という事で会わせちゃいました。
本編のストーリーがとても良かったです。私にあんな感動話はそうそう作れる気がしない……。
今日も引き続き衛非地区での店番だ。雲嶽山の皆さんも挨拶をしに来てくれるし、本当に良いところだと思う。寝床とパエトーンの謎移動さえあったらこっちに移住しちゃっても良いんじゃないかと思える程だ。
しかし店を開いてから数十分、移住やっぱ止めたとまで思えてしまうほどの大きな問題がひとつだけあった。それは……。
「日差しあっつ……気温たっか……」
そう、今年の夏が異常なまでに暑い。尚且つ冷房の環境が新エリー都ほどは備わっていないことである。新エリー都の都会感から離れるのは良いのだけれど、こうも暑いと楽しむ余裕も無くなってしまう。保冷剤持ってきておいて良かったよほんと。
「いやー、今日も暑いよなハ……ツ?」
隣でも茹っているであろうハツの方を見た俺は、即座に異変が起きている事に気がついた。明らかにシルエットがボンプではなくなっている。そう、この形はまるで……。
は、ハツがたぬきになってるーっ!?
俺の隣にはいつの間にか軍服を着た狸が鎮座していた。一体いつ入れ替わったのだろうか。いや、もしかして俺が暑さでおかしくなったのだろうか。いくら目をこすって水を飲んでもハツは狸のままなんだけどどうしよう。
狸になったハツが元に戻らなくて困惑していた俺の元に、2人の影が近づいてきた。
「えへへー、ドッキリ成功ー! アリス並みにいい反応してくれるじゃーん!」
「おい柚葉、初対面っつーか会う前からいたずら仕掛けんのは流石にどうかと思うぞ……」
「ンナー」
そんな会話をしながら近づいてきたのは、赤い傘をさしているちょっと妖美な雰囲気を纏った女子高生と、赤と黒の髪に厳つい体格をしたシリオンだった。そしてシリオンの腕の中には妙にくつろいでいるハツがいた。
「あ、あれ。ハツが二匹……?」
「ぷっ! こ、これは思った以上に面白い人だね……」
「そっちの狸は釜之助のかまちーだ、こいつらがハツとすり替えただけだぞ」
「あ、なんだ……」
「ちょっと真斗! バラすの早いよ! もうちょっと楽しめそうだったのになー」
良かった。ハツが無事だったってのもあるけど、俺が暑さでやられていたわけじゃなかったようだ。でもそれじゃすり替えられていた事に全く気付かなかった俺が馬鹿みたいじゃん。納得いかない。
俺が不満そうに見えたのか、シリオンのほうが頭を下げてきた。さっきから柚葉と呼ばれている女子高生は全く反省の色なさそう。
「うちの柚葉がすまねぇ。サクで合ってるんだよな? 俺は
「あたしは
「ああ、やっぱり店長の知り合いなのね……」
まあ案の定って感じだ。流石パエトーン、人脈を作るのが早すぎて舌を巻くわ。どうしてこうもパエトーンの周りには美男美女が揃うのか。
「ところで知ってる? 真面目な子っていじると面白い反応するんだよねー」
「そうなのか」
「うん」
……。
「え、何で俺にそんな話を?」
「さー、なんでだろうねー?」
ちょっと何その含み笑い。なんか俺標的にされてそうで嫌なんだけど。やれやれって顔で柚葉を見る真斗君、最初はちょっと怖かったけどもしかしてめっちゃまともな人なのでは。仲良くしたい。
ハツを返してもらったところで、更に近づいてくる影が1人。ウサギのような耳をしたオッドアイのシリオンが柚葉に詰め寄った。
「もう柚葉! また人にいたずらを仕掛けようとしていたのですか?」
「えーそんなことないよー?」
「いやそんなことあったんだけど」
「ほら! 彼もそう言っているのだわ!」
どうやら柚葉の性格をよく知っている娘のようだ。彼女もまたパエトーンと知り合った仲なのだろうか。
「彼女はアリス・タイムフィールドと言って、柚葉の友達でお嬢様なんだ」
「あ、なんとなく感じたけどやっぱりお嬢様なのか」
俺が状況をわかっていないのを察して、真斗君がさりげなく彼女の事を教えてくれた。アリスからはなんか所作とかが上品な感じがする。同じお嬢様であるルーシー辺りと接点があったりするのだろうか。
頬を膨らませるアリスを窘めていた柚葉だったが、話が途切れたところでいきなり俺に水を向けてきた。
「ところでサク、まだ気づいてないの?」
「へ? 何が――」
柚葉が指さしていたのはビデオの陳列棚。見てみるとなんと、配置がガラリと変わっていたのだ。
「はっ! いつの間にかビデオの陳列がすっごい左右対称にされてる!? まさかこれも柚葉のいたずら――」
「あ、それは私なのだわ」
あるぇー?
第一印象からてっきりいたずら好きの柚葉を止める役だと思っていたのに、俺の期待をサクッと斬り捨てられてしまった。だから狸の件といい、いつの間にそんな事されてんのよ。やりたい放題やられすぎだろ俺。
「サクが真斗と話している間、どうしても気になっていたのだわ。あまりにもアシンメトリーすぎたもので、ついやっちゃったのだわ!」
「いや、ついでやる量とスピードじゃないと思うんだけど」
つい、で俺の死角を突くの止めてほしい。これじゃ盗まれても気づかないじゃん。気をつけなきゃ。
アリスの行動の何が一番問題かって、さっきの柚葉のはいたずらだけどアリスのこれは善意だという点。どうですかと言わんばかりの満足げな顔をされると、真っ向から断るのがちょっと憚られる。
「でもこれ、1個買われたらシンメトリー崩れるよね」
「…………でしたら、同じビデオを2つずつ買ってもらいましょう」
「そんな商売無いだろ!?」
某グッズを必ず3つ買っていくオタク機械人は1人知ってるけど、わざわざ同じものを2つ以上買う人は相当な少数派だと思う。このお嬢様も大概変人なのだった。頑張れ真斗君、君が最終防衛ラインだ。
ビデオ屋の陳列はいろいろと戦略的な要素があり、ただ綺麗に並べるだけでは売り上げを伸ばせない(アキラ談)。そういった旨の説明をしたところ、アリスは素直に元に戻してくれた。
戻す時、両腕に同じ時計をつけていることに気づいたけど触れないでおいた。シンメトリーへのこだわりが強すぎてちょっと怖かった。
棚を戻し終えた後、柚葉が棚を見ながら俺に質問してきた。
「ビデオ屋ってことはさー、ホラー映画もあったりするわけ?」
「ああ、あるぞ。ちょっと前の流行りだけど、家の間取りをじっくり観察して違和感を見つけるホラーが人気らしい」
「それなら私も知っていますわ! 白い紙のお面をつけた殿方が、恐怖のあまり知り合いの建築技師さんに電話で窓が無いって叫んでいるシーンを見たことがあるのだわ!」
「アリス、それ多分違うやつよ……」
前にリンが悪い顔しながら本物の方を見せてきたけど、映画だとお面もつけてない上に、そんな察しが悪いシーンは無かった気がする。ちなみにアキラは断固として観るのを拒否していた。
「……ねーサク。アキラってホラー映画も良く見るの?」
「いや、苦手だって言ってた。リンが呆れるくらい本気で駄目らしいぞ」
「へー……そうなんだー……」
あ、柚葉がいいこと聞いちゃったって顔してる。アキラごめん、君の弱点をバラしちゃいけない相手にバラしてしまったかもしれない。
後日、『Random Play』にてアキラにホラーを見せたい傘とパエトーン様をお守りしたい傘のぶつかり合いが起こったそうな。
あの露店じゃ絶対暑いでしょ……。
柚葉の口調がムズい。メスガキって訳じゃないけど、お調子者でもない。思った以上に地に足ついてるキャラだと感じます。
アリスかわいいので次のガチャで引きます。柳も引きたいからこれ課金無しじゃ厳しいな……。
真斗君、常識人枠の候補ですね。