一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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 今回は時々訪れるメタいネタがちょっと多めです。

 柚葉とアリスのお二人、またキャラが濃そうで大変よろしいですね。私は雅と柳引くので忙しいから引けそうにないですが……。


30.パエトーンの力は底知れない

 今日の店番は珍しく俺一人。というのも、この後久しぶりに店長が衛非地区から帰ってくるから店番を頼んでいないのである。18号や6号は二人の帰宅に合わせて充電をバッチリにしているから、朝からずっとシャキシャキと動いている。かわいい。

 

 そろそろ昼時か、という時間に二人は裏口から帰ってきた。

 

「たっだいまー!」

「サク、そちらで問題は起こらなかったかい?」

「おっ、おかえりー。特に問題は――」

 

 無かったよ、と返事をしつつ二人の方に首を向ける。しかし俺は最後まで言い切ることができなかった。

 

 

 

「ってなんだその恰好!?」

「えへん! 水着デビューだよ!」

「この歳で初めて着てみたけど、変じゃないかな?」

 

 

 

 リンとアキラが、何故か水着姿で現れた。確かに最近暑かったもんねー、じゃなくて。

 

 水着なだけに二人ともそれなりに肌を露出している。リンはモデルのようなスタイルが魅力的だし、アキラも体つきが意外とガッシリしていて色気がある。君らほんとにジャンクフードばかり食ってるインドア人間か?

 

「い、いや。水着()変じゃないけど……」

「どうしたのサク? 変に距離を置いちゃって……あっ、もしかして私に見惚れちゃってるのかなー?」

「いや、僕はそういう反応だとは思えないな……?」

 

 アキラ正解。俺の思考は二人の水着姿が良いとかそういう考えでは全然無かった。……窓の外でビビアンが悶絶してるのは予想通りなので放置とする。

 

 

「……まさかとは思うんだけど、水着で六分街を歩いてきたのか?」

「え、うん」

「えぇ……」

 

 

 俺の疑問にリンはあまりにも堂々と肯定してきた。あれ、これ俺がおかしいのかな。アキラも何がおかしいんだ、と言わんばかりに首をかしげている。え、なんかすいません。

 

 

 

 

「……ぷっ、やっぱり似合ってるよサク! あははっ!」

「い、良いんじゃないかな……」

「おいこら、笑いすぎでしょ」

 

 ちょっと気まずくなった空気を変えようとしたのか、リンにシマエナガの付いた着ぐるみをえいっとかぶせられた。俺が首を動かすたびにリンの大笑いとアキラのこらえ笑いが店内に響く。

 

 鏡を見ると俺の些細な動きでシマエナガがぷるっぷる揺れる。それはもう、シマエナガって軟体動物だったっけってくらいぷるっぷるしてる。前にインターノットのショート動画でこういうプリンが流行っていたのを思い出すな。

 

 

 

 リンが満足した所で、適当観についての話が始まった。

 

「それで、そちらの問題は解決したのか?」

「ああ。全てとはいかなかったけど、とりあえずひと段落着いたよ」

「それでも、まだまだ終わりじゃ無さそうな感じがするよねー」

 

 そう話す二人の顔に疲れが見える辺り、きっと俺の知らない間も奔走していたのだろう。

 

「端的に言うと、摂取すると幻覚が見える危ない薬を飲ませている人がいたの。だから師匠達と一緒に真相を突き止めて、懲らしめたって感じ!」

「ついでに適当観の経営を立て直すことに成功したよ。そしたら街自体の活気も戻ってくれたんだ」

 

 なんと行ってから数週間で二人が澄輝坪の英雄になっていた。まるで主人公みたい。パエトーンは伊達じゃないってことかな。

 

「じゃあ、あんまり楽しむ余裕は無かったんじゃないか?」

「ううん! あの街はとっても良いところだし、とっても楽しいところだよ!」

「問題に関わっていた人たちは厄介だったけど、基本みんな良い人ばかりだったからね」

「そうなのか……ちょっと行ってみたくなったな」

 

 良い人ばかり、それはつまりそちらにも常識人がいると期待してもいいのだろうか。常識人はなんぼいても良いですからね。

 

「なんだけど……いっこだけ、どーしても不満があるの!」

「不満?」

「ああ。本音を言うと、僕もそれが理由で一度戻ってきたと言っても過言じゃない」

「そ、そんなに? 一体何が……」

 

 そこまでしてこの兄妹が譲れないもの。それは一体……!?

 

 

 

 

 

「ラーメン屋がっ! 無いのっ! すごくありそうな雰囲気なのにっ!」

 

 どててっ。

 

 

 

 

 

 街の危機について話している時よりも深刻な顔するから、もっと大事かと思ったわ。全然大したことなくて18号と一緒に横転してしまった。このジャンクフード大好き兄妹め。

 

「適当観でご飯は出ないのか?」

「ううん、台所担当の藩さんが作ってくれるよ。本当に美味しいんだけど……、段々ジャンクフードが恋しくなってきちゃって」

「リンと一緒に一度だけこっそり出前を取ろうとしたんだけれど、それが藩さんにバレたらひどく落ち込んでしまったんだ。なんだかいたたまれなくなって、出前は諦めたよ」

「君ら仮にも修行中って扱いじゃなかったっけ……」

 

 健康的な食事も修行のうちと割り切るのはどうだろう。そう意見しようと思ったけど、ジャンクフードのために衛非地区からわざわざ帰ってくるほどだから厳しいだろうな、と思って止めた。

 

「それで我慢の限界を迎えたから、一度帰ってチョップ大将の店に行くと決めたんだ」

「そう! そのついでに店とサクの様子も見ておこうかーって感じだったの!」

「店に来たのついでだったのかよ……」

 

 横から18号と6号のナーン……(ガーン……)って声が聞こえた。適当観にはハツっていう別のボンプがいて、最近はハツを経由してでしか連絡が来ないみたいで寂しそうだったのを知っているから、本気でショックを受けているのがよくわかる。ドンマイ18号と6号。

 

 

 

 

「そういえば、ひと段落ってことはまた近いうちに衛非地区へ行くのか?」

「うん。でも、もう車で行けるようになったからね! 店を極端に開けずに済むから安心して!」

 

 What's?

 

 ちょっと何言ってるかわからなかった。もう車で行けるってどゆこと。飛行船はもういらないの?

 

「そうだ! サクも一度街を見てみようよ!」

「えっ」

「さあサク、社用車に乗ってくれ」

「えっ」

 

 リンに背中を押されて裏口に出る。車の後部座席へと座らされたと思ったら、知らない光景が脳内に映し出された。

 

 

 

 

 

 Now Loading...

 何この景色と下の文字、横でボンプが走っていて可愛い。

 

 

 

 

 

「――とうちゃーく!」

「えっ」

 

 気づいたら車を降りていて、目の前にはいつぞやに写真で見た衛非地区の光景が目の前に広がっていた。いやいやいやいやいや、おかしすぎてツッコミ切れないってこれ。

 

 

「えっ、何でこんな一瞬で……? ここ本当に衛非地区?」

「ああ、そうだ。僕たちが一度行った所だからね。こうすれば時間をかけずに移動できるよ」

「全然理屈通ってないんだけど!?」

 

 あまりにも理解の外に行き過ぎていて、脳が考えるのを止め始めてる。

 

「という事で、こっちで何か用事があったらサクも連れてくるから、その時はよろしくね!」

「それじゃあ気を取り直してチョップ大将の店に行こう。サク、車に乗ってくれ」

「ちょ、また――」

 

 俺の思考が全く追いつかないまま、また車に乗せられた。

 

 

 

 Now Loading...

 あ、さっきと違う場所だ。ボンプは変わらないのね。

 

 

 

「はい帰宅! もーお腹ペコペコだよお兄ちゃん!」

「サクも一緒にラーメンを食べに行くかい? 適当観の復興で稼ぎはあるから、奢ってあげるよ」

「だからおかしいって!? 時計ほとんど進んでないしどうなってんだよ!? ……ラーメンは行くけども!!」

 

 何一つ理解できなかったけれど、これがパエトーンの真の力というやつなのだろうか。俺にとっての常識から外れすぎなんだよなあの兄妹……。

 

 

 

 もういいやわからん。ラーメン食べて忘れよ。あ、激辛はしばらく結構です。




 という事でパエトーンの謎パワーによって雲嶽山メンバーとも会える口実を無理やり作りました。

 今のところとびぬけて変なキャラはまだいない印象ですが、果たしてどうなるのでしょうか。
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