【解説】「紛失防止タグ」悪用の禁止盛り込む ストーカー規制法・改正案の狙いは?
財布などの忘れ物をスマートフォンで探せるという便利な「紛失防止タグ」。「スマートタグ」と呼ばれることもありますが、11日にストーカー規制法の改正案が閣議決定され、こうした「紛失防止タグ」を無断で他人の持ち物などに取り付ける行為の「禁止」などが盛り込まれました。 【画像】罰金10万円も…「バカ」の代償は 「これをやると侮辱罪」事例公開【#みんなのギモン】 その狙いはなんなのか? 小栗泉・日本テレビ特別解説委員が解説します。
■相談急増「紛失防止タグ」の悪用事案とは
いま「紛失防止タグ」を悪用して、相手方の場所を特定しようとする事案が増えています。 たとえば、離婚調停中で夫に居場所を秘密にして避難していた妻と子どもが、夫と面会した時に「ぬいぐるみ」を渡され、その「ぬいぐるみ」の中に「紛失防止タグ」が仕込まれていたというケース。
また、男が女性のクルマに「紛失防止タグ」を取り付けて位置を特定し、追いかけてクルマを衝突させ女性を拉致したという、非常に怖いケースもありました。 こうした「紛失防止タグ」に関するストーカー事案の相談件数は、2021年には3件だったのが、去年は370件と急増しています。
そこで、ストーカー規制法の改正を目指している警察庁は、新たに「紛失防止タグ」を無断で取り付ける行為や、位置情報を無断で取得する行為の禁止を盛り込むことにしたのです。 スマホなどの「GPS」は2021年から規制されていましたが、「紛失防止タグ」は、これまで規制の対象外でした。
■対策を取るようになったメーカー側やスマホOS事業者
──すごく怖い事例を紹介しましたが、対策は取られていないのでしょうか? これまでいくつか取られてきたんです。ITジャーナリストの三上洋さんに聞いたところ、タグのメーカー側も、被害者側に取り付けられたタグから警告音が鳴る仕組みや、アップルやグーグルも被害者の近くに知らないタグがあり続けると、「スマホに警告画面」が出る、といった対策を取るようになってきたといいます。
■警察が捜査をしやすくなる面で大きくプラス
さらに、今回の改正案で「紛失防止タグ」が規制対象に追加されたことで、警察が捜査をしやすくなるという面で大きくプラスだと評価しています。 ──最近も、ストーカー行為が凶悪な事件に発展するケースは、本当にあとを絶たないですね。 今年も、川崎市でストーカー被害を警察に相談していた女性が殺害される事件がありました。 この事件では、被害の相談を受けていた神奈川県警が、女性から「警告」を求める申し出があったかどうか確認できなかったため、元交際相手の男に対する警告などが行われていませんでした。 この川崎のケースの反省をふまえて改正案には、これまで被害者の申し出を受けて行われていた、ストーカー加害者への「警告」について、申し出がなくても警察の職権で行えるようにする、という内容が盛り込まれました。 また、ストーカーが「探偵」など第三者に依頼して相手の情報を特定しようとするケースもあることから、警察が、探偵などに対して「ストーカーのおそれ」を通知し「情報提供しないよう」求めることができる規定も設けています。 ──このストーカー規制法改正案はいまの臨時国会に提出し、早期の成立を目指すとしています。 (11月11日放送『news zero』より)
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