一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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 実は当二次創作を書き始めた辺りから、ネタとして温めていたものをお出ししてみます。
ちなみにエージェントたちは今回出てきません。


※もしかするとこの話はキャラ崩壊注意、のタグが必要になる話になるかもしれません。


33.サクのVR訓練 その1

「あれ、どこだここ……」

 

 目が覚めると、目の前に広がるのは俺の自室では無かった。かけ布団をどかして上体を起こす。まだ頭がうまく回らない中、周囲を見渡してみる。まず感じたのは、ここが自分の部屋どころか室内ですらないという事。それに気づいた辺りから急速に思考が動き始め、俺は思わず叫んでしまった。

 

 

 

 

 

 

「な、なんで俺はルミナスクエアの交差点、しかもそのど真ん中で寝てるんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 訳が分からないまま、とりあえず車道の真ん中に立っているのはまずいと思い歩道まで移動した。一息ついたところで、俺は大きな違和感に気がつく。

 

「はぁ、はぁ……。あんな堂々と寝てたのに轢かれなかったの奇跡すぎるだろ……ってあれ待てよ、車が全然通ってない? それに人も見かけない。んで何で空こんなに黄色っぽいの? 建物の破片とか浮かんでるし、どうなってるんだ?」

 

 寝起きの頭では気づけなかった違和感が次々と見つかっていく。そもそもなんで俺はこんなところで堂々と寝ていたんだろうか。その前は何をしていたんだっけ。

 

「えっと……そうだ。ここで寝たんじゃなくて、アキラとリンにVRの試遊を勧められたんだった。それで付けたら途端に眠くなって……」

 

 つまり今俺がいるルミナスクエアはVR空間なのだ。納得がいったところで、俺の目の前にどこからともなく見慣れたシルエットが現れた。

 

『おはようございます、サク様』

「あれ、イアス?」

 

 現れたのは『Random Play』ではおなじみのボンプ、イアスだった。けれどなんだろう、雰囲気がいつもと違う気がする。

 

『おそらく没入型VRの初体験に疲労が溜まった結果、眠ってしまったのでしょう。貴方が目覚めるまで5分かかりました』

「何で朝礼の時の校長みたいな言い方なんだよ」

『成程、でしたらスーパーAIのありがたいお話を小1時間ほど――』

「いらんいらん。本当に校長先生しなくていいから」

 

 流石に校長先生でもそんなに長話してないでしょ。体感1時間って言われたらそうかもしんないけどね。どうでもいいけど、そんなに話するんなら5分程度に苦言を呈したのなんだったんだよ、って未だに思ってる。

 

『レスポンス能力は良好、コンディションは問題ないようですね』

「今ので判断されても困るんだけど……。というか君もう明らかにイアスじゃないよね?」

 

 しゃべり方がワタンナじゃないし、イアスは変なジョークを言うタイプじゃない。そういえばこの機械音声、どこかで聞いたような。

 

 

 

『はい。見た目はイアス、頭脳は最強AI。その名は、名探偵Fairyです』

「その名乗り方どこかから怒られそうだけど大丈夫? 名探偵って付けたらもう確信犯じゃん」

 

 

 

 この妙にジョークを挟んでくる機械音声を聴いて思い出した。『Random Play』にいつの間にか居座っていたAIがそんな名前だったかも。リンが「私から助手の座を奪おうとする電気泥棒じゃなければ歓迎なんだけどな……」って前に嘆いていたやつだ。

 

「ふぇありー、もしかして君がこのVRの案内役ってこと?」

『肯定。ですが、Fairyの発音がなっていないので言い直しを要求します』

「めんどくさ……」

『ついでに本編での出番が大幅に削減されているためFairyは多大な鬱屈感を抱えています。これは最重要事項であり、死活問題です』

「いや知らんわ。本編って何」

 

 なんかこのAI色々拗れてない? 多分だけどそれは俺に言われてもどうにもならないと思うんだ。

 

 

 

 AIなのにネガティブ思考のループにハマろうとしていたので、話を戻した。

 

「で、俺は何をしたらいいんだ? 思えば内容を何も聞かされてないのに始めたから、ゴールがわからん」

『それでは、ゲームの説明を開始します。まずは、これからあなたの知り合いが数多く登場します』

「え、もしかしていつもホロウで戦ってるような人たちと戦うの? 絶対無理なんだけど」

 

 俺ホロウ内はおろか新エリー都内でも最弱の自信があるんだけど。……もしかしてアキラとリンに何か恨みを買ってしまったのだろうか。

 

『否定、戦闘は不要です。その代わり、全員実際の人物と異なる性格や言動をすることがあります。所謂『ツッコミどころ』というものです』

「『ツッコミどころ』?」

『はい、サク様の大好物ですね』

「違うわ」

 

 別に好きでツッコミを入れているわけじゃないやい。

 

『それらを全て指摘することができればゲームクリアとなり、脱出成功となります』

「つまり、いつもと違うところを見つけたら指摘すればいいってことか?」

『肯定。ツッコみどころを発見した際には、こちらを使用してください』

「……ハリセン? しかもなんかでかくない?」

 

 Fairy(イアス)から手渡されたのは、俺の上半身ぐらいのサイズのハリセンだ。持ってみると意外と軽くて、鍛えていない俺でも気持ちよく振れそうだ。

 

『耐久性もそれなりにあるため、パリィ等も可能です』

「待って、戦闘無いって言ってなかったっけ? 俺そんな危険なことやらされるの?」

『敵が赤く光ったら回避、黄色く光ったらパリィです』

「だから無理だって。ちょいちょい話聞かないなこのAI」

 

 エージェントと呼ばれる人なら見極められるのかもしれないけど、俺には到底無理なのでそんな極限的な奴を求めないでほしい。

 

 

 

「ちなみに、もし脱出に失敗したらどうなるんだ?」

『舌を噛み切っていただきます』

「VRで自害させるなよ!?」

 

 スパァーンッ!!

 

 思わずハリセンでイアスの頭をはたいてしまった。気持ちいい音が街中に響き渡ったけれど、思った以上にハリセンの威力は強くないようだ。イアスにダメージは無さそうで、2回ほど後ろに転がった後、何事もなかったように立ち上がった。

 

「今のはジョークです、罰は特にありません。今の指摘はGoodです。その調子で、どんどんツッコんでいってください。貴方ならきっとクリアできるでしょう」

「心臓に悪いボケはやめてくれ……」

 

 

 こうして、俺のVR訓練が始まった。先行き不安しかないけど、でかハリセンでツッコむの……ちょっと悪くないかもしれない。




 サクとFairyによる漫才、書いてる側は結構楽しいです。

イアスとFairyの合体技とか本編でやったりしないかな……?
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