第53話 オタク、お姫様抱っこされる
「リルカさん、もう少し、お嬢様らしく控えた方が……」
「だって、先生が可愛らしいんですもの」
ぞくぞくと身悶えるような表情で、リルカさんは一蹴した。
良いのかな、純潔は守ってるとは言え、男性経験なんだけど。
中性の貴族も血統保持の政略結婚が主体で、恋愛は愛人と。
という風習があったそうなので、案外、この世界の貴族もそう気にしないのかも知れない。
恋愛結婚が主体じゃない領域だと、価値観も違うよね。
そんな話をして、リルカさんは今日は領主の辺境伯邸に帰ることにしたようだ。
実家で、ご両親のぼくのレシピを献上する交渉をするとのこと。
うまく話が進めば、昼には迎えが来てくれるそうだ。
「でもリルカちゃん、しばらく街の中に滞在してたけどさー、今までは帰らなくて良かったの? ご両親、心配してたんじゃないのー?」
「一応、両親の許しは得ていました。将来の結婚に問題が出ない範囲なら、冒険者をやっても良いと。……一応、辺境領の娘ですから。鍛錬は推奨されてますわ」
辺境伯は武闘派らしい。
そりゃそうか。国境を守る辺境領の領主だもんな。
親族は一番の重臣だし、身近な戦力だ。
危険な土地の領主だし、鍛えておけるなら鍛えさせておきたい、という家風なんだろう。
「というわけで、今日はこの宿に待機しておいてくださいまし。昼から夕方頃までには、当家の使いの者が参りますので」
「ほいさ。久しぶりに、オタクくんを脱ぎ脱ぎさせて待ってるよん」
脱がさないでください、リーシャさん。
********
「もう。オタクくん、出し過ぎだよ……?」
全身をべっとべとにしたクルスさんが、濡れたおっぱいを揺らして微笑んでいる。
死にそうだ。
「オタクくん、へばってるねー。こんなとこイジられちゃっても動けないんだから、かわいーねー!」
エイジャさんが、動けないぼくの身体をもてあそびながらニヤニヤしている。
体力的には回復できても、気力的には精根尽き果てるんだよ。
もはやぼくは、動く気力も沸かないほどの死に体だ。
「やっぱり、美少女からの中は健康に良い!」
ご満悦のリーシャさんは、太ももにダラダラ伝わせながら清々しく仁王立ちしている。
ぼくが魔法で避妊してなかったら、三人ともとっくに妊娠待ったなしだよ。
誰か妊婦になって、クエストに行けなくなったらどうするつもりなんだろう?
貯蓄的には余裕があるけど、子育てもするとなると、まだまだ蓄えが足りないですよ?
「あの……三人とも。迎えが来られると立てないかも知れないので、この辺にしといてください……」
「仕方ないなぁー、オタクくんは! この辺で勘弁しといたげるしぃー?」
と言いつつも、倒れているぼくのお尻を触るのをやめないエイジャさん。
も、もう許して……
「オタクくんに涙目になられちゃうと、もっとしたくなっちゃうよ」
だんだんと、クルスさんにもエイジャさんの趣味が乗り移ってきてる気がする。
元からその気質があったんだろうか。
二人に攻められてるところを見てるときが、一番興奮してるし。
「三人とも、浄化魔法をかけますから。服を着てくださいね?」
「迎えが来るまでは下着のままで良いんじゃん? 夕方までかかるかもしれないってたし」
そう言って、ショーツだけ履いて足を組むエイジャさん。
部屋では身軽な格好が良いようだ。
なんだかんだ、この世界の衣服って、前世の地球ほど着心地が良いわけじゃないからね。
デザインは中世風で、趣があって凝ってるし、ショーツなんかの意匠も現代風に細かい部分はあるんだけど。
刺繍などの装飾面では充分なんだけど、やっぱり素材面では化学繊維にはかなわない。
なので、女性でも、部屋では裸族という冒険者は割といるようだ。
男女混合のパーティになると、クエスト中は着替えや水浴びでラッキースケベが起きることも珍しくない。
レールスは死守してたけど。
「どぉ? オタクくん的には、もーちょっとしたら動けそ?」
「とか言いつつ、ぼくの手を取ってショーツの中に入れさせるのやめてもらえますか、エイジャさん」
するなら自分の手でしてください。
だんだんと気力は回復してきてるけど、今の浄化魔法もあるので、もう少し動けない。
魔力は結局、精神力に依存する部分が大きい。
厳密に言えば生命エネルギーや体力の部類なんだけど、気力が尽きれば魔力も尽きるし、魔力が減れば気力も減る。
論理魔法陣、を組むやり方は思考力を使うから、脳の持久力を消費するのだ。
なので、それが尽きてる現状は、身体も動かせずになすがままにされるしかない。
前のパーティじゃ魔力切れなんてこと、一度もならなかったのに。
このパーティだと、毎晩気力が尽きてる気がするよ。
「あ、来たかな?」
窓の外から、馬車の音が聞こえる。
この宿は乗合馬車の停留所じゃない。
個人所有の馬車がこんな民間の宿に来るんなら、要件は一つだろう。
「はいはい、全員服を着ようね。オタクくんは動けないだろうから、ボクらが着させてあげるね?」
ぐったりしたまま着せ替え人形にされるぼく。
下着は女性ものを着込んでるままなので、三人がかりで手取り足取り服を着させられた。
一緒にあちこちなで回されたけど。
「……失礼いたしますわ」
部屋に入ってきたのは、貴族風のドレスで着飾ったリルカさんだった。
薄く化粧もしていて、まさに貴族令嬢といった感じだ。
「あら、残念です。もう着替えてらしたのね」
中身はリルカさんのままだった。
「リルカちゃん。家の人が使いに来るって言ってなかったっけ?」
「来てますわよ。ただ、先生を脱がしながら待っているとおっしゃっていたので、わたくしが入ってくることにしました。家の者に見られてはまずいかと思いまして」
気遣ってくれたらしい。
ナイス判断だ。
というか、連想されると、一緒にいたはずの自分も疑われるだろうから用心したんだな。
普段は混ざってる側だからね。
「エルブンド辺境伯家の次女、リルアーシャ・エルブンドでございます。本日は辺境伯家の使者として、皆様をお迎えに上がりました」
「ありがとう。オタクくんは今ちょっと動けないから、ボクらが抱えていくよ。馬車まで行けば良いかな?」
そのまま、ぼくをお姫様抱っこするクルスさん。
リルカさんの視線は、ぼくの疲労ぶりからさっきまでの光景を想像したのか、興奮したようにとろけていた。
「では、参りましょうか。……ねぇ、センセイ?」
ニヤリ、と笑うリルカさんに連れられて、ぼくらは宿を出た。
辺境伯邸までは馬車で直行らしい。
魔力が尽きてたから、馬車移動で本当に助かるよ。
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