すべての一線級の作家は、全員ネットから生まれてくる【前編】

すべての一線級の作家は、全員ネットから生まれてくる【前編】

上場企業の社長に聞く! 夢とお金の本質・アルファポリス 梶本雄介社長 梶本 雄介

2023.10.31

アルファポリスは、インターネット上で人気のある作品を書籍化する出版事業として2000年に創業された。以来、ライトノベルと漫画を中心に、ネット発のヒット作を次々と世に送り出している。創業者である梶本雄介社長は、ネットに集う人々の“嗅覚”を信じ、読者が求める本、楽しめる本づくりで新しい市場を生み出してきた。そんな梶本社長率いるアルファポリスが目指す未来と、そこに至る戦略について聞いた。

「読者が読みたい作品」を
ネットは提供できる

――梶本社長は、小説や漫画の投稿サイトを運営し、人気作を書籍化する出版事業を2000年にスタートしました。インターネットが普及したばかりの当時、大変早い動きでしたね。

小説を書いた人は、誰かに読んでほしいと思うはずです。音楽をやっている人がライブハウスや路上で演奏するのと同じで、書き上げた作品を人の目に触れさせたい。しかし従来は、有名な作家先生が選考する文学賞という、高いハードルを突破するしかありませんでした。

東京・渋谷区恵比寿の本社でインタビューに応じる梶本社長

1995年頃からインターネットが普及し始め、小説やエッセイ、漫画をアップする人が出てきたとき、私は「大きなチャンスが来た」と思いました。作品を不特定多数の人々に直接発表できる、画期的なメディアが登場したからです。5年も経てば出版業界における主流が置き換わり、すべての一線級の作家はインターネットから生まれるようになるだろう――。

そう考え、2000年に小説や漫画の投稿・閲覧サイト「アルファポリス」を立ち上げました。その頃、私はよく「北島三郎先生が選考委員だったら宇多田ヒカルはデビューできなかった」と言っていました。伝統的な選考スタイルで世に出る作品と、一般の読者が読みたい作品は必ずしも一致しません。ネットを使えば、もっと大勢の人たちが読みたいものを発掘し、提供できるという見通しがありました。

小説・漫画の投稿・閲覧サイト「アルファポリス」

プログラミングを独学で学んでウェブサイトを自作し、起業から3年間は1人で、サイト運営から作家の発掘、編集、営業までをこなしました。2002年には、市川拓司さんのデビュー作『Separation』がヒット。この小説はドラマ化され、市川さんは次作の『いま、会いにゆきます』でベストセラー作家になります。2007年には川口雅幸さんのデビュー作『虹色ほたる 〜永遠の夏休み〜』が話題になり、アニメ映画化。着実にヒットを出しながら、出版事業を育てていきました。

累計40万部を突破した少年向けSFファンタジー『虹色ほたる』

一方、時代の変化は私の予測より遅かった。待てど暮らせど、「すべての一線級の作家がネットから生まれる時代」はやってこない。それでもケータイ小説のブームがあり、2010年頃からは、女性のロマンス小説と異世界系のライトノベルを中心にアルファポリスへの投稿数が一気に増えました。実力ある方の投稿も目立つようになり、いまや誰もが知る作家が当時は別のペンネームでうちの賞を獲っていた……なんてこともあるほどです。

業界内の追い風を感じ、2014年に上場。その後いよいよ、漫画と電子書籍に力を入れます。うちは人気のあるラノベ作品を数多くコミカライズしていて、親和性があったんですね。ここ数年は電子書籍の漫画の売上が順調に伸び、今に至ります。

読者は、どういう人たちなんだ?

我々の強みは、ネットに集う人たちの反応を見て、今の読者の“嗅覚”に合う本を出せるところです。ネットで熱狂的な支持を得る作品には、何らかの人を惹きつける力がある。そういう作品を書籍化すると、店頭で少なくとも8割の方が初見で買ってくれるんですね。つまり、ネット上で我々が「面白い」「応援したい」と思った作品は、一般の書籍市場でもかなりの支持を得られる。ここはリンクすることがわかっています。

そんな才能の発掘のために大事にしているのが、コンテストです。とりわけ「ファンタジー小説大賞」は毎回の応募が3000作を超え、「恋愛小説大賞」もそれに迫る勢いです。いずれもそのうち30作以上を出版する稼ぎ頭。しかしネットに投稿された作品には、面白いけど日本語がたどたどしい、ストーリーに一貫性がない、単調で起承転結が練られていないなど、そのままでは出版してお金をいただくのが難しい作品が多い。
そこで、編集者の力が発揮されます。編集者が真剣に原稿と向き合い、ストーリーの設定や構成、日本語の正しさや読みやすさなどを粘り強く作家に指摘するのです。ゲラ(原稿の試し刷り)が真っ赤になることもしょっちゅう。作品の完成度を高めるために、このプロセスは欠かせません。

そういう力のある編集者をどうやって育成するか……ですか? それはなかなか答えづらいですね。というのも、できる人は最初から結構できちゃう。もちろん流通や製本、印刷の流れは一通り教えますが、「この作品のここが面白い」という勘どころをイチから全部教えるのは、難しいと思います。

唯一、私が編集者に口を酸っぱくして言うのは、「読者はどういう人たちなんだ?」。冒頭で申し上げたように、ネットの特徴は作家と不特定多数の読者が直接つながれるところです。そこにいる読者がどんな人たちで、何を感じているのかをしっかりと見極め、書籍化の原稿づくりや装丁、タイトルに活かしていく。読者を想像しながら本をつくるというのは、当社が非常にこだわりをもつところですね。

業界のセオリーよりも
ネット上の読者を信じた

――「読者を想像しながら本をつくる」という点について、もう少し具体的に聞かせてもらえますか。

私が担当編集した最後の作品が、柳内たくみさんのファンタジー小説『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』1巻でした。ネット上に掲載された作品の主人公は、33歳の自衛官。書籍化にあたって、ライトノベル好きの編集者たちからは「ラノベの読者層は10代なので、主人公を同じ世代に設定し直して改稿すべき」という意見が出ていました。

元自衛官の著者が描く異世界エンタメファンタジー『ゲート』

たしかに当時は「涼宮ハルヒシリーズ」など、学園異能バトルものが10代を中心に大ブームを起こしていました。ライトノベルを出版するならこの分野で10代向け、というのが業界のセオリーだったのです。

しかし、ネット上の『ゲート』の読者は明らかに30代がボリュームゾーンに見えました。秋葉原に通っているような、ちょっとマニアックな大人の30代男性。セオリーには反するけれど、目の前にいる読者を信じようと思い、主人公は33歳という設定を変えずに書籍化しました。
その結果、電子書籍を含むシリーズ累計の発行部数は、680万部を突破。おそらく『ロードス島戦記』や『スレイヤーズ』を読んで育ったライトノベル第一世代が30代になって、自分たちに合うファンタジーを求めていたのでしょう。これを機に、「30代のラノベ読者」という新しいマーケットが可視化され、いまでは彼ら・彼女らに向けた作品が続々とつくられています。

ですからやはり、ネット上で見えてくる「読者」にしっかりと目を凝らすこと。そのことによって、新しい市場をつくっていくのです。

先ほど申し上げたコンテストでは、あまり投稿サイトでは読まれない「時代小説」「一般文芸書」「キャラクター文芸」などの分野でも賞を設けています。まだネットでの人気は高くありませんが、編集部がすべての作品をチェックし、才能がある作家を見つけ出そうと頑張っています。予想より時間がかかっているとはいえ、すべての一線級の作家がネットから生まれる時代は、必ずやってくる。そのときに向けた布石として、こうした賞を設けているのです。
その先にある未来として、私は「すべてのエンタテインメントの名作がインターネットから出てくる未来」を思い描いています。出版以外にゲーム、アニメなどの映像作品も、ネット発でヒットを出す作家がこれからどんどん出てくるでしょう。

最近は専門部署をつくってアニメ事業にも力を入れていますし、以前進出・撤退したゲーム事業にも時機を見てまた挑戦したい。出版事業で培ったノウハウを使い、いずれは「インターネットを軸とした次世代型のエンタテインメント企業」としてもっと幅広く、面白いコンテンツを世に出していきたい。それが、私の夢です。

アルファポリス
次回は11/7(火)配信予定です。
日経平均株価ってどうやって計算している?

日経平均株価ってどうやって計算している?

あなたの知らない「インデックスの世界」 おせちーず須山 奈津希

2023.10.30

はじめまして。おせちーずと申します。現在、東北の某都市で中小企業の研究員をしながら某大学で非常勤講師をしつつ、執筆やセミナー講師などをさせていただいています。

さて、本連載ではインデックス(指数)に関するみなさんのギモンにどんどん答えていきたいと思います。今回のテーマは、投資をしていない人でもニュースなどで聞いたことがあるであろう「日経平均株価」です。日経平均株価がどんなものか、皆さんはご存知ですか?

株価指数の算出はそれぞれにルールがある

日経平均株価は株価指数の一つです。株価指数とは株式市場全体の値動きをあらわす指標のことです。具体的には、複数銘柄の株価を定義された計算式で数値化したもので、投資家が株式市場の動向を確認するための指標(目印)となります。

日経平均株価が大きく上昇したと聞けば、株式市場は好調だったんだなと感じられるのではないでしょうか。まさにそのように「投資家が株式市場を確認」するのです。

さて、株価指数は日経平均株価だけではありません。日本株でいえば、TOPIXやJPX日経400をはじめとした、様々な株価指数があります。米国株や世界株式の株価指数もありますね。そして、それらのルールはすべて異なります。ルールが異なれば、株価指数そのものの性格も異なります。

日経平均株価を決める2つの定義

日本経済新聞社のwebsiteに「日経の指数公式サイト」があります。このwebsiteに掲載されている日経平均株価の「指数概要」には、次の2点が書かれています。

1)70年以上前から算出されている日本を代表する株価指数として世界中で広く使われている。
2)東京証券取引所プライム市場に上場する225銘柄を選定し、その株価を使って算出する株価平均型の指数である。

1)については、その通りでしょう。世界でよく知られた日本の株価指数です。始まりは、戦後の株式売買再開でした。1950年のことです。当時は東京証券取引所(以下、東証)が算出していました。1970年から日本経済新聞社が引き継ぎ、「日経平均株価」という名前になったのは1985年です。

2)について、補足します。この記述は3つに分けて解釈する必要があります。

・東証のプライム市場に上場する銘柄で構成されている
・225銘柄が選定されている
・その銘柄の株価を使って「平均」して算出した指数である

「東証プライム市場に上場する銘柄で構成されている」はわかりやすいですね。プライム市場とは、2022年4月4日の市場区分の再編により運用が開始された東証の株式市場のひとつです。再編された東証の市場には、プライム市場のほかに「スタンダード市場」「グロース市場」があります。プライム市場は3つの市場のうち、最も上位の市場です。なお、REITやETFなどは「日経平均株価」の採用銘柄にはなりません。

225銘柄を選ぶ4ステップ

225銘柄を決める手順は以下の図の通りです。

それぞれのステップを確認しましょう。

①「売買代金」と「売買代金当たりの価格変動率」で市場流動性を計測します。期間は5年とし、売買代金当たりの価格変動率は(高値÷安値)/売買代金 で算出します。
「市場流動性」とは、株式市場でどれだけ活発に取引されているかを問うものです。「市場流動性」が高ければ、投資家にとって売買しやすいということです。売買しにくいものは代表的な株価指数採用銘柄にふさわしくない、という意図でしょう。

②東証プライム市場上場銘柄のうち、①で計測した市場流動性の上位450銘柄を「高流動性銘柄群」とし、採用銘柄の中に高流動性銘柄群に含まれなくなった構成銘柄があれば除外します。一方、高流動性銘柄群のうち上位75銘柄に含まれる未採用銘柄を採用します。

③日経業種分類の36業種を、次の表に示す6つのセクターに集約し、このセクター間で「高流動性銘柄群」に属する構成銘柄数がバランスするように除外・採用を行います。このとき、②による採用、除外銘柄数に配慮しながら、構成銘柄数が225銘柄となるように入れ替え銘柄数を調整します。セクターバランスによる採用・除外の基本的な考え方は次のとおりです。

i)450 銘柄のうち各セクターに属する銘柄数の2分の1を、そのセクターの「妥当銘柄数」にします。
ii)妥当銘柄数と実際の採用銘柄数を比較して、採用銘柄数が妥当数より多いセクターからは除外、少ないセクターには追加採用します。この除外、採用銘柄の選定は①の結果にもとづきます。

④ 計算等にもとづいた結果を、採用の是非を最後は人間が判断するということです。ちなみに、米国の株価指数であるS&P500にも同じようなルールがあります。

セクターで偏りが生まれる理由

セクター、業種ごとの銘柄数はこちらの表のとおりです。幅広い業種がカバーされていることがわかります。流動性で上位450位のランク付けをすると、「技術」と「素材」でほぼ半分を占めることもわかりますね。

このように「日経平均株価」採用銘柄は、活発に取引されていることを重視する株価指数です。その結果、セクターや業種の銘柄数にはやや偏りがあります。これは投資家が取引した結果に基づいていますから、投資家の意思が反映された結果ともいえるでしょう。

業績を考慮しないのも、日経平均株価採用銘柄の特徴です。連続で赤字決算をしている銘柄も採用されています。この辺りは、残念に感じる投資家がいるかもしれません。業績は株価に大きく寄与しますから、赤字決算を出している銘柄は日経平均株価にマイナス寄与する傾向があります。

株価平均型の指数

次に、「株価を使って算出する株価平均型の指数」について見ていきましょう。「株価平均型の指数」とは構成銘柄の個々の株価を足し合わせ、それを一定の数で割って計算されるものです。しかし、日経平均株価は225銘柄の株価を足し合わせて225で割っているわけではありません。「え? どういうこと?」と思われたかもしれませんね。少し踏み込んで説明しましょう。

日経平均株価を算出する式はこちらの図の通りです。

株価に「株価換算係数」を掛けて用いられる銘柄があります。あまりにも株価が大きい銘柄は、指数に対する影響が大きくなってしまうからです。
ただし、2021年9月末以前から採用されている銘柄は、株式分割等がなければ、株価換算係数=1です。

意外に大切な「除数」の存在

「除数」とは、指数の連続性を維持するために使われる値です。「日経平均株価採用銘柄」が算出開始当初から一切変わらなければ、除数は225です。しかし、「日経平均株価採用銘柄」には、株式分割や次に示す「銘柄入れ替え」などの変化が起きます。

銘柄を入れ替えた時を想定しましょう。分子にあたる株価合計が、除外銘柄と採用銘柄の株価の差だけ変わります。つまり、すべての銘柄の値動きが全くなかったとしても、入れ替えられた銘柄の分だけ分子の値が変化します。分母である除数を変化させないと、値動きがないのに指数が変化します。これは、おかしな話です。このような不連続に対応するため、分母にあたる「除数」を修正することで指数としての連続性を維持しているのです。

以下に、1銘柄を入れ替えた場合の例を示しました。

225銘柄の株価合計が450,000円で、銘柄数である225が除数だとする。
この場合、指数=450,000÷225=2,000 になる。銘柄入れ替えで、株価=5,000円の銘柄が除外され、株価=5,500円の銘柄が採用されたとすると、225銘柄の株価合計が450,500円になる。
この時、450,500÷X=2,000になるように除数を調整する。
X=225.25になり、次に採用銘柄のいずれかに何らかの変化が起きるまで除数=225.25になる

銘柄入れ替え

日経平均株価は、年に2回、採用銘柄が定期見直しされます。4月と10月のそれぞれ第1営業日です。それぞれの約1ヵ月前に入れ替え銘柄が発表されるのが通例です。見直される銘柄の上限は3銘柄と決まっています。

定期見直しとは別に臨時見直しで銘柄が入れ替えられることがあります。採用銘柄が何らかの理由で上場廃止になるとか、採用銘柄同士が経営統合することで1銘柄欠けることになるような場合に、臨時で追加されます。その場合は、除外される銘柄と同一セクターから補充されることになっています。

今回のまとめ
・株価指数の算出方法はそれぞれの指数によって異なる
・日経平均株価は「投資家に取引されているか」が重視され、業績は関係ない
・日経平均が途切れずに算出されているのは「除数」のおかげ
・年に2回、日経平均採用銘柄は入れ替えタイミングがある
次回は11/27(月)配信予定です。
「材料に投資せず、需給に投資せよ」

「材料に投資せず、需給に投資せよ」

FROGGY COMIC・朝倉世界一のひとコマ格言 日興フロッギー編集部朝倉 世界一

2023.10.30

コロナ禍が始まったころ、保有していたレストランの株が値下がりを始めたから全部売ったんだけどね。意外とすぐ持ち直し、コロナが明けた今では過去最高の株価を叩き出している。「コロナ=悪材料」だと思ったけど、感染症対策をすぐに打ち出して営業を続け、何より安くておいしいからファンは減らなかった。経営者の能力やレストランの人気を信じて、株を保有し続けた投資家が多かったのかなあ。「売らなきゃよかった」としょんぼりしながらそのレストランで食事して、頭をよぎったのが「材料に投資せず、需給に投資せよ」という格言。株価は一時的な好材料・悪材料で上下することはあっても、最後には需要と供給のバランスにしたがって決まっていく。悪材料だからってすぐに判断せず、「市場がどう評価するか」をもうちょっと見守るべきだったなあ。自分の意見が、みんなの意見と合うとは限らない……。それにしてもパスタとワインはおいしかった。やっぱり、売るべきではなかったな。