一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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36.サクのVR訓練 その3『邪兎屋 後編』

 さて、チュートリアルでも思ったけど、異変が起きているときの知り合いは中々見ていられない姿になってしまっている。これ以上皆の栄誉が傷つく前に、そろそろ攻略していった方がよさそうだ。

 

『サク様、いかがでしょう? もう粗方気づいているように見受けますが』

「まあ、なんとなくわかってきたよ」

『本当かい? 僕らはまだほとんど整理がついていないんだけれど……』

『やっぱりすごいよねー。悪く言えば神経質って感じ!』

「何でわざわざ悪く言ったの? 嫌味?」

 

 俺からしたらそっちが気づかなすぎなのよ。今のところ一番イメ損してるのパエトーンな気がしてきたわ。

 

 

「で、サックー? そろそろ私たちを引っぱたいた理由を聞かせてくれるー? 場合によっては例え学生相手でも慰謝料を払ってもらうことになるんだけど~?」

「痛くは無かった。けど納得のいく理由を説明してもらうわ」

「さっきからどうしちまったんだよサク? 俺チャンとの仲だってのに、妙に距離を感じるぜ?」

 

 あ、怒った時の邪兎屋ってこんな怖いんだ。三人からにじり寄られると超怖い。ただアンビーはその覆面取ってくれ、笑っちゃうから。

 

 

 

 けれど、俺はすでにハリセンを構えて準備万全だった。よし、やるか。

 

 

 

「三人とも……とにかく()()()!」

 

 スパァーンッ!!

「え゛っ!」

 

 スパァーンッ!!

「ん゛っ!」

 

 スパァーンッ!!

「な゛っ!」

 

 ボボボンッ。

 

 

 ニコ、アンビー、そしてビリーは異変から解放されて、それぞれ元の人物をデフォルメしたような恰好のボンプに姿を変えた。

 

 

 邪兎屋は変人ぞろいだけど、どこかカッコよさがあるなと思っていた。しかし異変がある状態の皆はどうもダサかったのだ。あれかな、各々の思う正義、みたいなのが無くなっていた的な感じだ。

 

『確かにみんなダサかったね!』

『たった一言で三人を撃破してしまうとは……やはりサクは凄いな』

 

 変によいしょされてもむず痒いなこれ。別に凄いことじゃないし。

 

 

 

 これで三人。残るはレジ台でのんきに寝ている錆猫だけ。いや、ほんとどうしてこうなっちゃったんだろうか。

 

「で、Fairy。後はこの猫だけだよな?」

『肯定。こちらはサービス問題となっております』

「んにゃーん?」

 

 俺の声にようやく目を覚ました猫の手には、ちっさい爪と小刀がある。ただ猫又だけ三人と違って、ダサいとかの問題ですらない。猫又なんか悪いことしたん? 多分してるんじゃないかな、邪兎屋だし。

 

 まあ確かにサービス問題だな、と思っていたのだが、俺の後ろから想定外な言葉が聞こえてきた。

 

 

 

『え? 猫又がどうかしたの?』

『どこもおかしな様子は見えないけれど……サクはもう何か気づいているのかい?』

「えっ」

 

 それはひょっとしてギャグで言ってるのか?

 

 

 

 流石に冗談だろう、とFairyを見たら明らかに呆れている様子。どうも本気で気づいていないらしい。やれやれ、仕方が無いのでさっさと終わらせよう。大きく息を吸い、でも相手が猫なので力は弱めに。

 

 

「いや猫又が猫になっちゃってるだろっ!!」

 

 スパァンッ!

 

 ボンッ。

 

 

 案の定正解だったらしく、猫又はボンプの姿に変わった。

 

『あっ! 猫又が猫になっちゃってたの!?』

『ほ、本当だ。行動や仕草が同じだったから気がつかなかったよ……』

 

 ねえ君たち本当に伝説のプロキシ? 猫又泣いちゃうよ?

 

 

 

 少し間を置いてから、ボンプの姿になっていた四人が目を覚ました。先に起き上がった猫又は、自分が猫だった事を少しだけ覚えていたようだ。それはもう、ズーン……と見てわかるくらいに落ち込んでいる。

 

「ねぇサク、なんかあたしの扱いだけひどくない? 一言もしゃべれないなんて思わなかったぞ……」

「確かに、安直すぎる異変だったな……」

『大丈夫だよ猫又。醜態を晒すよりはマシだよ、あはは……』

 

 リンの遠い目を見た猫又は、何かを察したらしくこれ以上言わなかった。……もし周囲に媚々の猫又とか出てこられたりしたら嫌だったし、良かったんじゃないかな、きっと。

 

 

 

『おめでとうございます。ステージ1、クリアです』

 

 Fairyのアナウンスを聞いたら、体の力が一気に抜けた。このボリュームでステージ1とか、この先大丈夫かな。

 

 

「いやー、あんな錆々なボディはもう御免だぜ! にしても今の俺チャン、ちーとばかり丸すぎるな……愛らしさ全振りってやつだな!」

「ボンプの体って意外に動きやすいわ! ちょろっとお宝を拝借しに潜入する時便利そうね!」

「うーん、あたしは元の体のほうが動きやすいぞー……」

 

 本当にこのVR、住民たちの性格がよく再現されているなと感心する。各々がらしい感想を述べている中、アンビーが静かなことに気づく。アンビーを見ると、どこから取り出したのかハンバーガーを両手に持ったまま固まっていた。

 

「サク、何故かハンバーガーが食べられない。どうして」

「ボンプの体じゃそもそも食べられないと思うけど」

「……それは大問題よ。今すぐに戻して」

「あー、文句はそこのFairyに言って――」

 

 俺は別にゲームのクリアを目指しているだけだし、解決した後にボンプの体になる事については本当に知らない。俺が言い終わる前に、アンビーがモチモチのボンプハンドで双剣を構え出した。鋭い目線はFairyに向いている。

 

 

 

「――アンビー、No.0号。目標を撃破する」

「ちょっ」

『危険を察知。即座にステージ2へ移行します! 5 4 3 2 1 0!』

 

 

 

 Fairyが超早口で言い終わるや否や、全員ビデオ屋もろとも白い光に包まれた。これFairyがやられたらゲームオーバーだったんかな、危な。




 かっこいい小悪党である邪兎屋には、それぞれダサくなってもらいました。最初媚々の猫又で進んでいたんですけど、描いてて嫌すぎるキャラになっちゃったのでやめました。

 果たしてこのVR話、現在の陣営を回り切れるのか。頑張らねば。
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