北米

2025.11.13 16:30

米国のイノベーションにとって有害で逆効果、新たな移民規則で学生の実習訓練が終了または制限

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トランプ政権の新たな移民規則により、留学生向けのオプショナル・プラクティカル・トレーニング(OPT)制度が終了または制限される見通しだ。公開規制アジェンダに掲載されたこの移民規則は、2025年末までか2026年前半に発表される可能性がある。

これは批判者が「留学生の米国への留学や卒業後の就労を思いとどまらせることを目的とした」と指摘する最新の措置となる。この規則は、ドナルド・トランプが2024年にポッドキャストで「すべての留学生に米国に残って働いてほしい」と述べた発言と矛盾するものだ。

OPTは、留学生が課程修了前後に12カ月間、自分の専攻分野で働くことを認める制度だ。STEM OPTは、科学、技術、工学、数学分野の学生がOPTに加えてさらに24カ月間、実務経験を積むことを可能にする。多くの移民反対派にとって、OPTとSTEM OPTの廃止は主に留学生がH-1Bビザを取得することを防ぐためのものだ。

ブッシュ政権は、留学生に年次H-1B抽選での当選確率を高めるため、STEM OPTで追加の24カ月を与えることを支持していた。毎年約25万人の学生がOPTとSTEM OPTで働いている。

OPTに関する今後の移民規則

米国土安全保障省(DHS)の規制アジェンダに掲載された規則は、OPTを変更するものだ。規則の概要によると、「提案される規則は、実務研修をプログラムの目標と目的により適合させると同時に、一般市民により明確な情報を提供するものとなる」とされている。「提案される規則は、不正と国家安全保障上の懸念に対処し、米国労働者が外国人に職を奪われることから保護し、学生・交流訪問者プログラムのプログラム監視能力を強化するために、既存の規制を修正する」としている。移民・税関執行局(ICE)が規則発行の責任を負っているが、ホワイトハウス副首席補佐官のスティーブン・ミラーがその推進力と見なされている。

トランプ政権はすでに、教育者が米国を学術プログラムを追求する学生にとって魅力的な留学先でなくすると警告する措置を提案している。8月、DHSは規則を提案し、現行の「滞在期間(duration of status)」政策を固定入国期間に置き換えることで留学生を制限し、4年以上のプログラム修了を困難にする可能性がある。

9月には、トランプ政権当局者が新たな移民規則を提案し、H-1B選考プロセスを変更して最近の留学生よりもシニアレベルの候補者を優先するようにした。今後の規則では、あらゆるタイプの外国人に対するH-1Bビザの適格性が制限される可能性が高い。

移民オプション1:OPTの廃止または実行不可能化

最近まで米国市民権・移民サービス局(USCIS)の監督政策アナリストを務め、現在はEH3移民コンサルティングの創設者であるエフレン・ヘルナンデスは、OPTが廃止の危機にあると考えている。「彼らがそれを排除する方法を見つけられるなら、彼らはそうするだろう」とヘルナンデスはインタビューで述べた。

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2025.10.31 16:00

地中を可視化し未来を守る、日本発の「GENSAI TECH」ーージオ・サーチとみずほ銀行がともに挑む減災

地中はどうなっているのか──。

防災・減災の観点から見れば、目視できない地下構造は大きなリスクを孕んでいる。その課題に挑み、先進技術で“地下を診る眼”を生み出したのがジオ・サーチだ。

「人の命と暮らしを守る」を社是に掲げる同社が展開する「GENSAI TECH®︎」とは何か。メインバンクとして伴走してきたみずほ銀行の使命感とともに、その真価に迫る。


2025年1月、埼玉県八潮市で道路が突如陥没する事故が発生した。周辺120万人の住民に多大な影響を与えるとともに、道路の下に潜む空洞の危険性についての注目が高まった。

このような見えないところに潜む地下のリスクを、独自の3次元可視化技術で発見し、減災につなげているのがジオ・サーチだ。

 “走るCTスキャン”で地中を診断、16万件超の事故を防止

代表取締役社長の雑賀正嗣(以下、雑賀)は同社が持つ技術についてこう説明する。

「2008年に地中や構造物内部を3Dで迅速かつ正確に“見える化”する『スケルカ®』技術の世界初実用化に成功しました。この技術によって、持続可能なインフラを支えることができると思っています」(雑賀)

雑賀正嗣 ジオ・サーチ 代表取締役社長 
雑賀正嗣 ジオ・サーチ 代表取締役社長 

「スケルカ®」は、道路や橋梁内部の空洞・劣化を非破壊で調査し、陥没などの事故を未然に防止する技術だ。

同技術を活用した専用探査車両「スケルカー®」では、最高時速100kmで走行しながら高精度データを収集可能にした、いわば「走るCTスキャン」だ。マイクロ波レーダーで得た情報を解析し、地下状況を可視化する。従来の10分の1の時間、半分のコストで調査から報告までを実行できるという。

スケルカー。マイクロ波レーダーで得た情報を解析し、地下状況を可視化する。従来の10分の1の時間、半分のコストで調査から報告までを実行できるという。
スケルカー®。マイクロ波レーダーで得た情報を解析し、地下状況を可視化する。従来の10分の1の時間、半分のコストで調査から報告までを実行できるという。

この技術の活用場面のひとつが、災害や陥没事故発生後の緊急空洞調査だ。

「地震や豪雨災害などが発生すると地中も大きなダメージを受け、多くの空洞が発生します。放置すると陥没に至り災害からの復旧・復興の妨げとなることから迅速な対応が必要です。このことは、陥没事故の発生時も同様です。当社は、『スケルカー®』を全国に配置し、12時間以内で出動できる体制を整えています」

同社では、11年3月の東日本大震災や24年1月の能登半島地震などの際には二次災害の防止に向けて、16年博多駅前陥没事故や25年埼玉・八潮市道路陥没事故の際には安全確認のために迅速な対応をしてきた。

雑賀はさらに強調する。

「平時からの対応こそが鍵です。点検診断を日常的に行うことで、大田区では7割、藤沢市では8割の道路陥没事故を減らせました。これにより、災害時の道路ネットワーク確保も強化されます」

ジオ・サーチはこれまでに延べ313,984km(地球約8周分)を調査し、164,891件の道路陥没を未然に防いできた。ただ、災害やインフラ老朽化による課題は道路陥没予防だけではない。上下水道、電気、ガス、通信など、地下のライフラインは、今、耐震化や更新が急がれている。雑賀はそれが進まない理由をこう語る。

「問題は、信頼できる地下インフラの位置情報がないことです。実際に工事で掘ってみなければ分からない現状では、迅速な更新や耐震化は不可能です」

その解決策として同社が展開するサービスが、「地上・地下インフラ3Dマップ」だ。非破壊技術でライフラインを可視化し、三次元デジタルマップ化すれば、正確な地下情報を基に最適な計画・設計・工事が可能になる。

「地上・地下インフラ3Dマップ」の例。画像提供:豊島区
「地上・地下インフラ3Dマップ」の例。画像提供:豊島区

「スケルカ®」技術は常に最先端技術を求めている米空軍からも“世界でも類を見ないゲームチェンジャー”と高く評価され。台湾での事業化は国交省「JAPANコンストラクション国際賞(先駆的事業活動部門)」を受賞した。

 「宇宙と同様に、地中もまた残された大きなフロンティア。日本発の地中可視化技術『GENSAI TECH®』で世界各地の課題解決に貢献していきます」

何よりも「人の命と暮らしを守る」ための減災技術

こうしたアイデンティティの背景にあるのが、ジオ・サーチの「貢献心」だ。

1989年に同社を創業した冨田洋(現代表取締役会長/以下、冨田)は、「貢献心は人間の本能である」という信念を掲げ、社員に「社会の役に立つことをしよう」と説いてきた。

冨田は油田・ガス田設備開発会社の社員として米国駐在中、地中の空洞や埋設物を可視化できるマイクロ波技術と出会い、帰国後ジオ・サーチを創業。公共構造物の調査診断サービスとして事業を開始した。翌90年には世界初の「路面下空洞探査システム」を開発・実用化し、道路陥没の未然防止に貢献。92年には国連の要請を受け、ボランティアで地雷探知技術の開発にも取り組んだ。

貢献心から始めた92年以来の地雷探知技術の開発が、ジオ・サーチの本業にもポジティブな効果をもたらす。地雷探知技術を進化させることで生まれたのが、「スケルカ®」技術だったのだ。

「社員の全員が『貢献心は本能だ』『役に立つことをしよう』という言葉を肝に銘じて社業に励んでいます。災害や事故を未然に防ぎ、“人の命と暮らしを守る”ことこそ、私たちジオ・サーチの使命です」

その精神は国境をも越えて発揮されている。2018年、台湾東部を中心に大規模な地震が発生した際、同社は現地に飛びボランティア調査を実施した。本事案は日本がこれまで台湾から度々受けてきた支援への感謝を“技術”で返す形となったと言えるだろう。二次災害の防止を目的としたこの活動は、ジオ・サーチの「貢献心」を象徴する取り組みだ。

社会貢献への思いに伴走:みずほ銀行の幅広いサポート

その貢献心に寄り添い、支えてきたのがメインバンクのみずほ銀行である。雑賀は振り返る。

「一時期、やむを得ない事情から仕事が激変したことがありました。その一番苦しい時期にも、みずほ銀行さんは変わらずに支えてくださった。また、東日本大震災以降、全国でインフラの点検需要が急速に増え、拠点数や探査車両を増強する大規模な先行投資が必要になった際も助けていただきました」

ジオ・サーチの本社・技術開発センター・東京事務所が所在する大田区西蒲田を担当する、みずほ銀行大森法人部 部長・橋本達男は語る。

「ジオ・サーチ様は被災地での活動実績が豊富です。全国即応体制を築くには先行投資が不可欠。みずほ銀行は、同社の先進性と将来性を理解し、その根底にある『貢献心』に寄り添ってきました」

橋本達男 みずほ銀行大森法人部 部長
橋本達男 みずほ銀行大森法人部 部長

さらに採用・人材育成面でも支援を強化している。同法人部の部長代理・佐々木航平はこう話す。

「ジオ・サーチ様の強みは、AIを活用した画像解析と同社の空洞診断士の高度な知見を融合した独自の解析力です。ジオ・サーチは、数年単位で時間がかかる空洞診断士の育成や教育制度の整備、多数の診断士を機動的に運用する体制づくりなど、人を大切にする人的資本経営によって、他社にはない大きなアドバンテージを築いてこられました。みずほ銀行は、その価値を深く理解し、人材の採用から成長までの支援においても一層強力に伴走していきます」

佐々木航平 みずほ銀行大森法人部 部長代理
佐々木航平 みずほ銀行大森法人部 部長代理

雑賀も感謝を語る。

「事業を拡大していくにあたって、新たな人材を迎え入れながら適確なマネジメントを継続していくのは大変なことです。そのあたりのコンサルティングも受けながら、見事な距離感で伴走していただいています。本当にありがたいですね」

ともに「GENSAI TECH®︎」を世界の各地に広めていく

これから先、ジオ・サーチとみずほ銀行はどのような未来を描いていくのか。雑賀に聞いた。

「世界で最も信頼される地下情報のプロバイダーを目指し、国内はもとより、世界を相手にしていきたいです。ジオ・サーチは2019年に台湾支店を開設し、22年には米国カリフォルニア州に現地法人を設立しています。今後、日本から『GENSAI TECH®︎』を世界に広めていくためには、より大きな投資が必要となります。現地においてさまざまな企業や団体と手を取り合っていくためのマッチングも必須となります。みずほ銀行さんには、資金面でのノウハウの提供に加えて、我々だけではリーチが難しいパートナーのご紹介など、強力にサポートしていただける機会があるのではないかと期待しています」

橋本も力強く応える。

「今後、資金面でのサポートはもちろん、オープンイノベーションの可能性を拡げるためのパートナー企業との出会いも国内外を問わず提供していきたいですね。さらには、人材育成や組織づくりの面も含めて、あらゆるソリューションで未来を支えていきたいと思います」

ジオ・サーチ

みずほ銀行


さいか・まさつぐ◎京都大学大学院工学研究科修了後の1989年、建設会社に入社。土木設計技術者としてロンドン地下鉄延伸プロジェクトなどを担当。その後、建設コンサルタント会社で道路メンテナンスに関する経験を積み、2002年にジオ・サーチに入社。05年に取締役企画開発部長、21年に代表取締役社長に就任。

はしもと・たつお◎みずほ銀行 大森法人部 部長。東京・大阪を中心に、中小企業から大企業まで幅広い法人営業や、証券での債券営業等に従事。営業店支援部署や船場法人第二部長を経て、2023年より現職。大森法人部では、大田区との密接な連携による取引先支援や、DX・SXを通じた取引先の課題解決に取り組む。

ささき・こうへい◎みずほ銀行 大森法人部 部長代理。東京を中心に個人のお客さまに対する承継や資産運用のコンサルティングを担当した後、スタートアップ企業から中堅・中小企業をメインに幅広いお客さまを担当。2025年より現職。現在は大森法人部において貸出・預金・決済業務のみにとどまらず、本部部署や外部企業と連携しながら、お客さま支援に取り組んでいる。

Promoted by みずほ銀行 / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro

北米

2025.08.21 15:00

移民や留学生の受け入れなしでは「米国大学の多くが閉鎖危機」、雇用機会の減少も 報告書

教員職143人を解雇したウェストバージニア大学(Shutterstock.com)

教員職143人を解雇したウェストバージニア大学(Shutterstock.com)

米シンクタンクの米国政策財団(NFAP)の報告書によると、米国の大学の多くが移民や留学生を多く受け入れられなければ閉鎖に追い込まれる可能性があるという。そうした事態になれば、米国の学生にとっては学校の選択肢が減り、大学が立地する町の労働者にとっては、雇用機会が減ることになる。

データは、米国生まれではない学生がいなければ暗雲が垂れ込めることを示している。留学生を含む現在の移民政策は、米国の高等教育の将来に影響を及ぼす。

NFAPの調査によると、「移民や留学生、移民の子どもがいなければ、米国の学部生の数は2037年には2022年から500万人近く減り、現在の約3分の2の規模になる。一方、大学院生数は少なくとも110万人減り、現在の約6割の規模にとどまる」という。

調査をまとめた米ノースフロリダ大学経済学部教授のマデリン・ザボドニーは、米国外生まれの学生が欠かせない理由をこう説明する。

「米国の大学は『人口動態の崖』に直面している。2007年以降の出生率の低下により、米国生まれの大学に通う年齢の若者の数は2025年から減少に転じると予想されている」。ザボドニーはアトランタ連銀とダラス連銀の研究部門で、エコノミストを務めた経歴を持つ。

人口の変化は、米国の大学や大学周辺のコミュニティにとって試練となる。つまり、米国の政策立案者が移民を歓迎する政策を採用するのか、それともトランプ政権が反移民政策を貫くのかで、大学やコミュニティの将来が左右される可能性がある。トランプ政権はコロンビア大学に留学生への「依存度」を下げるよう求めるなど、教育関係者の目には留学生に対して攻撃的と映る措置をとっている。トランプ政権はまた、100万人以上の移民を強制送還するという目標を掲げている。

入学者減で移民と留学生の必要性が明らかに

大学に進学する米国生まれの人の数は、2025〜2029年に15%減少する可能性がある。分析によると、米国の高等教育機関への入学者数は2010〜11年にピークを迎え、その後、減少に転じた。

「学部入学者数の3分の1、大学院入学者数の5分の2近くを失うことは、多くの大学、特にすでに人口の減少が進んでいる地域に立地する大学にとって壊滅的な打撃となるだろう。多くの大学が閉鎖されて米国の学生の教育機会が減少し、多くの州や町で大学関連の雇用が減り、米国内の大卒労働者が減少することになる可能性がある」と報告書にはある。

閉鎖される可能性が高い大学はイェール大学やコロンビア大学といったトップ校ではなく、もっとランクの低いところだ。「地方大学や一般教養課程を主体とした小規模の大学、特に田舎にある大学が最も厳しい状況に直面する」とザボドニーは言う。米国人の学生も留学生も、有名大学への進学を希望するだろう。

「小規模で知名度の低い大学は、学生を集めるのが難しくなる。名の通った規模の大きな大学の入学率が上がれば、特にそうだ」とザボドニーは指摘する。「外国人の大学院生がより多くの研究リソースを持ち、学位取得後の就職に有利な大規模な大学に進学できるのであれば、地方の大学が外国人の大学院生を受け入れるのは特に難しくなるだろう」

次ページ > 厳しさ増す大学経営

翻訳=溝口慈子

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