高市早苗首相は13日、南太平洋地域の島嶼(とうしょ)国フィジーのランブカ首相と官邸で会談した。両首脳は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現や、気候変動、安全保障などの分野での協力強化を盛り込んだ共同声明を発表した。南太平洋地域は近年、中国が経済援助などを通じて影響力を拡大している。日本としては地域の中心的存在であるフィジーと連携を深め、くさびを打ち込みたい考えだ。
首相は会談で「フィジーは価値や原則を共有し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持する上で重要なパートナーだ」と述べた。これに対し、ランブカ氏も「2国間関係を強化し、世界規模の課題に一緒に取り組みたい。FOIPを目指してともに歩みたい」と語った。
共同声明では、覇権主義的な動きを強める中国を念頭に、「力または威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対」と表明した。フィジーを含む島嶼国では気候変動による海面上昇が深刻な問題となっていることから災害対策などの連携を確認。日本が同志国の軍を直接支援する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を通じた安保分野の協力でも一致した。
フィジーが位置する南太平洋地域は海上交通路(シーレーン)の要衝だ。中国は経済支援や治安維持での協力を背景に、台湾と外交関係を持つ国の切り崩しに力を入れており、2019年にはソロモン諸島とキリバスが相次いで台湾と断交。昨年1月にはナウルが台湾との外交関係を解消して中国と国交を樹立した。
フィジーは台湾承認国ではないが、ランブカ氏は中国警察の受け入れを停止するなど一定の距離もとる。
首相が日本外交の柱と位置付けるFOIPの実現にはフィジーをはじめとする南太平洋地域の島嶼国の理解が欠かせない。日本は米国やオーストラリアなどの同盟・同志国と協力しながら、フィジーなども取り込み、地域での存在感を維持しようとしている。(永原慎吾、長橋和之)