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ラブ★コン 恋人レベル

すみません。
調子に乗って、またまたラブ★コンのあるシーンを想像してみました。

なんだか、どんどん想像(妄想?)が膨らんでしまって。(笑)
ラブ★コンの世界観を壊さないようにしているつもりですが、あくまで「つもり」ですので、もし壊されるのを避けたい方は読まないようにしてくださいね。

なお、今回は、ほぼネタバレは無いと思います。

それでは、スタート!

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大谷と小泉リサがつきあい始めて、3ヶ月がすぎた。
すっかり秋も深まり、紅葉で山が赤く燃える季節がめぐってくる。

学校の帰り道、小泉リサは千春ちゃん・信ちゃんとハンバーガー店にいた。
リサが●ックシェイクを飲んでいると、信ちゃんが口を開いた。

信ちゃん「なぁ、リサ。いっこ訊いていい?」
小泉リサ「どしたん? 信ちゃん」
信ちゃん「大谷くんって、2人切りのときもリサのことを『小泉』って呼んでるん?」
小泉リサ「? うん、そやけど?」
信ちゃん「へぇ、そーなんやぁ・・・」

リサは、その言い方に少し引っかかった。

リサ   「それが、どうかしたん?」
信ちゃん「どうもせーへん。けど、ちょっと不思議やなぁ、と思って」
リサ   「へ? なんで?」
信ちゃん「大谷くんって、あたしのことを『信ちゃん』って呼ぶし、千春ちゃんのことも『千春ちゃん』って呼ぶやん。なのに、なんでリサだけ『小泉』なんかなぁ?って」

リサは、目をぱちくりさせた。

そう言えば、そうだ。
あまり気にしたことなかったけど、大谷は、「信ちゃん」・「千春ちゃん」とは言うのに、リサのことは苗字で呼ぶ・・。

千春ちゃん「でも、大谷くん、あたしのことを『田中さん』って呼ぶこともあるよ?」
信ちゃん  「う~ん、両方使ってるんかな。だけど、リサのことを『リサちゃん』とか『リサ』って呼ぶのは聞いたことないやーん」

図星だった。
リサは、大谷に「小泉」以外の言い方で呼ばれたことがない。
それどころか、つきあう前は「巨女」「デカ女」と言われたい放題だった。

信ちゃん「リサ、2人んときも言われたことないん?」
リサ   「・・・・ない」
信ちゃん「そーかぁ。ずっとリサのことを『小泉』って呼んできたから、なかなか変えられへんのかなぁ?」

リサの目が、すっと細くなる。
眉間にしわが寄った。
いつの間にか両手の拳が握られている。

リサ「・・・なーんか、腹たってきた」

あわてて千春ちゃんが言う。

千春ちゃん「リサちゃん、リサちゃん。大谷くんって照れ屋さんやから、呼びたくても、なかなか呼べないだけなんちゃうかな?」
リサ    「照れ屋さん~?? でも、信ちゃんの言うとおり、大谷は千春ちゃんのことは『田中さん』って呼ぶより、『千春ちゃん』って呼ぶ方が多いで? あたしも何回も聞いてるもん」
千春ちゃん「で、でも! 鈴木くんかて、あたしのこと『田中さん』って呼ぶよ?」
リサ    「鈴木くんの場合は、信ちゃんも『石原さん』やし、あたしも『小泉さん』やん。でも、大谷の場合は、あたしだけ『小泉』やねんもん。ちょっと、おかしいと思わん?」
千春ちゃん「え、あの、でも・・」

千春ちゃんは、目を白黒させた。

リサ「あ~、なんか、めっちゃ腹立ってきた!」

信ちゃんと千春ちゃんは顔を見合わせた。
どうやら、触れてはいけない部分に触れてしまったらしい。

信ちゃん「ごめ~ん、リサ。変なこと訊いて。最近ラブラブやから、2人んときはどう呼び合ってるんか、聞いてみたかっただけやねん」

そう言って、信ちゃんは両手を合わせてリサに謝った。

リサ    「ラブラブちゃうもん。よぅ足手まといって言われるし、メール送ったかて、ぜんぜん返ってけーへんし、勉強勉強で電話もくれへんし」
信ちゃん「そやけど、学校やったら、いっつも楽しそうに夫婦漫才してるやん~」
リサ   「信ちゃん。悪いけど、漫才は付き合うずーーーーーーっと前からしてるっちゅーねん!」

信ちゃんは、天井を仰いだ。
信ちゃん「・・・・あかん、この子、なんか自分で自分を焚きつけてはる・・」

千春ちゃん「リサちゃん、だいじょうぶ。大谷くん、リサちゃんのこと、めっちゃ大事にしてると思うよ?」
リサ    「えぇ、そぉ? そんなん、あたしには全然わからへん」
千春ちゃん「でも、あたし、リサちゃんがうらましい時あるもん。大谷くん、いっつもリサちゃんのことのこと考えてるから」

リサは、ぽかんと大きく口を開けた。
驚きのあまり、目が点になっている。

リサ     「・・・千春ちゃん。そんな無理になぐさめてくれんでもええよ。いっつも、『アホアホ』言うてる大谷が、あたしのことばっか考えてるなんて、あり得へん」
千春ちゃん「あたし、別に無理なんかしてへんよ?」
リサ     「いい、いい。千春ちゃん優しいもんな。そのくらいわかってるもん・・・・・・あーーー、やっぱ、このままじゃ、おさまらん。大谷に文句言ってくる!」
信ちゃん  「えぇ! どこ行くんよ!?」
リサ      「もうすぐ、大谷の塾が終わる時間やねん。直接、文句言わんと気ぃすまんもん。悪いけど、先いく!」

そう言って、リサはハンバーガー店を飛び出した。

千春ちゃん「行っちゃった・・・・」
信ちゃん  「失敗した~。まさか、リサがこんなに反応するとは思わんかったわ」
千春ちゃん「うん。あたしも、びっくりした。大谷くんが、ずっと勉強ししてるから淋しいんかな」
信ちゃん  「傍から見てたら、ラブラブなのにねぇ」
千春ちゃん「うんうん。すっごいラブラブ。・・・・リサちゃん、気づいてないんかも。」
信ちゃん  「なにを?」
千春ちゃん「大谷くんって、リサちゃんによく『アホ』って言うやん? だけど、ぜったい他の女の子には言わへんやんね?」
信ちゃん  「そやね~。いい加減、リサもそれくらい気づいてもええのに。ほーんと、ぜいたくもん。」

そう言って、2人は苦笑した。

夜8時。
大谷は、塾が終えて自宅に向かうところだった。
苦手な英語の講義だったため、頭の中がこんがらがっている。
フラフラだ。
下を向いて、とぼとぼと歩いた。

そのとき。
人影が、大谷の行方をさえぎった。

大谷は、驚いて視線を上げる。
街灯が逆光になっていて、一瞬、相手の顔がわからない。

目が慣れてきた。

「・・・なんや、小泉か」
ホッとしたように、大谷の表情がゆるんだ。

「どないしてん。かっこええオレの顔を見たくなって、待ち伏せか?」
大谷は、冗談っぽくそう言った。

「そう、待ち伏せ。」
リサは、低い声でそう言った。
いつもより、数段低い。

大谷「? どっか変やで、小泉。なんかあったんか?」
リサ「ええ、ええ。めっちゃありましたよ。たった今」
大谷「たった今??」

大谷は、首をかしげた。

リサ「大谷。あんた、あたしのこと何て呼んでる?」
大谷「なんや、それ? ・・・・そりゃ、『小泉』やん」

リサは、ため息をついた。

リサ「そやなぁ、そう呼ぶわなぁ」
大谷「はぁ? 『小泉』は『小泉』やろ。なに言うてんねん。それとも、『巨女』とでも、呼んで欲しいんか?」
リサ「んなワケあるかいっ」
大谷「じゃぁ、なんやねん?」

リサの視線に、力が宿る。

リサ「・・・おーたに。あんたなぁ、信ちゃんや千春ちゃんのことは名前で呼ぶのに、あたしのことは何で『小泉』なんよ!?」

大谷「あ? 意味わからん」

リサ「あたしのことも、『リサちゃん』とか『リサ』って、呼んでくれてもええやん!」
大谷「ぇえ・・?」

大谷は、やっとリサの言っている意味を理解した。
頭をぽりぽりと掻く。

大谷「突然、なにビックリすること言うとんねん。『小泉』は『小泉』やねんから、それでええやんけ」
リサ「何がや。ぜんぜん、ええことないわ! 女友達よりあたしの方が扱い悪いって、どーゆーこと?」
大谷「アホか。どっこも扱い悪ぅないっちゅーねん。オレ、めっちゃ優しいやろ!」
リサ「そんな優しいんやったら、『リサちゃん』くらい言うてよ!」
大谷「んー、でもなぁ。いまさら『リサちゃん』呼べ、言われても・・・・・。」
リサ「言われても?」
大谷「・・・キモいやん。」
リサ「キモいって、どういうことよ!」

リサは、ぷーーーっと頬をふくらませた。

大谷「ちゃうわ。なに誤解しとんねん。キモいんはオレや」
リサ「え?」
大谷「学校で、オレが『リサちゃーん』とか呼ぶ場面、想像してみ? クラスのヤツら、キモ死にするで」

リサは、そのシーンを思い浮かべてみた。

う~ん。
確かに、ちょっとさむい・・・・。

リサ「で、でも!」
大谷「なにが『でも』やねん。だいたい、おまえかて、オレのこと『大谷』呼ぶやん」
リサ「?」
大谷「『敦士』とか、呼んだことないやろ」

リサは驚いた。

リサ「呼んで欲しいん?」
大谷「ちゃうわ! そやなくて、、、、試しにいっぺん、『敦士』言うてみ?」
リサ「なんなん、それ」
大谷「ええから、呼んだらわかる」
リサ「んー。よーわからんけど・・・・わかった」

リサは、大谷の言う通り、「敦士」と呼ぼうとして口を開いた。

「あ」

そこで止まった。
・・・・なぜか言葉が続かない。
言いにくい。

リサ「・・・・つし

大谷「あ!? なんか言うたか?」
リサ「言うたよ」
大谷「なんやて? 聞こえへん」
リサ「『あつし』って、言うたもん!」

大谷は、声を上げて笑った。

大谷「なーんやそれ。『あつし』んとこだけ、めっちゃ声小さいやんけ」
リサ「しょーがないやん。これまでずっと『大谷』やってんから」
大谷「そやろ? 言いにくいやろ?」
リサ「・・・うん。言いにくい」
大谷「そやったら、オレが『リサちゃん』言いにくいんも分かるやろ」
リサ「うん・・・・・」

大谷は、両手を首の後ろに回して、手を組んだ。

大谷「ええやん。『大谷』と『小泉』で。ムリして下の名前で呼んでも、ざぁーとらしいだけや」

リサは、少しうつむき加減に答えた。
リサ「・・・そーやなぁ。やっぱし、『敦士』とか『リサ』って呼ぶんは、あたしらには似合えへんのかなぁ」
大谷「アホか」

そう言って、大谷は軽くリサの頭をはたく。

大谷「誰も、そんなん言うてへん」
リサ「じゃぁ、なによ?」
大谷「まだ、慣れてへんだけやろ」
リサ「なにが?」
大谷「・・・・ほーんま、アホやな」

リサが、またぷーっと頬を膨らませた。
リサ「どーいう意味よ!」

大谷が、とぼけた調子で返す。
大谷「つき合ってからより、つき合う前の方がずっと長かったやんけ。つき合い出したからって、そんな急には変わらへんわ」
リサ「そーかぁ。そやなぁ」
リサにも、なんとなく大谷の言うことは分かった。

大谷とあたしが友達から恋人になったんは、ちょっと前やもんな。
いまでもオール阪神・巨人してるし、そうそう変わるもんやない。
ゆっくり恋人レベル上げていけばええんや。

少し、リサの表情が晴れやかになった。
それを見て、大谷がニッと笑う。

大谷「おまえ、いろいろ考えすぎやねん。オレが勉強で忙しいから、淋しかったんか?」
リサは、大谷のセリフにドキッとした。
顔が赤くなる。

リサ「んなことないわーーーっ!」
大谷「そぉかあ? めっちゃ情緒不安定やんけ」
リサ「なに言うてんの。あたしの情緒は、すっごい安定しまくってますーー」
大谷「ほんまかい」
リサ「そんなこと気にせんと、チビッ子受験生は英語やっとったらええんじゃ!」
大谷「おぉ? 言うたなぁ! そんなん、めっちゃぶさいくな顔で言われたないわ!」
リサ「『ぶさいく』って、なんやの! それは、彼女に言うセリフちゃうって、何回も言うてるやろ!!」

2人は、ぎゃあぎゃあと言い合いを続けた。

しばらく言い合っていると。
1人の背の高い男性が、2人に声をかけた。
「やっぱり、大谷くんと小泉さんだ。一体どうしたの、こんなところで」

涼やかな声。
ファッションモデルのような整った顔だち。
薄手の茶系ロングコートに黒い手袋がよく似合う。

リサ「マイティせんせーーーー!!」
大谷「・・けっ」

リサはニコニコしながら声を掛け、大谷はそっぽを向いた。

リサ  「どうしたんですか? 先生こそ、こんなところで」
マイティ「仕事の帰りなんだ。びっくりしちゃったよ。聞き覚えのある声の2人が、大声で騒いでいたから。痴話ゲンカでもしてたのかな?」
大谷  「アホか。するわけないやろ」
リサ   「あはは、ちゃいますちゃいますー。ちょっと、ふざけてただけです」
マイティ 「そう? なら、いいんだけど。なにか悩みがあったら、いつでも相談にのるからね」
リサ   「ありがとうございますー」
マイティ「大谷くんもね」
大谷  「悩みなんか、なんもないわ!」
大谷は、そっぽを向いたまま答えた。

マイティ「あはは、ぼくは嫌われてるみたいだね。じゃあ、消えることにするよ。でも、夜も遅いんだから、大谷くんはちゃんと小泉さんを家まで送ってあげてね?」
大谷  「よけいなお世話じゃ。おまえなんかに言われんでも、ちゃんと送っていくわいっ!」
マイティ「それなら、良かった。小泉さんを大事にしないと、ぼくがもらっちゃうよ?」
大谷  「婚約者おるのに、なに言うとんねん、この不良教師!」
マイティ「あれ、大谷くんも知ってたんだ。ざんねん。じゃあ、もう魔法は切れちゃったかな」
大谷  「魔法? 何やそれ?」
マイティ「こっちのこと」
マイティは、チラッとリサを見てウィンクをした。
リサも、にこっと笑う。

大谷  「さむっ」
大谷は、両肘に手をやってブルブルと震えた。

マイティ「じゃあ、また明日。早く帰るんだよ」
そう言って、マイティは去っていった。

リサ「やっぱし、マイティ先生、かっこいいなぁ」
大谷「どこがや。さむいだけやんけ」
リサ「そう? めっちゃ大人やし、スマートやん」
大谷「あれは、スマートちごてキザって言うねん。まぁ、マイティの話は、もうええわ。はよ帰るで、小泉!」

そう言って、大谷はリサの手を握った。
その手をひっぱりながら、黙ったまま、ずんずんと先に歩き始めた。

リサ「大谷、おこってんの?」
大谷「怒ってへん」
リサ「でも、ぜんぜんしゃべれへんやん」
大谷「オレは、もともと寡黙な少年やねん」
リサ「よー言うわ」

リサは、あきれて夜空を見上げた。
秋の夜空は澄んでいて、きれいにカシオペア座が見える。

リサ「なぁ、大谷?」
大谷「なんや?」
リサ「あんたが、あたしのことを『リサ』とか『リサちゃん』呼べるくらいまでレベル上がるには、どのくらい掛かりそう?」
大谷「レベルって、オレはゲームの勇者かいっ」
リサ「ちゃうけど」
大谷「なら、訊くな」
リサ「でも、訊きたいやん」
大谷「そんなん、訊かれてもわからんわ」
リサ「そこをあえて言うたら?」
大谷「う~ん・・・・。そやなぁ。10年後?」

リサは、がくっと来た。

リサ「えー、10年後~??? それ、遅すぎ! どんだけレベル低いままやねん!」
大谷「じゃぁ、9年後」
リサ「一緒や!」
大谷「あはは。冗談や」
リサ「あたりまえや。本気やったら、しばきたおす!」

大谷のくっくっという小さな笑い声が、聞こえた。

大谷「まー、でも。意外ともっと早く、『小泉』って呼ばれへんときが来るかもしれんけどな」
リサ「なによ、それ? なんで呼ばれへんの?」
大谷「『小泉』が、『小泉』じゃなくなったりしたらな?」
リサ「へ? あたしは、ずーっとあたしやで。わけ分からん」
大谷「あはは。そやな、わけ分からんな」

大谷は、小泉の方を振り向いて、ニッと笑った。

リサ「なんやの、急に機嫌良うなって。気持ちわる~」
大谷「そーかー? 別にふつうやで」
リサ「いーや、ぜったい機嫌ええもん」
大谷「かもなぁ」
リサ「なんか、ずるい。あたしは、めっちゃ心臓かゆいのに」

大谷は、ぷっと吹き出した。

大谷「あははははは。おもろすぎ。」
リサ「笑いトコちゃうっちゅーねん」
大谷「そーかぁ」

そう言って、大谷は急に足を停めた。
ふりむく。
握っているリサの手を操って、リサを引き寄せる。
リサは勢いあまって、前によろけた。
大谷の胸に、頭をぶつける。

リサ「いたたっ」

リサは、大谷の顔を見上げる。
大谷が、すっとリサのあごに人差し指を掛けた。
リサの顔を上に向かせる。

ゆっくりとキスをした。

リサ「・・・・やっぱ、大谷ずるい。機嫌良うなってしまうやん」
大谷「うん。いやか?」

リサは首をふった。

リサ「イヤじゃない。うれしい」
大谷「なら、良かった」

リサ「でも、あんた、どうやってこんなん覚えたん? うますぎや~」
大谷「え、なにが?」
リサ「なんか流れるよーに、キスすんねんもん」
大谷「・・・アホ。どっこも流れてへんわ!」
リサ「だってさ~」
大谷「何が『だって』やねん」
リサ「もしかして、神崎さん?」
大谷「ちゃうわ」
リサ「じゃあ、天然の女たらし?」
大谷「おまえ~、頭に浮かんだ単語、ぜんぶ口にしてるやろ!」
リサ「別にそーいうわけじゃ」
リサは、握っていない方の手を”ちゃうちゃう”というように振った。

大谷・・・覚えたとしたら、それは小泉で覚えたんや

大谷は、小さい声でそう答えた。
すこし頬が赤い。

リサ「え・・・。いま、なんて言うた?」
大谷「さぁ?」
リサ「も1回、言うてよ!」
大谷「言わん」
リサ「そんなイジワルせんと」
大谷「ぜーーーったい、言わん!」
リサ「えぇーーー?」

リサは、下唇を突き出した。
くさったフナのような顔だ。

大谷「また、ぶっさいくな顔して」
リサ「そんな顔にさせたんは、誰よ!」
大谷「ちゃんと聞いてへん小泉自身」
リサ「なんでよ、大谷がめっちゃ小さい声で言うんが悪いんやん!」
大谷「ぼーっとしてるから、聞き逃すんや」
リサ「ぼーっとなんか、してへんわ」
大谷「よー言うで。バイトで皿落とした言うとったとこやろ」
リサ「それは、、、たまには、そういうこともあるわっ!」

そのとき、リサの携帯が鳴った。
「マジ、ハンパないメールだぜ♪」

リサ「あ、ごめん。ちょっと待って」
そう言って、携帯の画面を開いた。

大谷「だれ?」
リサ「お母さんからや。なんやろ・・・うわぁ、早く帰ってこいって。いま、何時?」
大谷「うは、もう10時前や」
リサ「あかん~、あたし、今日はよ帰るって言ってきたからなぁ」
大谷「ヤバイやんけ。いくぞ、小泉。おまえん家までダッシュだ!」
リサ「おっけー!」
大谷・リサ「よぉーーーい、ドン!」
2人は、家に向かって走り始めた。


数年後。
リサは、ふと、この夜のことを思い出した。

あのときは、大谷の言った「『小泉』が『小泉』じゃなくなったり」という意味が分からなかった。
ただ、いまは分かる。

・・アホやんなぁ。
つきあい出して、まだほんのちょっとやったのに、そんなこと考えてたんか、敦士。

リサは、左薬指のリングを撫でながら、そう思った。

Fin.

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