勝利の女神:NIKKE[DAEMON X MACHINA] 作:ちしかんn号機
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〔クロガネSIDE〕
ロード級ラプチャー率いる中隊規模のラプチャーとの戦闘は俺達の完勝で終わった。
彼女たちの能力は量産型ニケを遥かに超える戦闘能力を持っている。
特質した能力はないが、基礎がしっかりできていて俺も指揮に関しては楽だった。
そんな勝利もつかの間で、俺達は予定通りの作戦区域に到着した。
場所は廃墟となった街にある十字路だ。
「指定されたポイントはこの場所だが…」
「誰もいないわね」
「そうね。まずは手分けして探してみましょう」
「―――はイ」
なぜだろうか…マリアンの言動に妙な違和感を感じる。
彼女の眼を見るが―――赤く光っていない。
「マリアン。大丈夫か?」
「大丈夫…デす………イえ…は……ヤク…」
「おい、マリアン。明らかに変だぞ?」
俺は立ち尽くしながら言動がおかしくなっているマリアンを見る。
「指揮官、どうかしましたか?」
「どうしたの?」
ラピとアニスが心配そうに俺とマリアンの近くに来た。
「マリアンの様子がこの場所に来てから急におかしくなっ―――!?」
俺がそういいながらマリアンの顔を見た瞬間絶句した。
なぜなら―――
「指揮官とマリアンの様子が―――ッ!? これは侵食反応!?」
「え!? どうしてマリアンが!?」
2人もマリアンの様子に気づいた様子を見せた。
なぜだ…ついさっきまでは普通だった!
俺が追っておる案件の予兆とは全然違う!?
「クロガネ…ショウサ……ハヤク…ワタシを…コ、コロシテ…クダサイ……ッ!」
「マリアンッ!?」
「ハ…早く……シナイト……モウ…私ハ!!」
俺は胸のホルスターにある拳銃を取り出そうとした瞬間―――
「ニゲテ…ください…クロガネ…少佐……」
マリアンが侵食に犯されながらも、
そして―――
―――ドォォォォンッ!!!!
マリアンがいた場所に見覚えがある巨大な黒い職種が無数に出現。
マリアンを呑み込んだ。
〘この反応は―――[ブラックスミス]!? なんで出現と同時に!?〙
シフティーが焦る声音で通信を入れて来た。
だが、俺に取ってはどうでもいい。
今は自分の判断ミスで部下の介錯に躊躇ったどころか、敵の潜伏と奇襲にも気づけず挙句の果てにはマリアンに庇われた。
眠りから醒めて初であり最悪な失態だ…ッ。
俺は[ディアボロス]を組み立てマリアンを取り込んだタール状の液体を纏う触手―――タイラント級ラプチャー[ブラックスミス]の職種に向かって引き金を引く!
ディアボロスから放たれた弾丸はブラックスミスの触手をいくつか吹き飛ばしたが、マリアンの姿はなくそのまま撤退していった。
また…俺は遅れた。
気付けなかった…。
仲間の異常を…痛みを…。
―――「クロガネ…お前だけは生きろ……」
―――「悪いなクロガネ…。地獄への片道切符は9枚……要は…お前を…除く…俺達だけしかないようだ……だから…俺たちの分まで生きてから…こっちにこい…」
―――「クロガネ…お前は……人として生きろ。こんな絶望の状況でも光を……見失うな…そして…俺たち以上の仲間を見つけて…幸せに…生きて…くれ…」
連合軍の一部上層部によって、ラプチャーの大規模侵攻が発生し壊滅状態のガーデンから俺を庇うように戦うノインの仲間たちの遺言。
―――「ワ…ワタシヲ…コロシテ…クダ…サイ」
―――「ナカマ…ヲ…ゴッデスノカタタチニ…ジュウヲ…ムケタク…アリマセン…」
―――「コノバデハ…アナタシカ……デキマセン……」
―――「ハ、ハヤク…シテクダ…サイ! ワタシタチガ…ジンルイノ……ゴッデスノ……アナタノテキトナルマエニ!!」
100年前、一緒に戦った
「悪いな。私はもうダメみたいだ。できれば、ガラスの靴の姫様の傍にいてやってくれ……。止められるのはお前しかいないからな―――」
そして、1人侵食に抗いながらも最期を悟り仲間に仲間殺しの辛さを味合わせない為に、自ら死地を求めて去った“ナーヴ”と同じくらい信頼していた相棒の去り行く姿。
クィーンとの戦いから眠り目覚めて今日まで俺は、あの時のような―――仲間を失わない様に必死にやって来た。
敵は徹底的に滅ぼし、邪魔する奴らは容赦なく潰して来た。
そして俺は自分で救える者たちを増やすべく、アークでも強くなった。
だが…どんなに強くなっても…俺はまた同じ過ちを繰り返してしまった。
仲間の異常に……その異常を隠す本質に気づけなかった…。
もう…同じ過ちは繰り返さないと決めたはずなのに……俺はまた…ッ。
「クソォッ!!!」
俺は地面を自分への情けなさと怒りを込めて地面を殴りつけた。
地面が揺れて、俺の拳からは血が溢れ出した。
痛みは感じない…ただそこにあるのは自分が犯した過ち。
そしてさっきの行動で怒りをある程度発散して確信に至った。
アークに…ラプチャーに与する裏切り者が―――
勝利の女神達がこれまで積み上げてきたモノを蹴り壊し嘲笑う下種以下の奴が居るって事をな。
「指揮官…」
「指揮官様…」
俺の事を心配そうに見る二人。
そうだな。
もう俺には後悔も後退もする時間も権利も許されていない。
今の俺に出来る事は自分が犯した過ちをどう償っていくかだ。
〘今の触手はタイラント級ラプチャーの一種[ブラックスミス]です。地上にあがったニケ達を捕獲して自身や他のラプチャーの部品にする特殊個体です!〙
「知っている。奴とは何度も交戦している。だが、妙なのはそっちの方でも奴の接近に気づけなかった事だ」
〘はい。恐らくですが触手だけを伸ばして本体は遠くにいた可能性が高いです。ですが、ああして行動を起せば[ブラックスミス]の反応を検知できます!〙
「場所はわかっているのか?」
〘はい!〙
なら、まだ俺が責任を取れる猶予があるな。
そして奴の行動は他の[ブラックスミス]とは大きく違う―――いや、賢い。
恐らく数ある特殊個体でありタイラント級の中でも歴戦の個体―――[異常個体]にカテゴリーされる強さを持っている。
今の俺では勝率は3割ってところか。
アーセナルは―――後30分か。
あのブラックスミスは特殊個体以上の強さで、どう動くか割らない以上は賭けだな。
「指揮官。行方不明になった調査隊は恐らくあの[ブラックスミス]によってやられた可能性が高いです。まだ―――」
「間に合う可能性がある。[ブラックスミス]は捕獲したニケをしばらくの間保管する習性がある。時間的にはまだ、ニケとしていきている可能性があるな」
「はい。指揮官は―――
ラピが俺に問いかけて来た。
ここでマリアンを見捨てて人類の敵となり果てたイラギュラーにさせるのか。
または救出して、俺がマリアンをイレギュラーではなく勝利の女神として終わらせるかを。
そんな状況にアニスが会話に入って来た。
「ラピ! どうもこうもないでしょ! 相手はタイラント級で特殊個体なのよ! いくらロード級を倒したからって、驚異の度合いが違いすぎるわ! 今は頑張って逃げなきゃ!」
「―――指揮官」
「そんなこと決まっている。俺は俺の過ちを見過ごすつもりはない。マリアンを勝利の女神として救う。だが―――
「指揮官!?」
「指揮官様!?」
「これは俺が犯した過ちだ。2人は関係がないどころか元は救援対象。これ以上アンタらを危険にさらすのは不本意だ。ここからは俺1人でやる」
俺は[ディアボロス]のボルトアクションを作動させて、薬室に大口径の対ラプチャー対物ライフル弾を装填する。
「シフティー。分隊04-Fのラピとアニスをこの区域から安全なルートで離脱させてくれ」
〘クロガネさん…〙
シフティーの心配が籠った声音が通信機器から聞こえる。
すると―――
「指揮官―――私もついていきます」
「ラピ。これは俺の過ちで問題だ。これ以上は他人を巻き込むつもりは―――」
「いえ、ついていきます。これ以上―――貴方が重荷を背負い続けるのはマリアンの為にもなりません」
「ラピ…」
一瞬、ラピがかつてのゴッデス部隊の一人と姿が重なった。
ゴッデス部隊に合流してからも一人だった俺を、一人にさせない様にしてくれた熱き赤色の長髪と、マフラーをなびかせる勝利の女神と。
「ちょっとラピ!? 正気なの!? 死んじゃうんだよ!!」
アニスがラピを引き留めようと声をかける。
そんなアニスにラピは何かを決めたような表情で口を開いた。
「アニス―――やってみよう…いえ、やってみたいの」
「…もしかして、見つけた?」
「まだわからない。でも今の指揮官と貴女とやれるだけやってみたいの」
ラピの言葉の意味は深くはわからない。
だが、彼女と長い付き合いであろうアニスは察したかのように切羽詰まった表情からため息をつくと同時に表情を明るくした。
「ラピがそこまで真剣に言うんじゃ仕方が無いわね。いいよ―――でも、私だけ仲間外れは駄目だからね」
「アニス…ありがとう」
どうやら2人は引く気はないらしいな。
まったく、ここまで強情な勝利の女神は[ゴッデス]と[オールドテイルズ]以来だ。
「ラピ、アニス。ここからは確実に勝つとは言えない戦いだ。下手すれば今日のスケジュールに[死ぬ]が入る―――それでも俺と共に
「はい。覚悟は出来ています、指揮官」
「ここまで来たらやるしかないでしょ。ここまで来て帰れってのは無しだよ、指揮官様」
「わかった。これより調査分隊捜索を中断してマリアン救出任務を始める。これから死線で戦いあう仲間―――俺の事は指揮官ではなくクロガネと呼んでくれ」
「わかりました。クロガネ少佐」
「ええ。クロガネ様!」
「よろしく頼む―――ラピ、アニス」
こうして俺は勝利の女神二人と共にラプチャーに奪われた勝利の女神を奪還―――[
次回―――悪魔が再誕する