戦死者の4倍以上…PTSDで命を絶つ米兵たち 対テロ戦争20年の代償 (2ページ目)
帰国時にアフガン軍司令官からプレゼントされたスカーフを身につけたザッカリー・ジュリアノさん=米コロラド州(本人提供)
「国民の戦争に対する無関心さ」に苦悩
米ブラウン大ワトソン研究所が6月にまとめた報告書によると、2001年9月の米中枢同時テロ以降の戦闘任務に参加して死亡したのは7057人。これに対し、自殺した現役・退役軍人は4倍以上の3万177人と推計される。
退役軍人が2万2261人と大半を占めており、特に18~34歳の自殺率が急増。05~17年の平均値は10万人あたり32・3人だったが、18年には45・9人まで上昇する。これは一般市民の自殺率の約2・5倍に相当するという。ただ、同研究所はいずれの数字も実態を大きく下回っているとみている。
一方、退役軍人省が公表した01~19年の退役軍人(同時テロ以前の戦争経験者も含む)の自殺者総数は12万人超。退役軍人でつくる非営利団体「STOP SOLDIER SUICIDE(ストップ・ソルジャー・スーサイド)」は01年以降の自殺者数を11万4千人以上と試算しており、30年までに自殺者が同時テロ後の戦死者の23倍に達すると見込む。
自殺が増える要因としては、即席爆破装置(IED)による外傷性脳損傷や精神的な負担の増加に加え、市民生活への復帰の難しさなどが挙げられる。とりわけ、多くの専門家が問題視するのが「国民の戦争に対する無関心さ」だ。
戦争を経験する国民は全体の1割弱にすぎず、専門家の1人は「退役軍人が帰国後、無関心な市民たちと生活するのは大変なことだろう」と指摘。社会に適応できず、ホームレスになるケースも少なくない。取材に応じた退役軍人やその家族からは「国に奉仕してきた私たちのことを十分に認識していない」といった不満が漏れる。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ現役・退役軍人の実態については不明な点が多い。症状を訴えにくい軍隊特有の組織風土や、軍隊に残るため症状を隠そうとする人が多いことが実態把握の障壁となっている。
ザ・リポート海外特派員
怒号と催涙弾が飛び交うデモ。分断社会では異なる価値観がぶつかり合う。災禍にあえぐ人々の暮らしは―。激動する世界の現場に、本紙特派員が迫る(随時更新)