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つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

彼女の名はトンボ

2005-05-30 00:34:18 | ファンタジー(異世界)
さて、買ってきてすぐに読み終わってしまった第181回は、

タイトル:ゲド戦記外伝
著者:アーシュラ・K・ル・グウィン
出版社:岩波書店

であります。

先々週、先週と紹介してきたゲド戦記の外伝です。
またの機会に、と言いつつ速攻で買ってきて速攻で読んでしまいました。
正伝全五巻については、第167回第168回第169回第174回第175回を御覧下さい。

アースシー世界をよく知るには打って付けの作品です。
中編集なので、一つずつ感想を述べていきます。

カワウソ……暗黒時代を駆け抜けた魔法使いカワウソの一生を描いた力作。勇士マハリオンの死後、海賊の横行する無法地帯と化したハブナー。魔法の才を持ちながらそれを隠すことを余儀なくされたカワウソは、周囲のまじない師から正義を学び、海賊に抵抗を試みるが――。三百年前のアースシー、特にロークの成立を知ることができるファンにはたまらない一品。魔法使い同士の対決、カワウソのロマンスなど見せ場も充実。

ダークローズとダイヤモンド……表題になっている二人のロマンス。ハブナーの裕福な商人ゴールデンの息子ダイヤモンドは少女ダークローズと魔法使いの間で揺れる。人生いいとこ取りとはいかないが、三つは駄目でも二ついっぺんにぐらいならいけるんじゃないか、と考えたくなるのが人のサガ。しかしダイヤモンドはローズの恋人、商人、魔法使い、楽士の四つのうち一つしか選べないと思いこんでしまう。彼のラストの選択を責めはしないが、親父のゴールデンがかなーり可哀相な気がするのは歳を食ったせいか?

地の骨……ゲドの師匠の師匠の話。そのまた師匠も話もあるし、もちろんゲドの師匠もめいっぱい登場する。空に向かって「師匠ぉ~っ!」と叫ぶ(大嘘)ゲドの師匠に沈黙の師匠の威厳はないが、師匠然としていない師匠の姿を見られるのはなかなか嬉しい。師匠ばかりで読むのに支障をきたしそうな解説だが、私は何回師匠と言ったでししょう? 物語としては、オジオンがゴントの地震を止めた時の話です。←真面目な解説これだけかいっ。

湿原で……ゲドが大賢人だった時のショートエピソード。つまり、時系列では二巻と三巻の間に当たる。ハブナーの北西に位置するセメル島をガリーという魔法使いが訪れる。家畜の伝染病を治しに来たという彼にはある秘密が――。なんといっても、ゲドが登場するのが良い。三巻、その他でも何かとお騒がせな呼び出しの長トリオンもちょっとだけ話に出る。物語としては、ロマンスかな、多分。

トンボ……五巻で大活躍したアイリアンの生い立ち。女人禁制の魔法聖地、比叡山ならぬローク島の現状が描かれる。カルガド生まれの様式の長とアイリアンの交流が美しい。魔女による名付け、魔法使いとの出会い、まぼろしの森での時間、最後の対決、と流れるようにストーリーは進む。アイリアンの男前っぷりが炸裂しているのでファンは必見。第五巻を読む前に読んだ方がいいかも知れないが、後から読んでも支障はない、かな。ラスの驚きはなくなってしまうだろうが。

アースシー解説……アースシー世界の解説。ページは少ないが、竜、神聖文字、歴史、魔法等、内容はかなり充実している。読むと一巻から読み直してみたくなること請け合い。

以上、非常にお得な中編集です。
発表順でいくと四巻の後、五巻の前なので、順番通りに読むとアースシーの風がもっと解りやすくなるかも知れません。私の場合五巻の後でしたが、『トンボ』以外は特に問題ないと思いました。

というわけで今度こそゲド戦記は終わり。
だよね……ル・グウィン



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