日本人も「かけ子」に使う「中国系」カンボジア詐欺集団・首領の正体 犯罪収益1兆円、首相の顧問も務め、24億円豪邸で贅沢三昧
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米英両政府はこのほど、米国民らから「少なくとも100億ドル(約1兆5340億円)をだまし取った」として、カンボジアで暗躍するオンライン金融詐欺グループに制裁を科すことを決定。カンボジア最大のコングロマリット「プリンス・グループ」の陳志会長と幹部46人を「犯罪の中核人物」として国際手配した。合わせて世界中に117社もの関連企業を持つ同グループの活動を停止させるとともに、グループの資産約120億ドル(約1兆8452億円)を没収または凍結している。陳志会長は中国生まれで、カンボジア国籍を持つ。この事件には日本人もかかわっており、今年8月には日本人「かけ子」29人が組織犯罪処罰法違反で逮捕され、いまも犯罪グループやその詳細な手口などについて取り調べが続いている。 【写真を見る】1兆円を荒稼ぎした詐欺集団の首領・陳志の素顔 【相馬勝/ジャーナリスト】 ***
史上最大のアクション
米財務省は10月14日、「米国と英国、東南アジアのサイバー犯罪ネットワークを標的とした史上最大のアクションを起こす」と題するプレスリリースを発表。「オンライン投資詐欺による米国の損失は過去数年間で、総額は166億ドル(約2兆5464億円)を超えている。2024年に米国人は東南アジアを拠点とする詐欺行為で少なくとも100億ドル(1兆5377億円)の損失を被り、前年比66%増加。過去10年間で、プリンス・グループのような多国籍組織犯罪グループは、東南アジア全域、特にカンボジアで収益性の高いサイバー詐欺活動を確立してきた」と指摘した。 そのうえで、スコット・ベッセント財務長官の言葉として、「財務省は、連邦法執行機関や英国などの国際パートナーと緊密に連携し、略奪犯罪者からアメリカ人を守る取り組みを主導し続ける」と強調するとともに、米司法省が陳志会長と幹部46人を国際手配したことを明らかにした。
「豚小屋」の一室で…
では、陳会長はどのような人物なのか。 米国財務省によると、陳は1987年12月16日に中国南東部の福建省で生まれ、現在37歳。20歳のころから事業を起こし、福建省の省都・福州市でインターネットカフェとゲームセンターを経営していた。当時、中国政府は東南アジア諸国の経済開発を支援するプロジェクトを提唱し、多くの中国企業が東南アジアに進出。若き実業家の陳も政府の支援を目当てに当時はまったくの「未開地」だったカンボジアに渡った。 その後、どのようにして事業を立ち上げたかは明らかではないが、米国財務省のプレスリリースによると、陳は2011年、23歳でカンボジアの首都・プノンペンで「プリンス・グループ」を創設。当初は不動産、金融サービス、電化製品などの製造・販売を表向きの事業としつつ、カンボジア北部国境のゴールデン・トライアングル経済特別区に金融詐欺の拠点を築いたとみられている。 さらに、多くの資産を投入してマンションやホテルなどを購入、そこを中心にオンライン詐欺拠点網を形成した。カンボジアでの事業拡大による人員募集を行うとの名目で、SNSなどを通じて詐欺グループの「かけ子」を集め、「豚小屋」と呼ばれる一室でほぼ寝る間もなく、詐欺電話をかけさせ、資産を形成していった。
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