Jリーグビジネスの限界 下
1リーグ10クラブから、3リーグ60クラブへ、30年での急速なエクスパンションが、とりわけJ3に経営体制、能力ともに脆弱なクラブができる原因となったことは、ここまで触れた。
それに加えてJリーグが設定した「ライセンス」が、各クラブの経営に大きな影響を与えている。
FC大阪をめぐる問題は、その一例だ。
Jリーグの「ライセンス」
JリーグはJ1、J2、J3の各リーグにクラブが加盟するにあたって、詳細な「ライセンス」を設定している。サッカーが強ければ昇格できるというものではないのだ。
競技基準としては
・アカデミーチーム (U-18 / U-15 / U-12 / U-10) を保有(クラブ直営または関連法人が運営)していること(A等級- ライセンス交付のために無条件に必須とされる基準)
・女子チームを保有していること(C等級基準 - 必須ではないが推奨される基準)
施設基準として
・スタジアムの入場可能人員がリーグの規定(J1は15,000人、J2は10,000人)を上回っていること。特にいす席をJ1で10,000席以上、J2で8,000席以上設置することを義務付ける。いずれも芝生席は入場可能人員数にカウントはしない(A等級)
などが前提となっている。
J3については
・クラブ直営、または関連法人が運営する18歳以下の育成組織を保有する
・ホームスタジアムの収容人員は原則として座席(椅子)で5000人以上とする。ただし、メインスタンドは必ず座席であること。芝生席についてはJリーグが安全性について審査を行い問題がないと判断した場合は座席と同じ扱いとみなすことができる
となっている。
FC大阪のケース
FC大阪は1996年に創設された企業チームを母体とし2015年にJFL入りし、J3入りを目指した。
そのためにJ3の競技基準を満たすとともに、施設基準をクリアすべく2019年、東大阪市をホームタウンとするとともに、東大阪市花園ラグビー場の第2グラウンドの改修に関する協定を結んだ。
第2グラウンドをFC大阪が改修したうえで、東大阪市に寄贈するというプランを設定、東大阪市もこれを認め、FC大阪を「指定管理者」にした。FC大阪は東大阪をホームタウンにした。
これによってFC大阪はJ3昇格要件を満たした。
本来なら21年には改修は完成するはずだったが、コロナ禍もあって計画が遅れた。しかしFC大阪は資金を調達できず現時点でも第2グラウンドは老朽化したまま使用されている。
公共施設をプロスポーツ側の費用で改修し、行政に寄付する代わりに「指定管理者」など運営権を取得するというスキームは、NPBの東北楽天ゴールデンイーグルスが、宮城県と結んだ契約と基本的に同じだ。2005年に楽天がパ・リーグに参入するに際して、県営宮城球場を楽天の費用で改修して県に寄贈し、その代わりに楽天は、球場の運営権を得た。
楽天の場合、巨大IT企業が親会社だったから改修費用の負担は全く問題がなかったが、FC大阪は有力なスポンサー企業がない。球場の改修費用を負担するのはもともと困難だったはずだが、何としてもJ3に昇格したかったのだろう。
大阪にはガンバ大阪、セレッソ大阪と有力なクラブが2つある。FC大阪は3つ目のJリーグクラブで、そもそもマーケット的にも厳しかった。また経営も脆弱だったといえよう。
「税リーグ」
Jリーグのライセンスを満たすために行政の支援に頼るケースもある。
Jのライセンスを満たした施設をクラブが自前で厳しい場合に、公共施設側に改修を依頼。行政がそれを認めて税金を使って改修するというケースだ。
多くのクラブで見られるが、これに対しては地域住民から「税金を使って、特定のスポーツ団体のための施設を作るのはおかしい」「市民が使えない施設を作るのか」などのクレームが来る。
こうした施設を作る際、行政は公共性を重視し、市民向けの施設も整備するし、プロスポーツ側にも「スポーツ振興」に協力するように要請をする。
しかし、JリーグはNPBに比べて批判を浴びやすい。
何といっても主催試合数が19試合と少なすぎることが大きい。NPBは71~2試合だ。1年に19日しか使わない施設のために税金を使うのか、と言うことになりかねない。
またNPBの場合、主催試合では200万人以上の観客が入り、地元の物販業者、飲食業者も大いに潤う。周辺には「賑わい」が生まれる。
こうした経済効果の面でもJリーグはボリュームがない分、かなり見劣りする。
その上、Jリーグには「降格」がある。
せっかく税金を投じてスタジアムを改修しても、翌年に降格して、スタジアムはオーバースペック、宝の持ち腐れになることもあるのだ。
「理想」と「現実」の乖離
行政がスポーツ団体のために税金を投じてスタジアムや環境を整備するのは、欧米ではごく一般的なことだ。スポーツ団体は、注目度が高いし、行政単独では不可能な「賑わい」を創出することができる。
「税金を使いやがって」「税リーグが」という面々は、プロスポーツが社会に及ぼす効果、メリットについてあまりにも無知だ。日本スポーツをすることを「道楽」「遊び」とみなす旧弊な考え方がいまだに残っているのだ。
しかしこの問題は同時にJリーグの杓子定規で柔軟性のないライセンス基準の問題でもある。理想主義だけで現実は動かない。地域には地域なりの事情がある。そして地域の理解がなければプロスポーツは成り立たないのだ。
30年が経過して「理想」と「現実」の乖離が目立つようになっている。Jリーグはそのことを認識すべきだろう。




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