北朝鮮とロシア・中国との距離感が異なるからだ。

 19年当時、北朝鮮はロシア・中国と比較的距離があったように思える。このため、北朝鮮は比較的自由に米国と接触できた。今や北朝鮮はロシア・中国と近い関係になっており、米国との首脳会談をロシアと中国を差し置いて行う必要性は乏しい。

 ミサイル・核兵器の開発も進んでおり、もはや米国は中国・ロシアと並んで北朝鮮に手を出せないと踏んでいるかもしれない。先般の北京での軍事パレードにおける、中国・ロシア・北朝鮮トップのそろい踏みの写真が示した意味である。

 高市首相には高いハードルであるが、北朝鮮との対話はトランプ政権の時しかできないだろう。だから今回、できる限りのメッセージを出したのだろう。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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