侵蝕憑依
俺はポータルで転移し、お義父さん達の所に行く前に預けていたブラックサンダーと合流しました。
預けた相手は仙人ですぞ。
フレオンちゃんもおりますな。
「クエェエ!」
そこそこ強化したお陰かブラックサンダーは既にキングの姿になっておりました。
「こうですね!」
「クエェエエ!」
フレオンちゃんも合わせて何やら楽しげなポーズ合戦をしております。
おや? フレオンちゃんが顔に、俺が付けていたマスクの様な代物を着用しております。
「フィロリアルマスク2号参上です!」
「クエエエエ!」
仲が良いですな。
「おはようですぞ」
「あ、1号さん。今、この漆黒の稲妻とヒーローとは何たるかを話していた最中なんです」
1号とは……フィロリアルマスクも組織化する時代という事ですな。
つまり状況によってフレオンちゃんは俺の呼び方を変えるという事でしょう。
「おお……楽しそうで良いですな」
「とても実りのある話が出来ました。ヒーローも主義主張は様々なのですね」
「クエクエ!」
ブラックサンダーも楽しげにしておりますな。
以前のループで出会ったクロちゃんの様に楽しそうですぞ。
「賑やかで元気なフィロリアルじゃ」
仙人もブラックサンダーに関して寛大に受け入れているご様子。
さすがは仙人ですぞ。
暴れフィロリアルと名高いブラックサンダーと上手くやっているみたいですな。
「さてブラックサンダー。お前はまだ力に目覚め切れていないのですぞ。まだしなければならない事がありますが、わかりますな?」
俺の言葉にブラックサンダーは激しく頷きますぞ。
このノリが非常に好きなのですな。
「フレオンちゃんも計画を実行する為の最後の総仕上げですぞ」
「はい! それでは仙人さん、行って参ります!」
「その前にブラックサンダーはこの機材で魔力を糸に……闇を紡ぐのですぞ。その力が貴様を覆う闇のベールとなるのですからな!」
と事前に服を作る為に魔力を糸に変える機材をブラックサンダーに回すように指示をしますぞ。
「クエエエ!」
ブラックサンダーは俺の命ずるままに魔力を糸にする機材に手を引っ掛けて回し始めましたな。
やがてある程度、魔力を糸にして確保出来ました。
先に布にするくらいなら問題ないでしょうな。
「では、徹底的に力を磨きに行きますぞー!」
「はい! フレオンはがんばりますよー!」
「クエエエ!」
と言う訳で俺達は再度、狩りに出かけました。
クラスアップをするのも必要ではあるのですが、メルロマルク内で行うと目立ちますので今は出来ませんな。
しっかりと資質向上で底上げをしますぞ。
そうして……その日の夕方頃にはフレオンちゃんとブラックサンダーの育成はある程度、目処が付いた段階にまで達しました。
「さて、ブラックサンダー。貴様は存分に力を磨いた。新たな姿、真の闇の姿を俺達の前に示せ、ですぞ!」
「クエエエエエ!」
バサァっとブラックサンダーは翼を広げると徐々に天使の姿に変わって行きましたぞ。
うん。クロちゃんではなく、背の高い男の姿であるブラックサンダーの姿になりましたな。
既に成鳥寸前でしたからブラックサンダーの変化はとても早かったのですぞ。
「ハッハッハ! 漆黒の稲妻! ここに顕現!」
と、ブラックサンダーはご機嫌な様子で天使姿を見せております。
おおう……錬と似た背格好ですが、大事な所が丸出しですぞ。
「さて……話によれば俺様達の衣装を作ってくれるのだったな。愛の狩人<ドライブ>よ」
ブラックサンダーから二つ名をもらってしまいました。
ドライブモードと合わせて良い名前ですな。
ですが、より良いネーミングで答えた方が良いですかな?
「愛の狩人<ドライブ>ですかな? 俺はどちらかと言えば時を渡る永遠の愛の狩人が良いですぞ!」
「良い響きです!」
フレオンちゃんがフィロリアル姿で飛びながら興奮気味に答えてくださいますぞ。
「時を渡る永遠の愛の狩人よ……あー」
「ちょっと長くて呼び辛いですね。では愛の狩人<タイムドライブ>で良いのではないですか?」
「ふむ……ではそれがいいだろう。では愛の狩人<タイムドライブ>よ。闇の衣を作るのだな?」
「そうですな。採寸は……なんとなくわかりました。デザインはこんな感じで良いですかな?」
最初の世界で知り合ったブラックサンダーが望んだデザイン案をブラックサンダーに見せますぞ。
「ふふふ、優秀な洋裁師<博士>がいるとこちらが苦労しなくて良い……早く闇の剣士に会うのが楽しみだ」
「ですねー。私もいつきさんと言う方に出会うのが待ち遠しいです。いつお会いしたら良いのですか?」
「そうですなー……明日の昼頃には会いに行って良いですぞ。思い思いに錬や樹と語り合うのが良いのではないですかな?」
「はい!」
「フハハハ! 楽しみだ!」
と言う訳でフレオンちゃんとブラックサンダーの服作りをその日の晩はする事にしましたぞ。
一晩でどうにか、フレオンちゃんとブラックサンダーの衣装を作りあげる事が出来ました。
「ありがとうございます。もとやすさん」
「感謝するぞ。愛の狩人<タイムドライブ>」
フレオンちゃんは魔界大地の堕天使フレオンちゃんの衣装を参考にしたフィーロたんとも少し異なるワンピースにしました。
とても似合っておりますぞ。
そしてブラックサンダーは……メタルな感じの衣装ですな。
レザーっぽいのを使っておりますぞ。
「ふあああ……眠いですな」
考えてみればぶっ続けで活動していますぞ。
さすがに今夜はこの辺りで区切りをつけて休む事にしましょう。
と言う訳で俺はその日の晩、二人の服を作り終えた後、ぐっすりと眠ったのですぞ。
翌日……お義父さんがメルロマルクの城にやってきて、予想通りクズと言い争いになった様ですな。
それから少し経った後の事。
治療院で手厚い魔法と薬による治療を受けて錬と樹、その他の連中がそれぞれバラバラに出て来て、勇者三人でクズと謁見をしたのですぞ。
「勇者達よ。此度の波、よくぞ勇猛に戦い、退けてくれた。出てきた相手は勇者達の攻撃に深手を負っていたと聞く。後少しで勝てたのであるなら十分であるが、今後の戦いに備えて、十分に力を磨いて欲しい」
と、クズは出来る限り俺達を傷つけない方向で励ましの言葉を送りながら援助金を渡してきますぞ。
この金を元手に更に力を付けてくれと言う事ですな。
ちなみにクズはお義父さんと言い争いを既にしているので不機嫌なのは間違いないですぞ。
事務的な言い方にも聞こえましたからな。
「ブブブヒー」
赤豚や怠け豚、その他の豚が最近ふらつく俺に対して何か思っているのか絡んできますぞ。
うう……じんましんが出そうですな。
ここは耳当たりの良い言葉を言って、休みを取らせますぞ。
じゃないと俺が自由に動けませんからな。
「みんな! 次の波まで時間はある。この前の戦いは十分に疲れを取れなかったから満足に戦えなかったに過ぎない。だから今日はみんな、思い思いに休んでくれ」
「ブブー!」
「ブヒー!」
赤豚達は喜びの声を上げますぞ。
であるのですが、そのまま赤豚は俺の腕に腕をからめて引っ張ろうとしてきました。
俺の経験からデート等をしようと提案しているのかと思いますな。
「悪い。俺は少し用事があるんだ。この埋め合わせはするから休んでいてくれよな!」
「ブ、ブヒヒヒブ―ー」
そう言って俺は赤豚の手を掻い潜って早めにその場を去りますぞ。
赤豚の事だから俺にゴマを擦っておけばいいとか考えているのはわかりますぞ。
なんて思いながら廊下の窓から外を見ると錬と樹が次の戦いに備えて城から出て行く光景が見えましたな。
空にはブラックサンダーを背負ったフレオンちゃんが二人を見張っております。
機会を見て、出会うのでしょう。
これで錬と樹の問題も解決ですな。
脳内にいるシルトヴェルトに向かった時の、俺の為にライバルに自ら犠牲となってしまったお義父さんが小首を傾げていますが、大丈夫ですぞ!
さて、他にする事と言ったら……何がありますかな?
この後の事を考えると、婚約者をお義父さんが誘拐した、という騒動を見守ると言う手もありますが……同時にフィーロたんに接近する事に他なりません。
うう……まだ心の余裕が無いのですぞ。
フレオンちゃんとブラックサンダーは既に樹や錬に会いに行ってしまいました。
なら俺がする事は決まっていますな。
色々と素材の調達と……タクトを惨たらしく殺しに行く良い頃合いかもしれませんな!
と言う訳で俺はフォーブレイへと向かいました。
ポータルでフォーブレイの城下町に到着しました。
「さて……ですぞ」
まずは豚王に謁見しに行くのが良いですかな?
時間的にそろそろ豚王が起きていてもいい時間ではありますな。
そう思いながら城を目指して歩いていると……タクトの取り巻きにいたドラゴンが城門から当然の様に歩いて出て行きますぞ。
ふむ……城で豚王と結託してタクトを炙り出して惨たらしく殺すのもワンパターンですぞ。
この際、あのドラゴンを見せしめに殺して犯人がどこにいるのかと激怒したタクトを惨たらしく殺すと言うのも悪くはありませんな。
楽に死なせるつもりは無いですぞ、タクト……お前には生まれる事の出来なかったフィロリアル様達の分だけ、多種多彩な死に様を見せてもらわねばなりませんからな。
などと思いながら俺はドラゴンの後を歩いて行きます。
途中でドラゴンが宝石店に入って行きました。
「あ、貴方は……よ、よくぞいらっしゃいました……レールディア様、本日はどのような宝石がお望みで……」
宝石商人の顔が引きつっておりますぞ。招かれざる客だと言うのは一目でわかりますな。
「この店は宝石を扱っているのだろう? 見せろ」
随分と高圧的な態度でドラゴンは店内のアクセサリーを物色していますな。
そうして物色した中で一際高価なアクセサリーを手に何個も取っております。
「中々悪くはない。貰うぞ」
「あ……」
「なんだ? 文句でもあるのか?」
ドラゴンがこれでもかと威嚇をするかの様に翼を広げておりますな。
ここで現行犯としてぶち殺すのも良いかもしれませんが……ふむ。目立ち過ぎるとタクトを惨たらしく殺せないのですぞ。
「い、いえ……どうぞ。お譲りします」
ちなみに後で聞いた話なのですが、タクトの権威と、強力なドラゴンであると言う立場を利用して貴金属を扱う商人界隈ではよく脅迫まがいにアクセサリーなどを取られる事が多いそうですぞ。
異議を唱えるとボコボコにされた挙句、やってもいない罪をでっち上げられて財産を没収されると言われているそうですな。
どこまでも下種な連中ですぞ。
「では頂いて行く。我のコレクションにお前の宝石が入った事を感謝するが良い」
何が感謝するが良いですかな。
お前の財産など俺が奪い取ってやりますぞ。
とにかく、そんな脅迫をしてドラゴンは立ち寄った宝石店から宝石をタダで奪って行きました。
それから……ドラゴンは人通りの少ない道へ、どんどんと歩いて行きます。
おそらくフォーブレイ内のタクト派閥の暗部がいる施設辺りにでも行くのでしょうな。
ですがこれは俺にとってもチャンスなのですぞ。
一気に近付いて急所を貫き、バーストランスでぶち殺してやりましょう。
と……完全に人目が無くなった所をクローキングランスを使用して接近し、槍を振りあげようとした、その時――。
「う……ぐ……な、なんだ!? う……うう! な、何かが……我に……ううう……あああああ!?」
タクトのドラゴンが胸を掻き毟り、呻きながら蹲り始めました。
「や、やめろ! ぐうう……ぬ、塗り替えられ……ああああ!? な、なんで……逃げきれ……あああああ!? た、タクト……た、助け――」
そのままタクトのドラゴンはしばし悶え、倒れました。
ビクンビクンと痙攣し、動きが止まりましたな。
やがて、すっと立ち上がりました。
「なの! んむ? これは……うえ……もしかしたらと思って仕掛けていたけれど、まさか本当にこんな状況になるなんて思いもしなかったなの」
タクトのドラゴンは自身の手を何度も開いたり閉じたりをしながら周囲を見渡した後、そう呟きました。
「なのなの! おい、槍の勇者、近くに潜んでいるのはわかっているなの。出て来いなの」
……この台詞、反応から考えてまさか……どちらにしても俺が隠れている事を見抜かれているのなら出るしかありませんな。
クローキングランスを解除して俺が姿を現すと、タクトのドラゴンは俺の方を見て目を細めましたな。
「槍の勇者、大分元気になっている様なの。調子はどうなの?」
「その台詞、態度……お前、まさか……ですぞ」
「正解なの。ガエリオンなの」
やはりですな!
「槍の勇者はわかっていると思うけど、ガエリオンはドラゴンの近くに行けば憑依……とはちょっと違うけど出来るようにしてあるなの」
「それでタクトのドラゴンに憑依するとは滑稽ですな!」
HAHAHA、無様ですな。
お前にはタクトのドラゴンがお似合いですぞ。
お義父さんの童貞を奪った恨みは忘れていませんぞ。
タクトのドラゴンですからなぁ。今すぐぶち殺してやりますかな?
剣……5%
弓……15%