一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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 サクはしばらく『Random Play』にいてもらうつもりです。適当観にいつ行くかは未定ということで。


 ミアズマの効果が思ったよりアカン、サクには絶対教えんとこ。


25.非常識でも良いケースが稀にある

 アキラが衛非地区に出向いた数日後、リンも兄の元へ行くこととなった。予定よりも出発が遅れたのは、何でもアキラの乗っていた飛行船が墜落したためだった。アキラは何とか到着できたけど、安全が確保できるまでリンは待機してくれと全力で止めたのである。

 

 おかげでリンの不満と愚痴が全部俺に降り注いだって訳。あの時は映画一本観るより疲れたわ。

 

 『それじゃあサク、店の事よろしくね!』と言い残してリンは店を出ていった。今更だけど、2人とも俺の事信用しすぎではないかと思う。ただ、きっとそういう純粋な所が周囲との強い人間関係を築いている理由なのかもしれない。

 

 

 

 いつもの如く開店準備を済ませて、レジ前の椅子に腰かける。隣には最早顔なじみとも言える18号がくつろいでいる。

 

「いやー、リンも出かけていって店が一気に静かになっちゃったなー」

「ンナンナ~」

 

 

 今の六分街は平和そのもの(当社比)だけど、衛非地区はアキラが言っていた通りゴタゴタしているらしい。詳しくは知らないけど、『適当観』のある街、澄輝坪の人々が悪者の陰謀に巻き込まれてヤバいとか。

 

 内容はかなりぼかしていて、これ以上は機密的な意味で話せないと言っていた。俺も別に首突っ込みたくないからヨシ。

 

 

 今のところ、一通りが解決するまでは『Random Play』には戻ってこられないとの事。あの兄弟がただの観光に行けるはずがないのだ。……内心すぐに行けない距離で良かったと思ってしまった自分がいるのは内緒。

 

 

 

 そろそろ客が来始める時間になったところで、店の扉が開けられた。

 

「邪魔するぞ」

「あ、星見さん」

 

 店に入ってきたのは、最強の虚狩りで有名な星見雅さん。妖美な雰囲気をまとう彼女だが、店には何度も来ている。特に好物であるメロンがある日は何故か必ず嗅ぎ付けてくる。

 

 キョロキョロと店内を見回す星見さんを見るに、来た目的はすぐにわかった。

 

「もしかしてリンに挨拶をしに来たんですか?」

「ああ。……見送りをしようと思っていたのだが、一足遅かったか?」

「あー、今朝行っちゃったばかりですね」

 

 生活リズムが壊滅しているでお馴染みのリンなのに、珍しく早朝に出発したのである。もしかすると、それほど問題が深刻なのかもしれない。

 

 俺の返答を聞いた星見さんは時刻を確認してから何かを考える。残念でしたねと声をかけようかと思ったら、店の扉に向かって何か構えだした。

 

「……今から行けばリンに追いつけるか」

「え? いやもう二、三時間前に出発して――」

 

 ビュン、と風を切る音がした。強風に思わず目を瞑っていた間に、星見さんは姿を消していた。これもしかして本気で追いかけていったの?

 

「ワタンナ!」

「え、星見さんって時速200kmで移動できるの? 生身で? 嘘ぉ……」

 

 18号の発した情報があまりにも信じられない内容だけど、目の前で瞬間移動レベルのスピードを出されては信じざるを得ない。これは今日の店番は1人かー、と思っていたのだが彼女はわずか数分後に戻ってきた。

 

「戻ったぞ」

「はっや……」

 

 最強の虚狩りは伊達じゃなかった。リンがどういう手段で移動しているのか忘れちゃったけど、追いついちゃうってどういう事なの。

 

「リンには会えたんですか?」

「ああ、まだ移動中だったから間に合ったぞ」

「移動中って普通間に合っていない判定だと思うんですけど……?」

 

 発せられる言葉の節々から、この人が規格外であると思い知らされる。俺の常識がまるで通用しなくてまー恐ろしい。この人自力で衛非地区まで行けそうだな。

 

 

 

「店は1人で平気なのか?」

「問題ないですよ、ボンプ達もいますし。……けど、いざあの兄妹と会わなくなると、寂しくなりますねー」

「私はそうでもないな」

「え?」

 

 どういうことだろう、星見さんは2人ととても仲が良いはずだけど。私は行こうと思えば行けるから、とかそういう話なのかな。

 

 

 

 

 

「昨夜、アキラと共にルミナスクエアで映画を見たからな」

「ゑ?」

 

 

 

 

 

 あれ、なんか俺の知っている状況と嚙み合ってないんだけど。え、適当観のゴタゴタは? アキラはしばらくこっちには帰ってこれないとか言ってませんでしたっけ、何でルミナスクエアにいるん?

 

「あ、アキラと会ったんですか?」

「ああ、『期間限定のイベントは逃せないからね』と言っていたぞ」

 

 そういう問題じゃないんだよな。星見さんの言う事が本当なら、アキラが2人いる事になっちゃうんだけど。

 

 

 もしかしてアキラって前にコミカルな映画で見た、コピーロボット的な奴を持っていたりするのだろうか。鼻を押したらそっくりの人物に変身する便利そうなあれ。……今度会ったら鼻を押してみよう。

 

 

 

「そういえば星見さん、今日の店番でしたっけ?」

「ああ、よろしく」

「星見さんに頭下げられるのめっちゃ恐れ多いんですけど……」

 

 いつぞやのモッキンバード以上に緊張しちゃう。前に星見さんが来た時は基本アキラと話してたから、こうして面と向かう回数は多くないんだよね。

 

 

 

 ……実は星見さんには、とある事情で大きな恩がある。彼女が覚えているかはわからないけれど、どこかで返したいと思っている。ただ心配なのは、俺が力になれるようなことが果たしてあるのかという点だ。

 

 

 凡人の俺じゃ彼女の力にはなれないのでは……。

 

「それでサク、早速だが聞きたいことがある」

「なんですか?」

「店番とは、何をすればいい? 前回アキラに教わったのだが、ほとんど忘れてしまった」

「あぁ……俺も完璧じゃないですけど、教えますね」

「ああ、頼む」

 

 前言撤回、今なら力になれそうなことあったわ。とりあえず簡単な作業からやってもらおうと裏の倉庫へと向かう。星見さんの役に立てそうでちょっと安心した。

 

 

 

 

 

「…………彼を2人に会わせたのは、正しかったようだな」

 

 

 

 

 

 俺の表情を見てか、彼女は穏やかな目をしながら何かを呟いていた。聞こえなかったけど、まあいいか。

 

「ところでこのびでおとやらは、開けて確認すれば良いのか?」

「開けちゃ駄目ーーーっ!?」

 

 更に前言撤回。力になり切れない可能性出てきちゃった。と、とにかく頑張るしかないな。




 2.0のメイン進めてる最中に映画のイベント始めたら、「いや衛非地区出れちゃうんかい」って思ったので書きました。



 できるだけ外伝を読まずとも、本編は読めるようにしようと思っています。本編にシリアスは持ち込まないつもりなので。

 ただ雅を出すなら少し触れざるを得ないかな、という事でちょろっとだけ要素を入れてあります。何があったかは外伝にて。
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