「まず自己紹介をしよう。私の名前はアンダーソン、副司令官を務めている」
うさんくさい男ことアンダーソンは自己紹介から始める。
アンダーソンは私の観察をしているようだが……これは、私も名乗る流れか。
「……私は『狩人』。ヤーナムにて獣を狩り、上位者殺しをしていたものだ」
「ふむ……」
アンダーソンは私をジッと見ながら何かを待っているようだ。
無言の時間が流れる。数秒だけだったが、アンダーソンは息を吐いて続ける。
「わかった……狩人と呼ばせてもらおう」
「構わない」
「まず、君が置かれた状況を説明したい。君と同じような状況でアークに来た者もいるのでね」
同じような状況……!? まさか、私の他の狩人か……!?
いや、まだ判断は速い。落ち着け、次の言葉を待とう。アンダーソンは私の目を見つめ返しながら続けた。
「君はゲートキーパーという存在を知っているか?」
「……いや、知らない」
「そうか。では説明しよう。まず、ここはアークと呼ばれる地下都市だ。人類の最後の楽園、ラプチャーに対抗するための人類の拠点だ」
ラプチャー……というと、なるほど。
「それは、カフェ・スウィーティーを襲っていた謎の存在のことか?」
「そうだ。あれはラプチャーと呼ばれる機械生命体……人類を全滅させるために存在する敵だ。今も私たちを狙い、戦争は続いている」
「? 何故今も人類を絶滅させようとする?」
私は思わず聞き返してしまった。
「どのみち、地上はラプチャーによって制圧されているのだろう? 地下に籠もっているだけの人類はいずれ死滅する。ほっとけばいい。目的は果たしたはずだ。……いや、地上の制圧が目的じゃなく、地下にいる人類が袋小路のまま絶滅するのを待つことすらしないほどに、ラプチャーは人類を殺そうとしてくるわけか?」
「君の想像に任せる。私たちも、ラプチャーについて知っていることは少ない。ただ、私たちは地上奪還を未だに諦めていないし、地上を人類の手に取り戻すための戦いを続けている」
……答えない、と判断すべきか? それとも本当にわからないと?
ダメだな。情報が足りない。ここまでうさんくさい男は初めてだ、底が見えん。
……いや、うさんくさい奴だからだったな、ヤーナムは。うさんくさい奴だらけが普通で、うさんくささが低いこの男がことさらうさんくさい奴に見えるのだろう。
自分で言ってて何なのかわからなくなってきたぞ。
私は腕を組み、アンダーソンを睨む。
「なるほど、ラプチャーとやらについてはわかった。それで? 私をここに連れてきた理由はなんだ?」
「そこも説明させてもらおう。まず、我々の認識では地上における人類の生存者は誰もいない……0名ということになっている」
「……そこまでか、ラプチャーが人類に向ける敵意とやらは」
「そうだと思って欲しい」
少し、考えてみる。ヤーナムにいた頃、獣や上位者をどういう理由で私を襲ってきた?
理由なんてない、私が彼奴腹どもと何故か敵対していたからだ。
うん、参考にならん。わからん。
「となると……私は地上における唯一の生存者、ということになるか」
「いや、公式では0名のままにさせてもらう」
空気が冷える。この場での殺気が張り詰めていく。
私は腕の力を抜き、いつでも懐にあるトニトルスを取り出せるように、意識を払う。
公式では0名のまま。
この言葉の真意はどうなのかはわからんが、私をここで害するつもりなのだろう。
「ほう……貴公、実に良いな。この場所の秩序を守らんと、使命と正義感を滾らせ血に酔っているのか……ヤーナムであれば、良い狩人になれただろう」
「言ってる意味はわからないが、褒め言葉として受け取っておこう」
褒めてない。
「君についてはじきに報告が……うん、来たようだ。シフティ、結果は?」
アンダーソンは耳元に手を当て、唐突に会話を始めた。
知っているぞ。これは交信だな。どこと交信している? シフティ、という上位者の名前は知らん……新しい上位者の名前か?
何かあればすぐに対処を……と思ったが、次の瞬間、私の敵意は消えた。
アンダーソンの目に、驚愕が浮かんだ。
少しだけ覗かせた感情だったが、すぐにアンダーソンは冷静さを取り戻した。
息を少し吐くと、耳元から手を離して私の目を見る。
「君についてだが、どうやら私たちにとっても初めての事態に遭遇したらしい」
「詳しく言え」
「君と、先ほど聞いたゲートキーパーは関係ない」
その瞬間、イングリッド、シュエン、マスタングが同時にアンダーソンを見た。信じられないものを見た、という顔だ。
どういうことだ。どういう意図がある? 私が表情から意味を探る前に、アンダーソンは言った。
「君への処遇を変えなければいけない。その間……そうだな、前線基地へ赴きたまえ」
「ああ、先ほどの場所か」
「そうだ。またA.C.P.Uの面々に送らせる。連絡はしておこう。君は外で待っていてくれ。あと、案内人は増やす」
「説明をしろ。私に対してどうするつもりだ?」
腕を下ろし、懐から獣狩りの短銃を取り出す。だらんと腕を垂らしたまま、水銀弾も込めず、構えず、そのままだ。
次の言葉に納得できなかった場合、行動に移すぞという示威行為。
アンダーソンは私の示威行為に対しても怯えることなく、真っ直ぐに私の目を見た。
「君を公式に、地上生存者として扱うかの話し合いが必要だ。認められた場合、アーク市民として迎えるかもしれない」
……なん、だと。
「私が、この、なんというか、平和な町の市民に?」
「そうだ」
「いきなり空から上位者に捕まってどこかに飛ばされたり、大男に巨大な袋で殴り倒されてどこかに拉致されたりしない、この平和な町で暮らせるのか?」
「君がいたヤーナムというのは、本当に人間が住む町なのか?」
短銃を懐にしまい、私は歓喜のあまり両拳を握りしめた。
なんということだ……命の危機がない、平和な町で、武器を持たずに、獣に怯えずに暮らせる、だと?
聖杯の遺跡に潜って結晶石を集めて敵に備えたり、カツカツになった輸血液を求めてカラスとかをしばいたり、血の意思を集めるためにブタのケツを掘ったり、血石の塊を手に入れるためにあちこちで大きい獣や敵の内臓をえぐったりしなくてもいいのか!!
心のどこかで「それちょっとつまんないな」とか思ったけど、私は平和に過ごしたいのだ!
命の危機がない場所で、まともな食事にありついて、おかしなことを言わない人たちに囲まれ、穏やかに過ごしてもいいじゃないか!
なんか心のどこかで「ちょっとつまんねぇ」とか思うけど、たまには休んだっていいじゃないか!
「わかった。大人しく前哨基地に戻ろう」
「そうか。そこに指揮官がいるはずだ、後の処遇は彼から君に伝える」
「指揮官、というと……ボロボロの体になっていた彼のことか」
「もう知り合ってたのか?」
「ああ、知ってるとも。そして」
私は踵を返し、扉に手を掛けてから言った。
「私は彼を救うために、彼の力になるためにここにいるのだろうからな」
そのまま私は部屋を出て行った。
7/18
やっと倒せたよ……。
とりあえず黄金パリィ×霧の猛禽×朱きエオニア×弾く硬雫の組み合わせで倒しました。
パリィで攻撃を遮らないと延々と攻撃のあとの光柱の追撃で防御の上から削り殺されてしまう。
あとは残した要素を集めて、ステラーブレイドに浮気をしてからブラボに還ります。
それと、交信……じゃなくて更新が遅れたのは、リアルの仕事がめちゃくちゃキツくて書く暇がなかったからです。ごめんなさい。