2024年 12月 21日
親切に感謝です 栗山由利
人のことよりじぶんのこと、そんな風潮が強まっているように感じる昨今だが、先日、見も知らぬ人の親切に感謝してもしきれない経験をした。
私は月に一回、家からバス、JRを乗り継いで小一時間かかる香椎まで整形外科に通っている。いつもは一人で行くのだが、一か月ほど前に膝に痛みが出たので、最近は用心のために遠方への外出は夫が付き添ってくれている。帰りは天神に寄りたかったので、復路は乗り換えなしで天神まで行ける西鉄バスを利用した。
天神のデパートなどで二つ、三つの用をすませ、さあ電車に乗ろうとしたらトートバッグのいつものポケットに定期入れが見つからない。公共交通機関が頼りのわが家は西鉄のニモカという交通系ICカードの年間定期券を利用している。加えて、福岡市が70歳以上の高齢者に出している交通用福祉ICカードも入れていた。落ち着いて通路の隅でバッグの中のものを全部出してみたが見つからない。
さあ、それからである。バッグは肩にかけていたし、立ち寄ったATMコーナーでは夫が横についていた。夫は私よりもはるかに忘れ物などに対して注意を怠らない人であるからもと来たコースを辿るしかない。天神地下街、中央郵便局と落とし物の届けがなかったか確認しながら降車したバス停に到着した。目の前のコンビニでも聞いてみたが、そのような届け物は無かったと言われた。最後に立ち寄ったデパ地下でも同様。もうその時は出てくることはないだろうと半ば諦めていた。
ただ、カードは紛失手続きをすればいいのだが、定期入れに付けているストラップは、長男が携帯電話を持ち始めたころに仲の良かった友達と一緒にローマ字で〈KURI〉というパーツを入れたオリジナルだったので、なかなか諦めがつかなかったのである。
次は警察署に行くしかないと考えたが、夫がとりあえず電話をしたらということでダメ元で管轄の中央警察署の遺失物の係に電話をしてみた。落とし物の内容物、形状、氏名そして名前の漢字表記を聞かれしばらく待っていると、なんと博多警察署にあるという返事をもらえた。夫と小さくハイタッチしたのは言うまでもない。教えていただいた通り博多警察署に連絡を入れたところ、現物は中洲交番にあるという。
もう歩く元気はなくタクシーで向かった中洲交番。私たちが入り口に近づくと中にいた5,6人のおまわりさんの目がいっせいにこちらを向き、入るや否や「どうしました」「なにかありましたか」と声をかけられた。「落とし物がこちらに届いていると……」と言うとその場の空気が一瞬で緩んだのがわかった。
拾って届けてくれたのは30歳前後の男の人ということまでは教えてくださった。お礼も固辞されていたという。本当にありがとうございました。感謝しかありません。
バスを降りた時に肩にかけたバッグに入れたつもりが、バッグとコートの間に落としたようだ。次は私がこの恩を還元しなければならない。恩送りである。
見つかって良かったですねといっしょに喜んでくれたおまわりさんの笑顔も忘れられない。警察内で遺失物に関するデータも迅速に処理され共有されていることにも感謝であった。
あつたかい心をのせた定期入れもどつてきました冒険をして