吸い込まれるような瞳に、私は息を呑んだ。
初めて動いた人形と相対したときのような、僅かな緊張感が胸から湧き上がる。
何を言われるのか、何をされるのか。
アニスのように撃たれるのか、ネオンのように話が通じない事態になるのか。
とりあえず、私は持っていた湖の盾をコートの下にしまい、両手を挙げた。
敵対心はない、と必死に示す。
「すまない、いきなり押しかけてしまって」
「……」
「これには事情がある」
ラピがこちらに近づいてくる。手には銃を持っておらず、敵対する様子がない。
少し安心した。内心、胸を撫で下ろした。
私の前にラピが立った瞬間、
ガシ、と私の右手を掴んだ。
「ハァッ!」
そのまま抱え込まれるようにして体勢を崩され、床に投げられた。
背中から床に落ちて、そのまま転がされて仰向けにされる。掴まれていた右手を背中側に回されて間接を極められた。
「あなたがいきなりコマンドセンターに侵入したことは、認める?」
「あぁ……認める」
ラピからの質問に私は素直に答える。どうやら今のは尋問らしいな。
ちょうど良い。アニスとネオンがこっちを見ているが、この状態なら話を聞いてもらえるだろう。
「それで? あなたは何者?」
「私は……狩人というものだ」
「狩人?」
ラピが聞き返してくる。
落ち着け、私。ここでカフェ・スウィーティーの面々やアニスとネオンにした説明をすれば、腕を折られる可能性があるな。
私は少し呼吸を整える。
「ああ。所以はわからないが……気づけば地上で目を覚ましていた。あてどなく彷徨っていたところをカフェ・スウィーティーに拾ってもらい、地上生存者としてここに運ばれたんだ。あとはコマンドセンターに行けと言われて、ここに……」
「は? 地上で生きてた?」
「アニス、確か公式発表では……」
「うん、地上での生存者は0。一人も人間は生きてないって……」
……地上で人間は一人も、生きていない? どういうことだ、まさかあの街で人の気配がなかったのはそういうことか……!?
そうか……わかったぞ!
「まさか……あのラプチャー? とかいうのが関係している、のか?」
私がラピに問うと、彼女は逡巡してから答えた。
「ええ、そうよ……昔、人間はラプチャーと戦争になって負けた」
やはりそうなのか……! ラピの言葉のどこかに、悲しさと悔しさを感じた。
同時に私の胸に怒りが湧いてくる……! あの医療協会のものどもめ、ビルゲンワースの学徒どもめ!!
「やはりビルゲンワースと医療協会は、ここにまで手を伸ばしていたのか……!」
「はっ?」
「彼奴腹どもめ、宇宙は空にあることに気付き、とうとう上位者を呼び寄せたか!! 殺してやる、殺してやるぞミコラーシュめ!!」
「え、いや、その、誰? ミコラーシュって?」
「安心するといい、私が必ずメンシス学派と医療協会とビルゲンワースを殺そう! まさかヤーナムではないここにまで奴らの手が伸びているとは……私の意識がトんでいる間にこんなことになっているとは!」
「待って、落ち着いて!」
アニスの声に、私の興奮が冷える。
いかん、ここで興奮してはいけない。落ち着け、
「すまない、興奮してしまった」
「う、うん。いきなり興奮して冷静になるって、なんなのこの人……」
「それで、改めて聞きたい事がある」
私はアニスの目を見て質問した。
「ここは、ヤーナムではないのだな? ヤーナムという地名は知っているか?」
「ここはヤーナムじゃないし、ヤーナムなんて聞いたことありませんけど?」
代わりにネオンが答えてくれた。そうか、ここはヤーナムではないのか……。
それなら尚更、ミコラーシュをぶっ殺さないとダメだな!