ホワイトスワン
最初の世界のフィーロたんは空を飛べるようになっておりました。
俺の記憶が正しければフィーロたんを空に飛ばせる方法があるはずなのですぞ。
うう……どうしたら良かったのでしたかな?
一番簡単な方法はあの時のお義父さんに、今のお義父さんがなって貰う方法ですが、あれはお姉さんにかなり怒られる事態だったのですぞ。
……何か、心当たりがありますが、今はまだ保留にしましょう。
一応……改造関連の技能のある槍等がチェックするとあるのがわかりましたぞ。
フィーロたんを空に飛ばせるように出来るように色々と準備を致しましょう。
「わかったー」
「それじゃあ朝のご挨拶はこれくらいにして女王と謁見しようですぞ。お義父さん」
「……はぁ。しょうがないな。ラフタリア、行ってくる。姉とフィーロを任せたぞ」
「はい。サディナ姉さん、フィーロと一緒にもう少し話をしましょうか。これから色々と忙しくなる予定なので……」
「あらー。わかったわ」
ちなみにお姉さんのお姉さんはお義父さんがルコルの実を食べれる事をまだ知らないのですぞ。
きっと島に行ったら気づくでしょう。
と言う訳で、俺達は女王に揃って謁見ですぞ。
錬と樹が素直に城におりますぞ。最初の世界だと待ちきれなくて俺もそうでしたが、朝早くに港に出発したのでしたな。
「それでは勇者様方……カルミラ島へ出発、よろしくお願い申し上げます」
「ふむ……力を磨くには良いかもしれん」
「人の多き所に悪が栄えますからね……調査は必要でしょう」
「後で合流しますぞ」
「……どいつもこいつも雁首揃えてやりたい事しかしてないな」
お義父さんが呆れたように呟きましたがここから先の行動は決まったのですぞ。
「では樹、フレオンちゃんをお願いしますぞ。錬もブラックサンダーと一緒にがんばってくれですぞ」
「当然です。彼女は正義を志す同士ですからね」
「フ……奴は言わずとも俺と共にいるさ」
錬と樹が聞きわけが良くて非常に助かりますぞ。
メルロマルクに留まった際の錬と樹のワンマン姿勢とは雲泥の違いですな。
やはりフィロリアル様と出会う事で人は変われる、という事でしょう。
「……お義父さんも後で錬と樹と話をすると良いですぞ」
「洗脳しようとしたってそうはいかないからな!」
何故でしょうか、お義父さんが錬と樹を見てから警戒度が上がってしまった様な気がしますぞ。
錬と樹は成長して変われたのですが……。
「後はそうですな。開拓の未来を見据えてお姉さんの村の者達を早めに保護すべきだと思いますぞ」
「それは……そうだな。少し島へ行くのが遅れそうだ。武器屋の親父に礼を言ってから奴隷商の所に行くか……」
と言う訳で俺達はそれぞれ行動を開始したのですぞ。
お義父さんはクラスアップを断念し、そのまま武器屋に顔を出しに行ったようですな。
錬と樹も各々ブラックサンダーとフレオンちゃんを連れて出発しました。
さーて……俺も色々とやりますぞー!
まずは俺の仲間として……ユキちゃんをスカウトして上げるのが良いでしょうな。
クー達を連れて来る事は出来ますが……卵を探すのに時間が掛りますぞ。
みんながどの辺りにいるのかざっくりとしか判断できません。
もちろん、卵の匂いを嗅げばわかるのですがな。
コウは逆にフィロリアル生産者の所に行けば一発ですぞ。
「槍の勇者様、次の目的地に出発する様ですね」
ここで城に招待された仙人が出発の準備をしている俺に話しかけてきますぞ。
「カルミラ島へ行くとの話でしたが」
「その前に俺は新たなフィロリアル様を加入させますぞ。いろんなループをする俺は常にフィロリアル様と共にいましたからな。フレオンちゃんの安全を確保した今、やっと回収出来ますぞ」
「ほう……槍の勇者様の補佐をするフィロリアルとはとても優秀な者なのでしょうな」
「そうですな。頼もしいフィロリアル様ですぞ。ですが、まずはしっかりと育てねばいけませんぞ」
「ワシもフィロリアルに関しては他者に負けない自負があります。勉強のためにご教授願いたい所ですのじゃ」
仙人は常に勉学をしている方なのですな。
俺も勤勉に努めなければいけませんぞ。
「ではそうですな……確実に確保出来るフィロリアル様から加入させますぞ」
シルドフリーデンを復興させた周回のユキちゃんが、どの周回でも俺と出会いたいとお願いしていたので会いに行きましょう。
思えばループが開始した際のループや……うう、恐ろしいフィーロたんになってしまったループなどでは会わずにいましたからな。
いずれ会えると思っていましたが、ユキちゃんの願いを叶えますぞ。
口調の関係から虎娘も後で優遇してやらねばいけませんからな。
「ユキというフィロリアルですか……」
「仙人も行くのですぞ! ユキちゃんは血統書が付くほど高貴なフィロリアル様! 仙人の助言でユキちゃんはより輝けるかもしれません」
俺とは異なる視線でユキちゃんの優雅さを上げる事が出来るかもしれません!
「他にコウも連れて行きましょう。お姉さんと仲が良くなるフィロリアル様ですぞ!」
フレオンちゃんが樹、錬はブラックサンダーがいる今、みんなにフィロリアル様を相棒にする時ですぞ。
お姉さんのお姉さんと仲良くできるフィロリアル様はいますかな?
……みんなと卒なく仲良くしていた記憶が蘇りますぞ。
素晴らしい方ですな。
後で考えておきましょう。
と言う訳で俺は仙人を連れてコウのいるフィロリアル生産者のいる牧場へと飛んだのですぞ。
「おー懐かしいですぞー」
タクトとその残党によって襲撃されてしまった牧場を思い出すと、未だに心が締め付けられるような気持ちになってきますな。
ちなみにあの周回ではフィロリアル生産者は辛うじて生き延びていたのですぞ。
どうにか逃げ切ったのは良いのですが、大事なフィロリアルが片っ端から奪われて途方に暮れていたそうですぞ。
襲撃されたショックからしばらく師匠という方の所で匿ってもらっていたとか何とか。
「おや? ここは……」
仙人が周囲を見渡しながら言いますぞ。
「知っているのですかな?」
「ああ、ワシの弟子の一人がの……ワシの持っていた物をそれなりに譲渡させてフィロリアル育成を任せたのじゃ。まあ血統を重視する傾向があるのが難じゃったが……」
「なるほどですぞ」
仙人の弟子がこの辺りにいるとは驚きですな。
「では行きますぞ。お姉さんの相棒が出来るフィロリアル、コウの眠っている卵があるのはここの牧場ですからな!」
と、俺は仙人を連れてフィロリアル生産者の下へと行きますぞ。
「グアグア」
見覚えのあるフィロリアル舎の中で、フィロリアル様達が楽しそうに鳴いております。
ああ……この子は……あのループで亡くなった子ですぞ。
絶対に守って見せますぞ。
「ん……誰だ?」
「客ですぞ」
「尋ねられて客と答えるって……」
「ほっほっほ……久しぶりじゃな」
俺の後ろに居た仙人がここで生産者に声を掛けますぞ。
「あ、貴方は!?」
おや? 生産者が大きく目を見開いて仙人の方へと駆けよって来ますな。
「お久しぶりです。師匠……本日はどのような要件でこっちに?」
「ワシではなく、ここにおられる槍の勇者様がフィロリアルを求めているとの話でのう」
「なんと!」
生産者の師匠とはこの仙人だったのですかな!?
驚きとはこの事ですぞ。
世界は狭いですな!
「槍の勇者? コイツが?」
「これ、失礼な言い方をするでない。ワシが保証する」
「は、はあ……それで、うちの牧場のフィロリアルを欲しているのはわかったが……どの子で?」
と、生産者は育成中のフィロリアル様に視線を向けますぞ。
「確かにここにいるフィロリアル様達も素晴らしいと断言しますぞ。ですが、それは後ほどですな。仙人、フィロリアルキングやクイーンはどれほど欲しいですかな? 俺は幾らでも欲しいのですぞ。それこそ、国と呼べるほどに」
「あの元気な子達が無数に出来るのなら確かに夢のある話ですじゃ」
仙人も機嫌が良いですぞ。
「仙人の事をきっとフィロリアル様達は皆大切にしてくださると思いますぞ!」
「そう言われてワシも嬉しい限りじゃよ。で、槍の勇者様、コウと言う者は?」
おお、そうですぞ。
今回はコウを連れて行くのでしたな。
「まだ卵ですぞ」
「卵……ですか? なら――」
俺は謎の敬語口調の生産者が言う前に卵の収められている場所へと体を向けますぞ。
それから生産者より先に扉の前で待機ですな。
「……うちの間取りを知ってる?」
生産者が首を傾げていますが、そのまま卵が収められている小屋の扉が開かれますぞ。
「そんでどの卵なんだ?」
俺は卵を確認しますぞ。
模様替え等をして配置が変わる時がありますからな。
……うん。コウが眠っている卵を発見しましたぞ。
「これですな」
「ん? それは……」
仙人がマジマジと卵を確認しますぞ。
「この卵が、なのですじゃ? 一般的な品種で競争には向いていないし、耐久力も普通ですじゃ」
一目でわかるとは凄いですな。
仙人を冠するのは間違いないですぞ。
脳内のお義父さんが『お前が勝手に仙人と名付けているだけだ!』と指摘しますが、間違っていないのですぞ!
この仙人に師事を仰げば俺のフィロリアル様への知識は更に深まる事この上ないですぞ!
きっとフィロリアル様の秘密等も知っている可能性は大いにありますぞ。
「仙人、フィロリアル様は等しく愛する存在ですぞ。そう……我が子のように、早い子も遅い子も、強い子も弱い子も、賢い子もおバカな子も等しく……」
生産者が呆れた表情をしましたが、仙人は顔を下にして震えております。
「なんと素晴らしい……確かにそれはフィロリアルに携わる者として当然の考えですじゃ! そう! フィロリアルを愛する事こそ大切なことなのですじゃ! ワシが間違っておった」
「し、師匠!?」
「いえ、仙人の観察眼も見事ですぞ。確かにコウは血統は普通の子ですが、それでもフィロリアル様なのですぞ。俺は血筋で差別などしないのですぞ」
「おお……なんと、まさにフィロリアルを愛する体現者……」
「なんだか訳がわからねえが……師匠が妙な奴と仲良くなってきやがった……詐欺とかじゃねぇよな?」
こんなやり取りをしていると、生産者はコウの卵を譲ってくれたのですぞ。
思えばフレオンちゃんやブラックサンダーを連れて来るべきでしたな。
論には証拠をしないので生産者の信頼が得られませんでしたのですぞ。
ただ、予約等は出来ましたので、フィロリアル様を後で大量に購入する下地は出来たのですぞ。
「後はユキちゃんですな」
「その子も卵なのですかな?」
「いえ……ユキちゃんはこの頃ともなると孵化して育成中のはずですぞ」
血統羽であるユキちゃんは既に出荷されて別の名を授かっているのですぞ。
何より、最初の世界や他のループでユキちゃんがどんな名前だったのかは知っております。
「で……そいつは?」
「ここから離れたゼルトブルの競争羽育成牧場で現在育てられているホワイトスワンという名前の子ですぞ」
「ホワイトスワンってアイツか? そいつなら知ってるぞ。まだ生後2カ月半程度だが……」
ここが出荷元なので生産者もわかっているのですぞ。
と言う訳で俺は仙人と生産者を連れて今度はホワイトスワンのいる牧場にやって来たのですぞ。
おー……のびのびと常にフィロリアル様達がレースに挑む様に切磋琢磨する練習場完備の牧場に来ました。
中々に高水準な施設のある牧場ですな。
「あれ、オーナー? いつこちらに? いつもより早くないですか?」
ここでフィロリアル生産者がポータルで連れてきた事に驚きの顔をしながらよろよろと牧場関係者に近づきました。
「ついさっきだ。でだ……ホワイトスワンって奴がいただろ? アイツを欲しいって奴がいるんだが……」
「え? ホワイトスワンですか? わかりました。ただ……あの子を連れて行くのは難しいと思いますよ? 走る事で頭がいっぱいな子なので」
と、管理人がレース場の方に顔を向けますぞ。
するとそこにはユキちゃん……いえ、この周回ではホワイトスワンが仲間のフィロリアル達と一緒ですぞ。
「グア……グアアアアアアア!」
スラッとしつつ、無駄な筋肉の無い綺麗な足と腿で、どれだけ走る事に情熱を捧げているのかわかりますな。
きっと生まれて、大きくなった頃から毎日走り込みを続けているのでしょう。
全力で走ると足が痛む事を気にしながらも、それでも走り続ける……アスリートと呼べるフィロリアル様が練習をしておりました。
ストイックな様子ですな。
「ホワイトスワン」
管理人がそうホワイトスワンに呼び掛けると、ひとっ走りをしたホワイトスワンが息を整えながら近づいてきました。