松本人志は「エンタメ治外法権」を手に入れた…「コンプラ地獄」から逃げ出す芸人、テレビマンが行き着く「墓場」
■古き良きバラエティーは芸人や制作スタッフにとっての「楽園」 こうした背景もあって、「もう地上波テレビで楽しい番組は作れない」と見切りを付けて、芸人や制作スタッフの楽園として、ダウンタウンプラスに移籍する未来も考えられる。心地よい空間で、「古き良きバラエティー」へ回帰しようという動きだ。 すでに、その一端は見えている。ダウンタウンプラスには「大喜利GRAND PRIX(グランプリ)」という独自コンテンツがあるが、これはフジで松本さんが出演していた「IPPONグランプリ」を想起させる。コンセプトは保ちつつ、枠組みだけを変えるスタイルは容易に考えられる。 こうした動きに対して、本来であれば、フジ以外のテレビ局が対応できればいいのだろう。ただ放送局は許認可制なこともあって、「守りすぎ」とも思える安全策をとる必要がある。今後もし緩和されたとしても、それには限度がある。 ■「ダウンタウンプラス」が持つコンテンツ以外の顔 制作陣が理想郷だと感じる理由は、コンプラ面だけでない。コンテンツづくりにおいて欠かせない資金面でも、斜陽のテレビ産業より明るく見えそうだ。吉本興業は8月、数十億円規模のコンテンツファンドを組成したと発表している。番組フォーマットの海外展開も視野に入れており、「企画の実験場」としての役割は、確実に期待されているだろう。 そのモデルケースとして、ダウンタウンプラスは位置づけられるはずだ。会員制サービスに加えて、U-NEXTやABEMAといった他社プラットフォームでも配信(生配信などを抜いた形での月額オプション)していることが、その一例だ。 つまりダウンタウンプラスは、プラットフォーマーであると同時に、制作会社であり配給会社でもある。こうした点でも、枠にとらわれない表現を求める芸能人や制作陣にとっては、魅力的に映るのではないだろうか。
■芸人の駆け込み寺か、モラルの墓場か このような背景もあり、今後しばらくはダウンタウンプラスを中心とした配信コンテンツに「逃避」する動きが相次ぐだろう。しかし、かといって成功するとは限らない。むしろ、このまま行けば、ある程度のところで鈍化すると思われる。 その理由は、現代人の興味が細分化されていることにある。「テレビ黄金期を再び」と野望を抱いても、そもそもそれが受け入れられないご時世なのだ。筆者のようなアラフォーより上の世代は楽しんだとしても、Z世代には刺さらない。それゆえに、いつか「オワコン(終わったコンテンツ)」と化す時期が来てしまう。 また、どれだけ面白いコンテンツでも、「これってどうなの?」といった疑問が頭をよぎるような内容であれば、すぐに炎上につながってしまう。法的には問題がなくとも、倫理的に懸念があれば、批判の的になるからだ。 新天地を求めて、ネットの海へと挑む。そんな芸人やスタッフが行き着く先は――「コンプラ過剰社会における駆け込み寺」か、それとも「モラルの墓場」だろうか。 ---------- 城戸 譲(きど・ゆずる) ネットメディア研究家 1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ニュース配信会社ジェイ・キャストへ入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長、収益担当の部長職などを歴任し、2022年秋に独立。現在は「ネットメディア研究家」「炎上ウォッチャー」として、フリーランスでコラムなどを執筆。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。 ----------
ネットメディア研究家 城戸 譲