説得茶番
「何度も仕留めているし、竜帝の核石情報から、どう回避しようともレールディアのパターンを把握しているから近づいたらガエリオンは乗っ取り可能なの。もしかしたらと思って仕掛けたけれど、まさか本当に起こるとは思いもしなかったなの」
まさかライバルがタクトのドラゴンを乗っ取るとは想像もつきませんでしたな。
「で、槍の勇者、さっきも言った通り大分元気になっているけれど、経過はどうなの?」
「お前に言う必要があるのですかな!?」
「そこまで元気なら別に言わなくても良いなの。えっと……このレールディアの記憶と日付から考えると……メルロマルクでは第二の波の頃だと思うけど、どうなの?」
「よくわかりましたな! ですが既に波は終わりましたな」
「へー。で、この世界のなおふみはワイルドなの? それとも優しいなおふみなの?」
「お前に言う必要はないですな!」
またお義父さんの童貞を狙うつもりですかな?
「言わなくて良いなの? またお前の所為で大事なフィーロが――」
う!? ヒィイイイイ!?
俺の心の奥底から恐怖の感情が湧きおこってきますぞ。
であると同時に優しいお義父さんの笑顔が浮かんで来ました。
今は優しいお義父さんを思い出して精神回復ですぞ。
お義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんフィーロたんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さんお義父さん
ガクガクと震えているとライバルがため息を漏らしましたぞ。
「まだ完全に克服できてねえなの……ほら、槍の勇者、ガエリオンに話をしておいた方が色々と後が楽なの。なおふみのお願いを聞いているガエリオンに相談しろなの」
く……ライバルめ!
俺が弱っているからと言って完全に見下しているのもいい加減にするのですぞ!
俺が苦虫を噛み潰しているとライバルは空を見上げながら言いますぞ。
「槍の勇者が単独でいる様だし、ユキもサクラもコウも居ない。そして近くになおふみもいない所から考えて、どこかの周回の途中だと判断するなの。大方……なおふみ達に少し余裕が出来たからタクトを惨たらしく殺す為にレールディアを血祭りに上げようとしたって所じゃないなの?」
コイツはどうしてそこまで俺の状況から答えを導けるのですかな!
「せ、正解ですぞ」
「まあ、槍の勇者、お前がこの先上手く行けるかどうか判断してやるのと、タクトを仕留める手伝いをしてやるから、腹を割れなの」
くぅ……ライバルめ。
俺の良き保護者面などしやがって、ですぞ。
「しょ、しょうがないですな」
俺は止む無くライバルに事情を少し話しました。
ループしたのは最初の世界の途中、第二の波の前で、そこでフレオンちゃんに出会い、フレオンちゃんの危機をどうにか乗り越えて地盤を固めたとの話ですな。
「ああ、やっぱり槍の勇者の最初のフィロリアルは暗殺されていたなの」
「そうですぞ! あの赤豚! 絶対に惨たらしく殺してやるのですぞ! その為に行動中ですぞ! 余計な真似をしたら許しませんからな!」
「殺すなとは言わねえなの。ある程度事情はわかったなの。まあ……それなら多少の無茶をしても大丈夫そうだし、なおふみとフィーロの不安はなさそうでよかったなの」
うぐ……フィーロたんを連呼するなですぞ!
恐怖が蘇ってきてしまいますぞ。
「なおふみ達はしっかりと守れなの」
「言われなくてもしますぞ」
「まあ、この周回なら最悪の事態はなさそうなの。それでも注意しろなの」
くっ……この件に関してはライバルに頭が上がりませんぞ。
「ああ……俺の為に献身的な自己犠牲でライバルにその身を捧げてしまったお義父さん、貴方の慈悲に感謝ですぞ……」
俺はシルトヴェルトに一緒に行き、シルドフリーデンさえも救ったお義父さんに感謝の祈りを捧げますぞ。
貴方の慈悲と、俺の為にした行動を理解しなかった愚かな俺が悪かったのです。
後悔とは後に来て、取り返しがつかないからこそ、後悔なのですぞ。
あの周回のお義父さんにまた会える時が来るでしょうか……。
「ひでぇ言い様なのー」
ライバルが若干照れ気味に言いやがりますぞ!
つーか照れるなですぞ!
「さて、槍の勇者。ここでガエリオンがタクトを苦しめる良い案を提供してやるなの。これはレールディアの記憶と今までの竜帝の核石からわかった事実なの」
「なんですかな?」
「タクト達は今まで色々なループでなおふみや槍の勇者の前に出て来ていたはずなの。その中で、よく考えたら来ない、出会わないタイミングがあるなの。その理由を教えてやるなの」
「勿体ぶるなですぞ」
「フフン、しっかりと聞けなの。タクトは――」
と、ライバルはこの後、タクトが何をするのかを説明してきたのですぞ。
であると同時に俺を散々煽ってきました。
お義父さんが苦労している合間にタクトがしていた事を聞き、俺のはらわたが更に煮えくりかえって来たのですぞ。
「だから槍の勇者、ガエリオンの提案する案で行くのは……どうなの?」
「実行には俺も混ざりますぞ」
「当然なの。ま、それまでに槍の勇者。お前の方の面倒事となおふみ達の立場向上に尽力しておけなの。楽しみは残しておけなの」
なんとなくライバルに乗せられている様な気がして拒否したいのは山々なのですが、タクトを惨たらしく、種類に富んだ苦しめ方と言う事なので、乗ってやる事にしましたぞ。
という訳で俺はライバルに後を任せてタクトを仕留めずにフォーブレイから去る事にしたのですぞ。
そんなこんなでメルロマルクの城に戻った俺は事件が起こるまでゆっくりと待機をする事になりました。
やがて三勇教信者の騎士達が映像水晶を片手に城に報告に来たのですな。
城に居た俺も玉座の間に呼びだされてお義父さんが婚約者を人質にした時の映像を見せられました。
「そんな! おお……メルティ! 盾の悪魔め! またワシの家族を奪うと言うのか! 絶対にさせんぞ!」
映像を見たクズが今にも立ち上がらんとしたその時。
「ブブブヒ!」
赤豚が立ち上がろうとするクズの肩に手を乗せて言いますぞ。
「ブブブブ……ブブブ……ブブヒ、ブヒブヒ」
確か……俺の記憶が正しければ、『パパ、メルロマルクの全権を握る王が城から出ては盾の思う壺。セーアエットの様に何が起こるか分からないのですから、ここはモトヤス様や勇者様方と私に任せて待っていてください。何があろうともメルティを盾から救出して見せますわ』とか言っていた様な気がしますぞ。
セーアエット……誰ですかな?
なんか聞いた様な気がしますが……。
おや? 脳内で俺の為にライバルにその身を捧げてしまったお義父さんが、エクレアの事だと囁いた気がしますぞ。
なるほど、エクレアの名字でしたな。
思えばここでエクレアの実家の話がチラッと聞こえるのですな。
ちなみにエクレアの父親が女王不在の時になんで自身の領地に居たのかと言うと、赤豚がフォーブレイから帰って来た祝いとして珍しい魚の料理を城で出すとクズが駄々をこねて強引に領地に戻らせて取りに行かせたとの話ですぞ。
この辺りの出来事にはお姉さんのお姉さんなんかも末端に関わっていて、遠洋に漁に出る理由になったんだとか。
最初の世界のお義父さん曰く、赤豚本体の暗躍だったとの話ですな。
平和な時期だったのでエクレアの父親も数日ならばと城を空けてしまったとの話ですぞ。
同様にお姉さんのご両親もお姉さんのお姉さんに漁を任せたとか。
お姉さんのお姉さんはこの事を酷く後悔しているとの話ですぞ。
「しかし……」
『ブブヒ! ブブ……ブブブ!』
「うむ……確かに盾は力を付けていて、波を乗り切ったと言うが……そうじゃな。敵が三勇者達によって倒される寸前まで弱っていたのじゃろう……なら勇者たちで魔王を倒せるはずだ! 任せるとしよう! 今すぐキタムラ殿以外の勇者も呼びよせるのだ!」
と、クズは赤豚に乗せられて俺達に全てを任せる事にした様ですな。
「ブブウ……ブヒ……ブブヒ!」
更に三勇教のシスターらしき豚がクズに言ってますな。
「何? 盾の魔王は洗脳の力を使い、既に国民の一部を洗脳していると……確かに盾ならありえる。早々に注意勧告をするのだ!」
とまあ、その後はどんどん話が盛られて行くのですぞ。
最初の世界でこの事件に遭遇した際の俺は、赤豚の妹? しかもお義父さんが誘拐? 確かにお義父さんならあり得るかもしれないと納得をしていたのでしたな。
しかもお義父さんが洗脳の力を持っていると言うのも納得出来るかもしれないと、第二の波でお義父さんに指揮をお願いした兵士たちの反応からも頷いてしまったのでした。
今にして思えば荒唐無稽な話なのはわかりきっていますぞ。
とにかく、こんな経緯があって、錬と樹は呼び戻される事になりましたな。
ですが……。
「剣と弓の勇者様の消息がつかめないだと!?」
「はい! 剣の勇者様は配下の者達に宿を任せて一人で出かけた後、行方が掴めなくなり……弓の勇者様も仲間を残して忽然と……」
「ぐぬぬ……まさかこれも盾の悪魔の仕業だとでも言うのか!」
「幾らなんでも考えすぎですぞ」
ここにきて錬と樹が捕まらない理由をお義父さんの所為にされてはたまった物ではないのですぞ!
脳内で最初の世界のお義父さんが「絶対にお前が原因だ!」と仰っていますが違うのですぞ!
フレオンちゃんとブラックサンダーが錬と樹をお守りしているので絶対に身柄は安全なのですぞ。
しかもこの二人には勇者の力を覚醒させる方法として強化方法に関してしっかりと教えているので錬と樹がしっかりと話さえ聞けば十分に安全を確保出来るはずなのですぞ!
「この前の戦いに関して、錬も樹も思う所があるのでしょう。責任を感じて仲間達に告げずに修業をしているだけかもしれませんぞ」
「だが! 今は一刻を争う状況なのだぞ!」
クズが婚約者の事を思って焦りの表情を浮かべております。
「安心しろ。俺が尚文を探してきてやるさ」
と、心にも無い事を言ってやりますぞ。
「ブブヒブブブ、ブブブ」
すると赤豚も都合がいいのかクズを宥めておりましたな。
「うむ……アマキ殿とカワスミ殿といち早く連絡し、盾を仕留めるように命じるのだ! よいな!」
クズはそう部下の兵士たちに命じたのですぞ。
と言う訳で俺達は最初の世界の通りにお義父さんを追う事になりました。
正直に言えばお義父さんが何処に逃げて行くのかルートは分かっております。
ですが捜査は難航している風に装わねばなりません。
そんな訳で俺は赤豚達を連れて見当違いの場所を探索するのを繰り返したのですぞ。
数日が経過しました。
最初の世界通りならばお義父さんが国境沿いを通りかかる頃合いではありますぞ。
「ええ……我らが影の捜索により判明している事によるとどうやら盾の勇者一行は北東の国境近くに居ると思われます」
「ブブヒ、ブブブ」
三勇教派の影の報告でお義父さんの居所がばれていますぞ。
「イツキ様がおらずとも、我らが力を合わせてメルティ王女を救い出すのだ! 盾の悪魔を殺せー!」
「おおー!」
しかも何故か樹の仲間まで赤豚と合流している始末。
燻製が欲望に滾った目をしておりますな。
ここでお義父さんを仕留めたらその功績で樹のパーティーでの地位を盤石なモノにするとかその腹積もりなのでしょうかな?
「ブブブヒ! ブヒブヒ」
赤豚が何やら鳴いていますが……激しく面倒ですぞ。
道中で足代わりに利用しているフィロリアル様の羽毛を撫でて精神を統一しなければいけませんな。
……そう言えばユキちゃんやコウはどうなっているのでしたかな?
確かこの頃にはユキちゃんの卵はもう無いのですぞ。
ただ、ユキちゃんがどこの牧場に預けられているのかは知っていますから、機会があったら会いに行ってみるのも良いかもしれません。
コウはずっとあの牧場にいますな。
お姉さんやゾウと仲が良いので事が終わったら連れて来て上げるのも良いかもしれませんな。
なんて考えていると最初の世界と同じように検問を赤豚達は張り始めました。
「……ブヒ?」
怠け豚が俺の様子に首を傾げていますが知った事ではないですな。
「いました! そこの藁の荷車です!」
探知をしていた者がフィーロたんの引く藁を乗せた荷車を指差しました。
お義父さんが藁を払いのけて姿を現しましたな。
「いるのは元康だけか?」
「それを貴様に話す義理は無い!」
燻製の奴が勝手にぶちかましておりますぞ。
うるさいですな。
お前なんぞすぐに処分してやっても良いのですぞ!
「盾の悪魔め! 早くメルティ第二王女を解放しろ!」
燻製が樹の言った台詞を代弁していますぞ。
さすがは樹の部下ですな。この段階では考える事は同じようですぞ。
「解放も何も、第二王女は別に拘束していないぞ」
「白々しい。証拠はあがっているんだぞ!」
「そうだ。お前に正義はない!」
「正義……ねぇ?」
お義父さんの呆れた表情を俺は察する事が出来ますぞ。
完全に茶番劇ですからなぁ。
なんとも白ける展開ですぞ。
剣……14%
弓……25%