勝利の女神:NIKKE[DAEMON X MACHINA] 作:ちしかんn号機
〔クロガネSIDE〕
「んで、俺が駆けつけたと同時にアンタの指揮官は拳銃自殺をしたと?」
「はい…」
俺は目の前にいるエリシオン所属であり青と白を基調とした戦闘服を着た[ネームドニケ]*1である“マリアン”に状況を聞いていた。
まず俺が地上にいるのは、俺がアークにおける統制組織である[中央政府]において俺が唯一一定の信頼をおける[副司令官]の一人からこの地域で展開されている作戦に介入して欲しいとお願いされた。
そもそもこの作戦は、元々この地域を調査していたニケ1分隊との定期通信が46時間前に途切れた。
通信履歴やしようとした形跡も無く、捜索が必要と判断した中央政府は捜索隊である[ニケ分隊04-F]を派遣。
しかし、1時間前に04-Fの指揮官が死亡。
厄介なことにその指揮官はニケフォービア持ちであるため、捜索空域である座標をニケに共有せずに死んだ。
しかも死んだ原因が、ラプチャーに人間用の火器をぶっ放しながら特攻して、ラプチャーのライフルで頭を吹き飛ばされて死亡といったアホな理由だ。
そんな状況で新たな指揮官とニケの二人が派遣されることになったが、指揮官はつい先日ニケの指揮官としての教育を終えた現場を知らない新人。
ニケ―――マリアンはベテランだがあまりにも奇妙な派遣。
よりにもよってこの二人を乗せた輸送機が対空装備を備えたラプチャーによって撃墜された。
だが、輸送機のルートや作戦区域には対空装備、飛行型のラプチャーも検出されていない状況でだ。
それを怪訝に思った副司令官は俺がその二人のフォローと、俺とその副司令官が追いかけているとある案件の調査も兼ねて俺の出撃をお願いされてきている。
「指揮官が初めての現場で恐怖を覚えて自決か……まったく…中央政府は最低限の座学しかやらせていない新人に、救援部隊の指揮官という難易度の高い任務を押し付けたんだよ」
「申し訳ございません。私が指揮官のメンタルケアをしていれば…」
マリアンが遺体となった指揮官を見て表情を曇らせた。
「それは君のせいじゃない。
「は、はい…」
「なら責任を感じる必要は無い。恐らくだがゴッデス部隊の指揮官や新星にあこがれて指揮官になったクチだろう。まあ、地上に出る勇気ぐらいは称えないとな」
俺は自殺した指揮官の近くにいき、右胸に手を当てて何時もの言葉を呟く。
「来世は幸せでありますように……」
「……」
俺の祈をみて黙とうするマリアン。
祈りを終えた俺は遺体となった指揮官から識別コードや彼の情報が記載されたドックタグを回収する。
「あの…」
「どうした?」
「いえ…着崩していますが中央政府所属の人であるのはわかっているのですが……」
そういえば彼女に聞くことだけで俺から自己紹介はしてなかったな。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は“クロガネ”だ。階級は少佐だ」
「クロガネ…。あ、もしかして[悪魔]って呼ばれている―――あ、申し訳ございません!」
「別に良いさ、もう言われ慣れているしな。だが…頼もしいだろう?」
俺は不敵な笑みをマリアンに見せる。
「はい。お気遣いありがとうございます」
「ともかく指揮官が不在じゃ埒が明かない。あの指揮官の仕事は俺が引き継ごう」
「良いのですか?」
「元々気づかれない様にフォローするつもりだが状況が状況だ、ゴッデス部隊指揮官と新星の再来なんて言われたくらいの仕事は果たすさ」
「はい。よろしくお願いします。指揮官」
「指揮官呼びじゃなくて名前で言い」
「わかりました―――クロガネ少佐」
◇
色々とトラブルがあったが、俺はマリアンの臨時指揮官として自殺した指揮官の業務を引き継ぎ、まずは戦死した指揮官のニケ達の救援に向かう事にした。
途中でラプチャーの小隊と何度かぶつかる事があったが、マリアンの戦闘能力が高いお陰で難なく進めている。
だが―――
「マリアン。右足を負傷しているな」
「え…」
「戦闘中に右足を庇うような様子が見える。幸い人もニケも双方の治療技術は持っている―――近くに小屋があるからそこで診せろ」
「ですが、まずは救援に行くのが先では……」
「その救援分隊が負傷している方が救援される側が余計に不安になる。良いか診せろ」
俺はマリアンを強引に抱えた。
「うわ!? って私を持ち上げた!?」
「ほら、さっさと行くぞ」
◇
「ほら、右足首を負傷しているじゃないか。なぜ報告しなかった」
「先に救援に行く方が先だと判断しまして…」
「さっきも言ったが救援分隊が負傷すれば救援される側が余計に不安になるぞ。ほら、治療するぞ」
「治療というよりかは修理でしょうか?」
「言い訳は無用だ」
俺はニケの治療を始めた。
幸い重症化していなく、俺が持っているニケ専用応急治療キットで万全な状態にできる。
それから治療を終えた俺は右足首に包帯を巻いた。
「あの…ニケには全然効果が無い……」
「俺は君達ニケは人間と同等―――いや、人の代わりにラプチャーと戦う存在だからそれ以上の存在であり俺に取っては等しく戦友だ。たとえその体が機械であれど、かつて人間だった君達を兵器扱いをする気はない」
「……」
「俺がニケフィリアとでも言いたいのか?」
「いえ、なんでもありません。おかげでもう治ったみたいです」
「これでも治療技術はちゃんと学んで実戦でも使っているからな。それと俺の前では一人の存在としてふるまってくれ。そして兵器としての振る舞いは許さないからな」
「ふふ。指揮官はお優しいのですね」
◇
「ッ!? クロガネ少佐! ラプチャー10機がさらに来ます!」
「予想以上に増援が多いな」
救援を送った分隊04-Fとのランデブーポイントまであと少しの所で中規模のラプチャー中隊とエンカウンターした。
しかもこの区域にいるラプチャーがまるで俺達を狙うかのように集まってきている。
ていうか事前に副司令官からもらっていた作戦区域の情報よりもラプチャーの数が多いな。
エンカウント確率も俺の想定よりも5倍多いい。
少なくともアンデルセンから学んだ指揮官の技術の誤差は最大でも2倍程度。
もしかしてこの作戦って俺と副司令官が想定以上の何かが絡んでいるのか?
「指揮官!最終防衛ライン突破されます!」
「わかった。マリアンは最終防衛ラインを超える敵のみに機関銃掃射を!」
「ですが、まだミサイルや榴弾兵装を搭載したラプチャーが!」
「そいつらは―――俺がやる」
俺は後腰に装備している赤と黒を基調とした4つの金属のパーツを展開と同時に組み立てを行う。
そして組み立て終わると、全長2m越えの対物ライフルが姿を現す。
俺は専用のマガジンを装填し安全装置を解除しアウターとしての人外離れした五感で長距離兵装のラプチャーに狙いを定めて引き金を引く。
巨大な発射音と共に俺が狙うを定めた長距離兵装を積んだラプチャーが吹き飛ぶように撃破される。
俺はボルトアクションを作動させて20㎜口径の空薬莢を輩出する。
「指揮官!?」
「説明は後だ。今はこの状況を解決するぞ」
「…ッ。わかりました!」
マリアンが迫るラプチャーを己の銃火器であるマシンガンで処理していき、俺は長距離兵装を積んだラプチャーを処理していく。
そしてエンカウンターしたラプチャーを全滅させた。
「マリアン。状況は?」
「は、はい。残弾は70%。負傷はしていません」
「そうか。流石にこの後の戦闘は避けた方が良いな」
俺は自分が展開した20㎜対ラプチャー対物ライフルの状態を確認。
これを使ったのはアブソルートとの合同作戦以来だからちょっと心配だったが腕は鈍っていなくて安心だな。
「あの…クロガネ少佐」
「どうした?」
「いえ、その巨大な対物ライフルは…。普通にラプチャーを撃破していましたが……大丈夫なのですか?」
「ニケ用の火器を人間がぶっ放せば最悪死ぬって事か?」
「はい」
「心配するな。俺は普通の人間とは色々と違う。こうしてニケ用…じゃなくて俺が特注した対ラプチャー対物ライフルを扱えるんだ」
「色々と貴方の噂は効いていたのですが、まさか悪魔はニケ用の火器を使って戦える噂は本当だったのですね」
「ま、噂は所詮噂。百聞は一見に如かずっていうしな」
「ですが、どうして最初から使わなかったのですか?」
「今の俺は指揮官だ。俺はラプチャーと戦う君達勝利の女神を指揮するのが本懐。俺が戦うのは俺自身が最初から戦う前提の場合か、君達がどうしようもない状況になった場合のみだ」
「援護ありがとうございます。それと出来れば指揮官であるクロガネ少佐は…」
「大丈夫だ。基本的な戦いは君達に任せる。俺はあくまで指揮官。それに俺はスナイパーだからな」
「ありがとうございます。そういえば、その対物ライフルに刻印されている企業は―――エリシオンですよね?」
「ああ。君の上司というかCEOとは知り合いでね。特注で作ってもらった。名前は[ディアボロス]*2。種別は対物ライフルで、モデルは旧時代にあった[アンツィオ20mm対物ライフル]だ。まあ俺が設計したこれを作って星と君の所のCEOに設計図渡したら「スコープ無しで取り回し最悪な設計……タクティカルとはいえないな」って言われたな」
「教官と知り合いだったのですね―――って、スコープ使わずに遠距離兵装のラプチャーのコアを打ち抜いたんですか!?」
「まあな。スコープって視界狭まるし、反射で敵に位置を知らせるし、携帯する際に一番邪魔だしな」
俺は上部にスコープが着いていない事を示す様にマリアンに[ディアボロス]を見せた。
ぶっちゃけ、アーセナルにも射撃補助付いているけど俺としては現状の五感の方がそこらのセンサーよりも優れているから邪魔なんだよな。
精々毒物や大気組成、マップ程度しか使った事が無いし。
「クロガネ少佐って、色んな意味で凄いですね」
「人外だと思ったか?」
「そ、そんなことは!」
「良いさ。俺が人間じゃなくて男版ニケだの、中央政府が創った戦闘生物兵器だの色々といわれ慣れているからな」
「クロガネ少佐も苦労されているんですね」
「この世に苦労していない奴はよほど運がいい奴かクズしかいないさ。それに俺の苦労に比べれば君たち勝利の女神たちの方がよっぽどデカい。ニケフォービアの人間でさえ守らなければいけない運命を背負わされ、簡単に死ぬことも自分の記憶も持つことも許されない君たちであればな」
「クロガネ少佐…」
「俺はそんな君たちの救いの一つになればと思って行動しているんだ。おかげで中央政府の大半の高官共やアークの特権階級の奴等の大半には嫌われているけどな」
「やっぱり、クロガネ少佐は凄く優しいのですね」
そういって屈託のない微笑みを向けるマリアン。
とても優しく、人間にひどい扱いを受けても自分を強く保っている。
できれば、彼女が奴等への供物ではない事を祈っておこうか。