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Conversation

「司法試験に合格した」と浮かれている人も多いので、ここであえて、成功の裏に潜む「失敗の科学」を紹介したい。 ビジネスの世界では、「成功体験がイノベーションを阻害する」ことが知られている。過去の成功法則に固執し、新しい変化や失敗に対応できなくなることだ。 司法試験は「問題用紙の中の甲さんと乙さん」を相手にする。だが実務は違う。「目の前でリアルに憤っている甲さん」と「憎しみを代理人に投影してくる乙さん」の間に挟まれ、そこに欲望豊かな丙さん丁さんが登場し、そういった案件を数十件、同時並行で抱えることになる。 医師は生身の人間を切ったり張ったりするが、弁護士は、生身の人間同士の相容れない欲望や感情を、法律というツールを使って調整し、平穏な状態に落とし込んでいく仕事だ。 AI時代により価値を持つのは、まさにその「感情が豊かで欲望に満ちた生身の人間」に対処できる、人間対応力にほかならない。 司法試験合格は非常にめでたい。 だが、それは「紙の勉強」の成功体験だ。次の現実に適応するため、「アンラーン(学習棄却)」する姿勢がなければ、すぐに通用しなくなる。