三人の奴隷
それから俺は魔物商と話をして馬車を確保しました。
サーカスを行う為に必要な代物ですな。
キャラバンを編成するのですぞ。
初期はクロちゃんを含めた育成中だったフィロリアル様達に引いて貰いますぞ。
「馬車が引けるのー?」
合流して魔物商のテントの近くでクロちゃんや他のフィロリアル様達にお話をしますぞ。
「ですぞ。魔物商の案内でみんなでサーカスをするのですぞ」
「サーカス?」
「サーカスー」
「サーカスって美味しい?」
「サーカスはみんなで楽しく移動するショーをするのですぞ。そして各地で奴隷をお義父さんが売買するのですな」
そう言った所でクロちゃんの眉が困った様に八の字になりましたぞ。
「えー……暗黒商人<スレイブトレーダー>で不幸贈与<ギフトアンハッピー>にクロ達の手伝いするのー?」
クロちゃんは魔物商のテントの雰囲気を感じ取っていらっしゃるようですぞ。
思えばフィロリアル様達は楽しい事が大好きな方々ですぞ。
奴隷売買という暗いお仕事に対して苦手意識を持つのはしょうがない所ではありますな。
「考え方次第な所があるかな。クロちゃんは助けたリファナちゃんとラフタリアちゃんを覚えてる?」
「うん。凄く大変そうだった。クロが温めたよ?」
「そのリファナちゃん達の故郷の人たちを助けるために奴隷売買をして集めて助けたいんだよ。その為にみんなで馬車を引いて各地で歌って踊って楽しくみんなを楽しませるの。その楽しいキャラバン隊をみんなにして欲しいんだ」
今までとは違う、サーカスですぞ。
「おー! 暗黒舞踏<ダークサイドカーニバル>をするのー!?」
「カニバル?」
「いや、それは別の言葉になってる。クロちゃん意味分かって言ってるのかな?」
「カーニバル!」
「カーニバルですぞ!」
「カーニバルだよ!」
フィロリアル様達がカーニバルと聞いて楽しげに跳ね始めましたぞ。
歌って踊って楽しくサーカスをする為に馬車を引くと言う所に興味を見出したのですな。
「わかったー! みんなで馬車を引くー」
「わーい!」
「楽しそー!」
「うん。その為に色々と大変だけど楽しく歌って踊って曲芸をして行かないとね」
「わーい!」
と、フィロリアル様達は揃ってやる気を見せてくれました。
「クロちゃん達もやる気を見せてくれて良かったね」
「楽しいサーカスの始まりですな」
「そうだね。演目とか色々と考え無いといけないからまだ正式に開くにはちょっと時間が必要だけどね。開催する場所の目星も奴隷商人から聞いて居る最中だし、サーカスを開く為の許可証は奴隷商人が手配してくれるってさ」
そう言った許可証もあるのですな。
商業手形もある面倒な世の中ですぞ。
「後は……奴隷商人が俺に預ける奴隷の選定をしてくれているのだけど元康くんも確認する? さすがにラフタリアちゃんの故郷の奴隷をいきなり指定するのは難しいから何人かは別口で管理しなきゃいけなさそう」
村出身の奴隷以外の世話をしなくてはいけないのですな。
ですが安心して欲しいですな。
「最初の世界のお義父さんは本来、村出身とは違う奴隷も世話をして居ましたぞ」
モグラや助手がその類いですな。
後年となると村関係なく人的資源として購入していましたぞ。
「じゃあ大丈夫かな。一旦奴隷商人の所に戻ろうか」
と言う訳で俺達は魔物商のテントに戻りましたぞ。
「戻ったぞ」
お義父さんがドスの聞いた声で魔物商に声を掛けましたぞ。
「フィロリアル共には話を付けてきた。奴隷売買に関して嫌がって居るような顔をしていたが舌先三寸で承諾を得てやったぞ。アイツら楽しい馬車の旅だって言ったらコロッと騙されやがった」
くくく……とお義父さんは演技の聞いた口調で仰いました。
「おお、素晴らしい。その人心掌握の術、期待に胸が膨らみますです。ハイ」
「で、そっちの方はどうなんだ? 適度に良さそうな奴隷を見繕ったか?」
「良さそうな奴隷を奴隷商人仲間にも声を掛けて用意させましたです。ハイ。勇者様はまだ奴隷の扱いは経験が無いとの話なので少数で用意しましたです」
と、他の商人からも鎖で繋がれて搬送されてきた様ですな。
その中の一人と、魔物商のテントの奥から二名ほど連れてこられた様ですな。
一人は……片腕がおかしな感じに曲がったウサギ耳の男ですぞ。
「遺伝病のラビッド種の男です。ハイ。この腕の曲がり具合から見世物として多少、見て貰える可能性がありますです。ハイ」
「ふむ……遺伝病か」
見世物枠ですな。特に芸を仕込まずとも普通とは異なるおかしな部分で見世物とすると言う事でしょう。
しかしこの奴隷……見覚えがありますぞ。
ループから抜け出す際に樹に俺の代わりを務めさせた時にお義父さんが購入した奴隷に見えますな。
お義父さんが甲斐甲斐しく整体をしたら変に曲がっていた腕が普通に使える様になるのですぞ。
もちろんそれだけで完全に良くなったわけでは無かったようですが少なくとも健常者に近かったのを覚えておりますぞ。
Lvアップによる促進と盾の勇者であるお義父さんの加護の力で遺伝病の部分を克服したようでしたぞ。
「……」
ラビット種の奴隷がお義父さんを見つめていますな。
「足は速そうだな。芸を仕込んでフィロリアル共に追わせるのも面白そうだ」
「おお、それは素晴らしい。ウサピルを狩るかの如くフィロリアル達に狩らせれば確かに見物になりましょう」
くくく……と演技で笑うお義父さんに魔物商人もヒートアップしますぞ。
クロちゃん達に追わせるのですな。
追いかけっことみんな楽しんで貰えますぞ。きっと賑やかな追いかけっこですな。
俺もバイクで逃げますぞ。
それからお義父さんは次の奴隷に目を向けましたぞ。
すると……こちらも見覚えがありますな。
何処を見てるかわからないリザードマンですな。やや人型な所が多いリザードマンですがコイツも見覚えがありますぞ。
殺気を放ってますな。
所々が人の要素が強く出ていてあまりにも中途半端な人間姿をしていますな。
「雑種のリザードマンです。ハイ。こちらも普通のリザードマンとは骨格が異なり、哀れキメラの如くの姿をしてますぞ」
「ふむ……こっちも見世物枠か」
「ハイ。ついでに多少力もありますので荷物持ちとしても酷使出来ますです」
「そうか、確かにフィロリアル共では持たせづらい代物なんかもあるだろうし悪くはないな。こういう奴を引き連れて見せつけるのも良いかもしれん。シルトヴェルトの奴等も忌まわしく思うだろ? アイツら純血主義だそうだからな」
「盾の勇者様のお考えに脱帽です。ハイ」
一瞬、リザードマンの目つきが健常者に戻りますな。
購入されるのを避けるかのように異常者顔をしているようですぞ。
「最後は……」
「ヴウウウウウウ……」
そして最後は最初に見させられた狼男ですな。
「目玉となる高Lvのコロシアムで戦っていた再起不能負傷奴隷でございますです」
腕と足に深い傷跡がありますな。
回復魔法や薬で治療出来るか怪しいラインですな。治療費の方が高く付きそうですぞ。
「強い種族を人間が鞭打ちをしてどちらが上かを見せつけるのがショーとして必要な事でございますです。ハイ」
カッと魔物商人が紋様を起動させますぞ。
「キャインキャイン! ヴウウウウ! ガアアア!」
痛みで転げ回った狼男が怒りでお義父さんに向かって飛びかかりましたぞ。
「……」
お義父さんは無言で飛びかかって来た狼男の鼻を鷲づかみにしましたな。
「キャイ!? ウウウウ……」
ピタッと狼男が鼻を捕まれて目を回しましたぞ。
そこで紋様の痛みが回ったのかそのまま倒れて痛みで悶絶しましたな。
「随分と活きが良い奴隷だな」
「だからこそで、ショーは盛り上がるのですぞ」
「なるほど、犬のしつけで金儲けって事だな」
くくく……とお義父さんは魔物商人の言葉に合わせて含み笑いをしておりました。
それから徐に俺の方を向いてどうしたら良いかと言った顔をしました。
ちょうど魔物商人に見えない角度ですな。
小声で会話ですぞ。