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つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

人生とは49%の運と51%の可能性である。

2005-02-22 18:38:26 | 小説全般
さて、ミゲールって誰だったっけ? とか言ってみる第84回は、

タイトル:砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
著者:桜庭一樹
文庫名:富士見ミステリー文庫

であります。

児童虐待を扱った作品。

と、最初に危険信号みたいなものを出しておく。

ええっと、個人的には非常に好きな作品です。
キャラクターの立ち位置、過去と現在が絡む構成、小道具の使い方等、非常に計算されており、素直に「上手だなぁ」と言えます。

ただし……開始一頁目で解るので書いてしまいますが、主人公の女の子二人のうちの一人がバラバラ死体になります。こういうのが嫌いな人はここでリタイアしてしまうかも。

物語の進み方に無理があるわけではなく、自然な流れとしてそうなります。
ただ、どうしてそうなってしまったかと言うと、運、としか言いようがない。
虐待され、自我を半ば以上破壊された少女が、鳴らし続けたSOSのかいもなく死ぬ。
どうしても納得いかない……って人は結構いると思います。

ただし、全く救いのない話というわけではありません。
それまで夢の世界に閉じこもっていたキャラクターが、少女の死をきっかけに自我を取り戻し、現実に戻ってくるサブストーリーがあります。
それで少女が報われるわけじゃない、と言ってしまえばそれまでですけどね。

良くできた物語を求める人向き。
割り切ってしまえず、キャラクターに感情移入してしまう人向けではない、かも。
私としてはそういう人にこそ読んでもらいたいけど。

蛇足ですが、読了後に吉田秋生の『吉祥天女』を思い出しました。
こちらは主人公が断然強く、敵側が弱い話ですが人物配置に類似点が見られます。
『Banana Fish』が好きだったという方はこちらも読んでみるといいかも。

最後に一言。

女性作家の容赦のなさは男性作家の比ではない

ちなみに、エログロは作家の容赦のなさの現れではありません。
不快感を与えるか、隠れた情念を呼び起こすだけのテクニックです。



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