一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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 結局5000文字になっちゃったので、前編と後編に分けました。書いてて楽しくなってしまったものでつい……。
 既に出来ているのに間を空けても仕方ないので、どちらも同じタイミングで投稿します。

 もともとあるキャラクター達が良すぎて、異変という名目で崩壊しすぎないように変えるの難しいですね。


35.サクのVR訓練 その3『邪兎屋 前編』

 ビデオ屋でのチュートリアルステージを終えて、トワ(アキラ)とレム(リン)が仲間になった。イアス(Fairy)が右手を上に掲げて、俺に次の案内を告げた。

 

『それでは、ステージ1を開始します』

『わっ、体が浮いてるよお兄ちゃん! これちょっと楽しいかも!』

『ふぇ、Fairy? この高さまで浮かせる必要はあるのかい?』

「あー、ボンプの体じゃ余計に高く感じられそうだな……」

 

 いよいよ本番か、と唾を飲む。チュートリアル開始と同じように体が浮き始める。俺の目線位にいるアキラとリンも、ワタワタしながら浮いていてかわいい。

 

 何だかんだ、このVR空間に俺は内心ワクワクしていた。さて、次はどこに飛ばされるのだろうか……。

 

 

 

『ちなみに場所は変わりません』

「じゃあ何で浮かせたんだよ」

 

 

 

 せっかく浮いたのにすぐに降ろされた。完全に無意味な時間である。俺のワクワク返してほしい。

 

 

 スタッ、ボテッ、ボテテッ。

 

 俺の足が再度ビデオ屋の床に付いた時、近くでボンプが着地に失敗した音が2回聞こえた。

 

『ちょっとFairy! もっと丁寧に降ろしてよ!』

『リン、大丈夫かい? VRだから傷つかないとはいえ、もうちょっと丁重に扱ってほしいかな……』

 

 Fairyにプンプンと抗議しながら起き上がるリンと、起きるのを手伝ってあげるアキラ。うん、やっぱりこの兄妹は仲良くないとね。

 

 

 

 

 二体のボンプが起き上がったところで、ガチャッと正面口の扉が開いた。

 

「プロキシー、いるー?」

「遊びに来たわ」

「おっ、サクもいるじゃねーか!」

「んなぁーお」

 

 現れたのはお馴染み邪兎屋だった。まあ最初に会うとしたらここだよな、と納得した。……明らかにおかしい点があったけど、一旦置いておく。

 

『うーん。どうやら、僕たちみたいに見た目から違いがあるわけでは無いようだ』

『それにしても、よくできてるよねー。本当にニコ達がそこにいるみたいだもん!』

「え、もしかして二人とも一個も気づいてない……? 嘘だろ……?」

 

 俺より付き合いが長いはずのアキラとリンは、まるで気づいていない様子。ちょっとパエトーンさんしっかりして?

 

『やはりサク様は、異変を察知する能力が突出している事がよくわかりますね』

「これで褒められるのあんま嬉しくないなぁ……」

 

 

 

 だってニコの瞳がありえないくらい輝いてるし、ビリーがなんか鉄臭い上に動くたびギシギシ鳴っていてなんか嫌だ。アンビーはいつものパンクな服じゃなくて戦闘服っぽいやつになってるけど、これはまだわからないな。

 

 んで、店に入るや否やレジ台の上でくつろぎだした一匹の錆色の猫。これもしかして猫又か? あの人確かに猫っぽいけど、完全に猫にされちゃったのか。とりあえず未だに気づいていないアキラとリンは、後で猫又に謝ろうね。

 

 

 さて誰から始めたものかと悩み始めたところで、ニコがいきなりチャンスを振ってきた。

 

 

 

「さあ、今日も一日一善を心がけましょう!」

「一日五悪の間違いだろ!」

 

 スパァーンッ!!

 

 

 

 思い切りニコの脳天にハリセンが直撃した。まずは簡単なのを1つ潰せたな、と思っていたのだが、何故かニコが異変から解放される予兆がない。

 

「ちょっとサックー! いきなりなにすんのよ!?」

『サク様、不正解です』

「え、嘘だろ違うの!?」

 

 俺の知ってるニコは異変でなきゃあんなこと言わないと思うんだけど。確信があったのにどうやら違うらしい。

 

『サク様、確かに彼女は一日五悪、いえその数倍程の小狡い事をしています。しかし、意地汚さに隠れがちですが、密かに善行も行っています。つまり、彼女の発言に矛盾はないのです』

「なんだよそのひっかけ!?」

 

 某感謝祭の超いじわるクイズかよ、ステージ1からひねりすぎだろ。あと一善と五悪じゃ差し引きマイナスだからな。

 

「なによ、そんなに人を悪者にしたいわけ? こっちは毎日募金してるんだから悪人扱いしないでちょうだい!」

『うーん、僕もニコの言動には違和感を感じるな』

『あたしも同感! いつものニコらしくないのはわかるんだけど……なんだろう?』

「まあ、ここまで堂々と善行してますってアピールはしてないよな……」

 

 頭を抱えて悩む二体だけど、俺はなんとなく違いが分かったように思える。むすーっと睨んでくるニコを一旦置いておく。

 

 

 

 次はアンビーを見てみよう。こっちは服装がいつもと違う。俺は初めて見るんだけど、これも異変だったりするのかな。

 

「なんかアンビーの服がいつもと違くない? それにいつものナタじゃなくて剣が二本あるし……」

『いや、あれもれっきとした彼女の戦闘スタイルだよ』

「あ、じゃあ異変じゃないのか」

 

 まだ叩かなくて正解だったみたいだ。見た目でわからないとなったら、アンビーは表情があまり顔に出ない事もあり難易度が更に上がる。

 

 

「サク。この前見た動画からいい案を思いついたわ。ニコの金欠も解決できて、私もハンバーガー食べ放題になる、素晴らしい提案よ」

「そ、そんな方法があるのか?」

「ええ。登場人物の彼女、とても気に入ったわ。だから早速決行するつもり」

 

 何故だろう、あんまりいい予感がしない。アンビーは謎の手荷物から覆面と突撃銃を取り出した。え、何怖い。

 

 

 アンビーは狼の耳が付いた青い覆面をかぶった。すっぽりと頭を覆う覆面には穴が三か所開いており、両目と口だけが見えている。

 

 そして一言。

 

 

 

「ん、銀行を襲う」

「やめろぉーっ!!」

 

 

 

 スパァーンッ!!

 

 

 なんかもうツッコミというよりそれはやっちゃダメだろという一心で叩いてしまった。しかしアンビーもまた異変は解除されていない様子。

 

「一体どんな動画見たらそうなるんだよ!」

「透き通る世界観の学園モノよ」

「んなわけあるかよ……」

『……サク、実は僕も少しだけその動画を見たことがある。確かに一応学園モノではあったよ』

「えぇ……」

 

 そんな物騒な学園モノがあってたまるか。そのキャッチコピーからどうなったら覆面銀行強盗が爆誕するんだ。アンビーの行動はとにかく変ではあるものの、まだ何とも言えないのでこちらも放置する。

 

 

 

「んで、ビリーはなんか鉄臭いんだけど」

「そうかぁ? まあ近々限定グッズが出るから、ちょいとオイル代をケチってる最中ではあるぜ」

 

 そしてビリーはいつものスマートさが皆無で、オイル不足のせいで鉄錆やら関節の軋み音がとても鬱陶しい。これは大幅なイメ損になっちゃうから、早く治してあげたいところだ。

 

「いやいや、メンテナンスは削らないほうがいいと思うんだけど……」

「何言ってんだ! スターライトナイトのグッズにつぎこむのが最優先だろ! 俺は推しのために生きてるんだぜぇ?」

『全身錆だらけだよビリー……』

『なんか不潔ー……』

 

 何故かこの独特の不快感にどこか既視感を覚える。あれだ、風呂に入らないオタクみたいな迷惑さを感じる。自分は気にしないからと言って、周囲の人や何なら推しにも迷惑をかけていることに気がつけないのは、本当にいただけない。マナーはほんとに大事。




 中々にアレな集団になってしまいました。この世界でのパエトーンは信じられないくらい鈍くしてしまい申し訳ない。

 シロコとアンビーって相性良さそう。組み合わせたら世の銀行が狩り尽くされちゃうからダメだけど。
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