麻生政権と民主党政権の経済対策を比較すると見えてくるものとは?
多くの人が悩んでいる「日本の経済政策の方向性」。今回は、2008年のリーマンショック後に誕生した麻生政権と、その後の民主党政権の経済対策を比較しながら、その違いと影響を振り返ります。
まず、麻生太郎内閣。2008年から約1年間という短い期間でしたが、実は非常に意欲的な経済政策を展開していました。特に注目すべきは「景気対策の3段ロケット」とも呼ばれる一連の財政出動です。
麻生政権下では以下のような大規模な経済対策が行われました。
平成20年度補正予算(11.5兆円):安心実現のための緊急総合対策
平成21年初頭の第2次補正予算(27兆円):生活対策
平成21年度予算(37兆円):生活防衛のための緊急対策
平成21年度第1次補正予算(15.7兆円):経済危機対策
このわずか半年間での積極的な政策は、当時のリーマンショックによる経済的打撃を和らげる大きな支えとなりました。特に中小企業への支援策が多く、たとえば「モラトリアム法案」では返済猶予を設け、多くの企業が倒産を免れたと言われています。
ただし、財務省の“慎重すぎる姿勢”が逆に現場に不信を与えた面もありました。たとえば、欠損金の繰戻し還付制度では、制度自体は中小企業にメリットがあるにもかかわらず、「税務調査が入って逆に税金を取られるのでは?」という恐怖から、多くの企業が利用を避けたのです。
安藤氏は「普段の財務省の振る舞いが信用されない原因」だと指摘しています。
しかし、麻生政権のこうした積極的な経済政策は、2009年の総選挙で自民党が民主党に大敗し、政権交代によって途切れてしまいます。自民党は300議席から119議席に激減。一方、民主党は115議席から一気に308議席へと躍進しました。
では、民主党政権は何をしたのか?
選挙で掲げたマニフェストは、非常に耳障りの良いものでした。子ども手当て、高速道路の無料化、ガソリン税の暫定税率廃止、年金制度改革、天下り根絶、消費税減税……など。しかし、実際にはこれらのほとんどが実現されませんでした。
その最大の原因は「財源は“埋蔵金”でまかなう」とした非現実的な財政戦略です。
安藤氏は、「財源がなければ国債を発行すればよかった」と主張します。自国通貨建ての国債なら破綻リスクはなく、消費税を廃止すれば企業利益が増え、結果的に法人税収も上がる可能性がある。つまり、目先の赤字にとらわれずに経済を回す戦略が必要だったと指摘します。
しかし、民主党政権の中核を担った枝野幸男氏(官房長官)、野田佳彦氏、菅直人氏(ともに元財務大臣)は、いずれも社会人経験がほとんどないまま政治家となり、結果的に財務省の“借金は悪”という価値観に取り込まれてしまったのではないかと言われています。
石田氏も、「国の借金は、個人の借金とはまったく別物。元本を返す必要がないのに、そこを理解できていない」と強調します。
こうして見ると、麻生政権は限られた期間ながらも財政出動を駆使して日本経済を守ろうとしたのに対し、民主党政権は「財源探し」に奔走してチャンスを逃し、最終的には国民の期待を裏切る形となったのです。


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