勝利の女神:NIKKE[DAEMON X MACHINA] 作:ちしかんn号機
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〔ラピSIDE〕
私―――[分隊04-F]の隊長であるラピはラプチャーから自らを護るために地下深くに築かれた最後の楽園[アーク]へと向かうエレベーターに乗っていた。
エレベーターには隊員であり戦友の“アニス”。
そして腕を組みながら両眼を閉じて何かを考えている指揮官―――クロガネ少佐が乗っている。
「シフティー…マリアンに何があったの?」
〘皆さんは現場で見たので知っていますが、ラプチャーの侵食コードに犯されていました。ですが、その侵食コードがどのようなものだったのかは不明です〙
「でも、どのタイミングで侵食コードを受けたのよ。あの時―――本来の作戦区域に到着するまでは正常だったのよ。しかも[ブラックスミス]に襲撃された時にクロガネ様を庇っていたし」
「それは多分、指揮官―――クロガネさんがいたからです。ニケの最優先事項は指揮官を護り命令に従う事ですから。そしてクロガネさんは数いる指揮官の中でもニケを兵器ではなく同じ存在かそれ以上の扱いをする方です」
「それは…まあ、知っているけど…」
「恐らくクロガネさんだったから侵食に耐えられたのでしょう。普通の人間や指揮官とは違いニケである自身を同等の存在として…戦友として扱ってくれる。それだけでマリアンがクロガネさんを庇うという―――ニケとしての責務を全うできたのでしょう」
「そんなことが…」
アニスとシフティーの会話が丁度いいタイミングで終わった。
それなら、私が思っていたことを共有しておかないと。
「アニス、シフティー、クロガネ少佐。マリアンが侵食されたのは何時からでしょう」
「え?」
〘え?〙
「……」
「マリアンの浸食が始まったのは何時から?」
「それは…どこかの攻撃で……」
〘ですが、マリアンがラプチャーの攻撃を受けた報告はないはずです〙
「そうね。私達と合流してからマリアンも私達もラプチャーの攻撃を受けていない。そうなるとクロガネ少佐と合流する前に侵食を受けたことになる―――クロガネ少佐。確か、マリアンは右足首を負傷して貴方が治療したと、彼女を現場でメンテナンスをする際に聞きました。それは本当ですか?」
「ああ。ただあの負傷はラプチャーの侵食コードが混じった攻撃の傷ではなかった」
「…」
「どういう事?」
〘それは…〙
クロガネ少佐はゆっくりと目を開けた。
アニスは角度的に見えずシフティーは通信越しではわからない。
だけど私には見えた。
クロガネ少佐の瞳には静かでありながら強く燃える憎悪の炎が燃えていた。
「マリアンは地上で侵食されたのは100%ない。ラピ、俺が治療した以外に彼女の身体に負傷痕はあったか?」
「いえ…」
「だったら答えは簡単だ―――マリアンの侵食はアークから始まっていた」
「!?」
〘ッ!?〙
クロガネ少佐の結論にアニスとシフティーが驚く様子を見せた。
私もクロガネ少佐と同じような事を考えていたけど、僅かな可能性とだけしか考えていなかった。
それを彼が―――アークのを実質的に支配している中央政府所属の人間がそう発言した。
いや、大半の中央政府の高官や上層部、アークの特権階級達から悪魔と称される彼だからこそいえる事かのかもしれない。
〘アークの防壁が破られたのでしょうか?〙
「いいえ。アークの防護壁は堅固よ。ラプチャーの侵食コードくらいは簡単に排除できる」
「ラピ。何を言いたいの?」
「さあ…」
私達にやり取りにクロガネ少佐は再び目を閉じた。
私は彼について色々と疑問に思う事があった。
ラプチャーを破壊可能な銃器を扱える身体能力。
私が知るアークの指揮官の中で頂点ともいえる指揮能力。
小型化したとはいえ、そのラプチャーの攻撃を受けてもなお怯むどころか投げ飛ばす身体能力。
そして黒鉄と赤い光を発する機械式のパワードスーツを纏ったあの姿。
あの姿に関しては私は知っている
かつて私の師であり目標でもあった勝利の女神。
かのゴッデス部隊に所属していた“レッドフード”が最高の相棒であり初恋の人。
そして、ゴッデス部隊のリーダーであり最強のニケである“リリーバイス”と以上の戦闘能力を持った人型戦闘兵器である[
でもクロガネ少佐がレッドフードが言っていたクロガネと同一人物の可能性は低い。
なにせ、レッドフードは彼の素顔を唯一知っている。
そして私が
レッドフードが言っていた[
彼はいったい何者で、どうして[
問いたいが、今の私の彼では信頼関係も何もない。
それに本人はあの姿の事を隠すようにとお願いした。
それに私が聞くと、私が抱えている最重要機密事項であり、知れ渡ればアークがひっくり返りかねない情報を問い詰められてしまう。
このことは私の心の内に仕舞っておく方が無難。
そして、私が今彼の正体に関する出来る考察はただ一つ。
私はエレベーターの外に見える人工の光を発しし続けているアークを見ながらそう思考を巡らせた。
◇
〔クロガネSIDE〕
俺はアークへと来た後、真っすぐ[中央政府総司令部]*1へと向かい、俺が中央政府の中でも唯一信頼できる副司令官の部屋にいた。
「まったく。急に面会を申し出るとは君も相変わらずだな―――クロガネ」
「それくらいの権力を与えた本人がよく言う―――“アンダーソン”」
俺の目の前でやれやれと言った様子を見せるのは“アンダーソン副司令官”。
中央政府でも数人いる副司令官の中でもひときわ能力が高いとされており、俺が中央政府所属の中でも唯一信頼を置いている人物。
見た目はいかにもイケオジとよばれており、中央政府の女性職員や女性隊員などにも人気なのは周知の事実だ。
「まったくだ。まあ、後悔はしていないがね。シフティー君から報告は全て聞かせてもらい情報も読ませてもらった。どうやら異常進化した[ブラックスミス]と交戦したようだね」
「ああ。ギリギリだったが何とか勝てた。おかげで[ディアボロス]の弾を始めて使い切った」
「随伴したニケ2人もかなり負傷したらしいな。君が指揮した上でとはよほどの個体らしいな」
「撃破したかと思えば、脱皮みたいに小型化して復活して襲撃された。まあ、本当に脱皮な感じで装甲が貧弱で最後の一発で仕留めたけどな」
俺はアーセナルを纏って異常進化したブラックスミスを撃破した事はシフティーに報告していない。
あの時、周囲のエブラ粒子濃度がアークとの通信ができないくらい濃くて助かった。
ちなみに、ラピとアニスは俺がアーセナルを使って撃破した事は黙秘してくれた。
ただし、脳をスキャンされて情報が漏れるのはどうしようもないと言っていた。
それに関しては俺がとやかく言える立場ではないし、そん時はそん時で前哨基地ごと拠点を地上に引っ越して俺も巡礼者みたいに活動するけどな。
まあ、あくまでそれは最終手段だがな。
「しかし、君が追っている2つの件が見事に重なるとはな。報告にあった援軍のニケの侵食についてだが…」
「ああ―――確実にアークでやられている。これで
「そうか…。ここまで我々の情報網や警戒網に引っかからないとなると、ここからはバーニンガムやドバンなどの副司令官クラス以上が裏切り者の候補になってくるな」
「だな…。まあアンタはありえないとして“ドバン”もないだろう。奴は所詮[アウターリム]の情報をアークに売り渡して副司令官になっただけで、実力はアンタの半分すらない。そうなると他の副司令官が怪しいな」
「“バーニンガム”は…無理だろうな。彼は気弱な性格を使って自らの本性を偽っているといはいえ、家族愛が強いのは確かだ。そんな彼がアークを裏切る行為をするとは考えにくいな」
「そうなると
「最悪の可能性の話だろう? 君は極力武力を行使せずに、それ以外で出来る事を優先する。だからこそ私の権限で前哨基地の管理権限や雇用権限、そして副司令官以下やアーク三大企業のCEO達の指令を拒否でき、私以上の命令も妥当な理由があれば拒否できる[特殊別動隊]に任命したのだから」
そう言って俺を見るアンダーソン。
毎回コイツと合うとゴッデス部隊指揮官だった“アンデルセン”と呼んでいる親友が脳裏によぎる。
アイツとアンダーソンはどこか似ているんだよな。
[エターナルライフ]を接種をしていて生きている…とも考えたが、昔のアイツは息を吐くように駆る愚痴や冗談を言っていた。
だが、アンダーソンにはそれが無い。
雰囲気が似ているだけで、あいつと同一人物だと思うのはアンダーソンという人間に失礼だしな。
「そこに関しては感謝してもしきれない。ありがとうな」
「君が功績をあげたのもあるからな。数々のタイラント級ラプチャーの撃破、未解明地域の調査、3人のピルグリムとの接触にヘレティックとの接触。君はアーク史上稀でありアークにとって欠かせない存在なのだから」
「まあ、中央政府の高官共や特権階級をもった大半の奴等には嫌われているがな」
「それは仕方がないだろう? それに君は彼らに気に入られたいとも思ってないだろう?」
「ああ。さっさとくたばれって思っているな」
「まったく…。君は変わらないな」
「ああ。変わるつもりは一切ない。俺は俺として死ぬまで生きて、どんなに躓いたりどうしようもないことがあっても足掻いて前に進んで―――周りを最高のハッピーエンドにしたいんだよ」
「君の知り合いとの約束だったね」
「ああ」
かつて、シンデレラ、セイレン、ヘンゼルとグレーテル、エイブと宇宙エレベーターを目指す前に約束した事。
どんなことがあっても諦めず、全力を尽くして今という物語をハッピーエンドにする。
だからこそ、俺はアークを変える為にこうして動いている。
「さて、今後も君は地上の調査を継続して欲しい。アーク内にいる裏切り者は私がメインでやっておく。君は地上の異常個体やまだ遭遇していない[ピルグリム]達、未知の環境変化、ヘレティック、ラプチャーに関する情報を調査して集めてくれ」
「ああ。そんじゃな」
「ああ」
俺はアンダーソンがいる副司令官室を後にして、拠点である前哨基地へと歩みを進めた。