虚無
「そんな攻撃――!?」
「アガ――」
「グゲ――あqwせdrftgybhぬj!?」
ボコ……っと転生者達の姿が歪んで行きますぞ。
これはどういうことですかな?
転生者達の姿が肉塊へと変質して行きました。
ゼロの領域……と、槍を経由して表示されましたな。
これがアークの得意とする魔法なのでしょうかな?
「ここは既に俺の領域……不老不死がそんなにお望みならさせてやる。まあ……お前等の望む代物であるかは知らないが、不老不死を望む愚かな者共よ。虚無に墜ちろ……」
ヴォイド・インフィニティ。
と、槍がアークの放ったスキルの名前を表示させました。
いえ、アークがわかりやすい様に表示させたのでしょう。
これは……闇が押し寄せて来ますぞ。
転生者だった肉塊にまとわりつく豚共の魂だったものに光が収縮すると同時に空間が歪んで全てを吸い込み始めました。
まるでブラックホールですな。
「――!」
「アア――!?」
「永劫に苦しみ、虚無の中を漂ってろ」
暴風と共に転生者だった肉塊をブラックホールは吸い込み、周囲に飛び散っていたアークの血や……空間そのものを消し去ってしまいました。
やがて何事もなかったかのように周囲の建物だけは元に戻りました。
アークが更に何かスッと指で空中に浮かぶ文字を書き換えたようですぞ。
「これでアイツ等は万が一にも存在できないし平行世界にも逃がさない。存在できるのは虚無の中でだけだ」
フッとホー君が施してくれた加護が消えましたぞ。
「まったく……さすがに介入しすぎなんじゃないの? そこまでする程の相手でもないでしょ」
「さすがに精霊にあんな事をしてたらね。例え見えなくても感じなくても、やるよ」
「見えないし感じられない癖に介入することで」
「良いじゃないか。僕の勝手だよ」
先ほどの不機嫌な様子は微塵もなく、何事もなかったとばかりにアークはホー君と会話をしつつ俺とフィロリアル様を心配するように小首を傾げましたぞ。
「もう大丈夫だよ。元康くん、君はその子を保護するんだよね?」
「グ、グア……」
「当然ですぞ!」
俺はフィロリアル様を何が何でも見捨てないのですぞ!
とても恐ろしいものを見てしまったフィロリアル様なのですから心のケアは大事なのですぞ。
「そう。実に元康くんらしいね」
「何が起こったのかよく分かって無さそうなのが救いかな? まあ主人が仕留められてしまったからショックは受けているかも知れないけど人質にしてきた訳だし気にしない様に圧はかけておくよ」
「グ、グア……」
「ホー君。フィロリアル様に無茶ぶりはしてはいけませんぞ。例えどんなフィロリアル様であろうと俺が癒やして差し上げるのですぞ。転生者に利用されたその心のケアはとても大事ですからな」
本来ならば万死に値する報いを受けさせる代物なのですが、報いはアークがさせたので気にしないことにしましたぞ。
「俺の元に来て貰って幸せな顔になるまで愛するのですぞ」
「グアアア!?」
フィロリアル様、もふもふですぞ。
「敢えて困難な道を選ぶんだね。ふふ……頑張って」
アークがそんな俺を微笑んで見ておりますぞ。
「記憶消去でもさせて上げた方が幸せだと思うけどねー。おっそろしい事をしでかしておいて白々しい」
「鳥は黙ろうね。さてと……他に心の底から懺悔した連中は……僅かに居るか。事後処理は元康くん、勇者権限で誰かにお願いして貰って良いかい?」
「はいですぞ」
「じゃあ、帰ろうか。たぶん、これで最近尚文くん達に舞い込んでいた転生者騒動も多少は終息すると思うね」
そういう訳で俺達は転生者共の拠点を潰して村へと帰還したのですぞ。
アーク達の仰る通り転生者達の活動がピタリと止んだそうですな。
各地で暗躍をしていましたが、アークに群がり潰されたと言う事だったようですぞ。
お義父さん達も後に俺達が向かった所に奴らが集まったのが分かったとの話でしたな。
この件以降なのですが、アークが一旦所持した影響なのか槍の力が増したように俺は感じる様になりましたぞ。
「お前等弄ったな」
「一応ね。並列分岐とかして奴らが生き残ったり出来ない様に処理しておいただけさ」
「そうやって生き残る可能性もあり得るからねー」
「はぁ……まあ、この程度なら問題無いか。並列分岐か……」
と、お義父さんとアークが出会うと同時に何やら話をしていましたな。
「元康、どうやらお前の所に群がって行ったみたいだがどうだった?」
「アークとホー君が凄かったですぞ!」
俺はお二方が強かったと言葉にしましたぞ。
「そりゃあ神狩りなんて自称してる連中だしな……どうやらあの女の駒でも特殊な仕掛けが施された連中だったそうだし、元康だと手に余るか」
「むしろ元康くんを相手にする場合、フィロリアルを人質にされると手も足も出ないから注意が必要じゃないかな」
「ふむ……その辺りはメスリオン辺りでも組ませて行かせるのが無難か、いや三色フィロリアルを派遣しておけば良いか。みどり辺りがやってくれるだろう」
なんと! お義父さんがとても酷な事を仰いますぞ。
ですがこの元康、なんであろうとお義父さんの命令は絶対ですぞ。
ただ……みどりが何をするつもりなのでしょうかな?
なんて形でお義父さん達との話も簡単にまとまったのですぞ。
「あの神を騙る奴の残党がまだ残っていたとはな……あいつのお気に入りか?」
錬も愚痴に参加しますな。
「どうだろうね。けど相当力を授かっていたみたいだよ」
「そうか……改竄とかの能力持ちだったんだったか」
「持ってただろうね。何か心当たりでも?」
「いや、全く関係ない話なんだが俺の世界のVRMMOにAIにゲームの運営を任せたという事があったんだ」
錬がアークに説明をしていますぞ。
「それで?」
「俺はプレイしていた訳じゃないんだがな。そのAIが学習をしながら運営をしているうちに、とある一人のプレイヤーに入れ込むようになっていってな」
「うん」
「ある日、腕が立つ奴がゲームをやめる。引退をしようとした際に、AIお気に入りの奴が手合わせをお願いして勝負になり結果負けた。その翌日……」
「運営に個人の感情を入れるとろくな事にならなそうだけどどうなんだい?」
「ああ……引退したプレイヤーの所持していたスキルが全て弱体化された。あまりにも酷すぎて事が露見、付いた事件名が接待ネトゲ事件だ」
「ははは、それは滑稽だね。神を僭称する機械とはねー」
ホー君が錬の話を笑っておりますぞ。
「最終的にAIは凍結された。神狩りとはそういった事から世界の者たちを助ける……そういう事だよな?」
「まあ、間違いはないかな?」
「腐った連中は優遇されることが当たり前なのさ。そのゲームを奴らがしていたらパラダイスだったとか言ってただろうね」
「この件の幸いだったのは気に入られていたプレイヤーは事実を知って責任を取った所だったな。優遇されずに怒る奴が転生者なんだろうと俺は思うようになった」
「ちなみに錬くんはその登場人物の誰が友達の友達?」
「引退したプレイヤーが友達で、あいつはそんな事件が起こった事を知らずにいた。あとでそのAIが凍結から逃れて粘着することになってな……追いかけられて大変だった」
「わー大変そうだね」
「ああ……あいつの力に成りたいというのに俺はここで足踏みだ。来るべき時に後悔しないように研鑽を積んでおく」
何やら錬がため息を漏らしてますぞ。
錬なりの赤豚本体の理解方法だったのですかな?