一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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 今回はちょっとだけ短め。雲嶽山はこれまでに出ているエージェント達に比べたら全然常識人よりな印象です。

 割と日常で飯の話が多いような気がします。


31.人は強し、飯は旨し(圧)

 なんかこないだ、ファンタジィリゾートとやらでビーチフェスがあったらしい。アキラとリンが知り合いを呼んで人が集まったり、アストラさんがスペシャルゲストだったりでそれはもう大盛り上がりだったみたいだ。だからこないだアキラとリンが水着で店に来てたんだね。…………いやそれはおかしいんだよ。

 

 俺はそもそも祭りがちょっと苦手なので、誘われたとしても行かなかった気がする。特に気にすることなくバイトへ向かったら、まだ水着を着ていた二人に車へ乗せられた。いやこら拉致だよ。

 

 

「――で、今日は何で俺が衛非地区で店番をすることになったんだ?」

「それなんだけど、今日は僕たちがCDショップに長居する用があってね。だから今日はサクと場所を入れ替えようかと思った次第だよ……」

「アキラどうした? なんか目のクマとか凄いんだけど……」

「あはは、まあ気にしなくていいよー」

 

 思い切りバカンスしてきたはずのアキラがとてもゲッソリしている。リンも何だか苦笑い。バカンスが終わって平日に戻るのがそんなに億劫なのか。

 

 そういえば昨日、怪啖屋っていうまた新たな仲間が増えたと言っていた。今朝会ってからずっと、またディスクの厳選が……って呟いていたけれど、その新しい仲間と関係しているのだろうか。知らんけど。

 

 

 という事で、初めての衛非地区で店番が始まった。パイプ椅子に座っている横では、『Random Play』でも見たデザインのボンプがポヨンポヨンしていた。

 

「確か君が20号……ハツだったっけ、よろしくなー」

「ンナ!」

「……声と見た目が似てるから間違えそうだな」

 

 そういえば『Random Play』のほうにいる18号と6号、トワとレムっていう呼び名があるのを最近知った。次会った時はそっちで呼んであげようかな。

 

 

 そして衛非地区で店番を開始して数十分後――。

 

 

 

 

 

 俺は視界の七割以上を占めている山盛りチャーハンを食べていた。なんで?

 

 

 

 

 

「いやあ驚いたよ。お弟子君の友人がいると聞いて来てみれば、君のその体! 食べ盛りの学生なのに細すぎるじゃないか! お弟子君には大変お世話になっているからな、遠慮せずどんどん食べてくれ!」

「あの、美味しいしとてもありがたいんですけど……流石にこの量はキツいです……」

 

 

 はっはっは、と笑いながら更に中華鍋を持ってチャーハンを追加してくるのはパンダのシリオンである潘引壺(パンインフー)さん。店番をしていたら、いきなり目の前にでかい中華鍋を持ったパンダが見下ろしてきたという、まあ簡単に言えばベンさんの再来って感じで超ビビった。

 

 話すと思いのほか気さくだった潘さんは、おかわりとか頼んでいないのに後ろのビデオ棚が隠れて見えなくなるぐらいにチャーハンを積み上げていく。俺さっきからもういらんって言ってるはずなのにおかしいな……。

 

 

 まさか駆けつけ三杯をチャーハンでやられるとは思わなかったよ。一応食べられるだけは食べようと思うけど、全部は無理。今日は人生で一番チャーハンを食べた日になりそう、今の俺の方がよっぽどでたらめチャーハンだよこれ。

 

 

「あなたもお弟子さんに似て謙遜しすぎです! 私だったら遠慮なくペロッと食べちゃいますけど……」

「違くてぇ……謙遜とかじゃなくてぇ……」

 

 先程からずっといいなーと言いたげな目で見てくるのは、虎のシリオンの橘福福(チーフーフー)さん。よだれ垂らしてるけど、食いしん坊だったりするのだろうか。

 

「福姐はさっき食べたばかりじゃないか! これは全部サク君の分だぞ!」

「わかってますよ! けど、こうして見ているとどうしても……じゅるり」

 

 リン曰く、フーフーさんはかわいいという扱いが嫌で、大姉弟子として皆からはかっこいい人だと思われたいらしい。虎のシリオンとしてのプライドがあるのだろうか。

 

 けれども、目を輝かせながらチャーハンを欲しそうにしているその姿は、残念ながらかっこよさとは程遠い。寧ろ餌待ちしてる猫の方が近い。

 

「……あの、良かったら食べるの手伝ってくれません? 俺一人じゃ絶対食べきれないんで……」

「えっ! いいんですか!? 流石お弟子さんのお弟子さん、懐が深いですね……!」

 

 なんかお弟子さんのお弟子さんになっちゃった。パエトーンの門下生とか、ひたすら厄介ごとに巻き込まれる未来しか見えないから是非お断りしたい。

 

 ふと、ここで潘さんの顔色が気になった。せっかく俺のために作ってくれたのに、勝手に人に分けた事で気分を悪くしていないだろうか。潘さんが顔に手を当てている。これはまずいか……?

 

 

 

 

「自分に構わずお腹を空かした人に分け与えるとは……き、君はなんて心優しい少年なんだ……!」

 

 全然気にしてなかった。寧ろ俺の評価が爆上がりしちゃったらしい。

 

 

 

 

 二人ともちょっと人の事信用しすぎじゃない? いくら弟子の知り合いだからって、俺の言動を前向きに捕らえすぎでしょ。これも全部パエトーンがこの町の救世主になったのが悪い。

 

「――とにかく、サク君もいつでも適当観へ遊びに来てくれていいからな!」

「次は飲茶仙の点心がおすすめですよ!」

「は、はい。ありがとうございます」

「おいおい、そりゃ福姐が食べたいだけじゃないのか?」

「違いますよ! ……まあついでに自分のも買っちゃおうかなーとは思ってましたけど」

「大当たりじゃないですか……」

 

 ちょっと常識とはずれているかもだけど、温かい町だなと思った。たまには来るのも悪くないかもしれない。……あ、チャーハンはしばらくいいです、はい。

 

 

 

 

「……何だお前たち、満漢全席でも始めたのか?」

 

 この後帰ってきた儀玄さんがチャーハンに埋もれたビデオ屋を見て、至極まともにツッコミを入れたのが今日一番の衝撃だったかもしれない。あれ、この人もしかして意外と常識ある?




 なんか佐竹飯店を思い出す話になりました。サクは小食&運動しないタイプなので、潘さんはもう飯を食わせたくて仕方がありません。

 2.1のストーリー面白かった……早くこっちにも登場させたいけど、またエミュムズそうだな怪啖屋のキャラたち……。
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