自民党の鈴木俊一、国民民主党の榛葉賀津也両幹事長が10月31日、国会内で会談し、所得税が生じる「年収の壁」引き上げを巡り、両党に日本維新の会と公明党を加えた4党の枠組みで協議する方針で一致した。自民が少数与党で政権運営に臨む中、現状の壁を打ち破ることはできるのか。
年収の壁とは、所得税の基礎控除等である。これが長期にわたって据え置かれて、結果として課税所得が増加し「増税」となってきたことから、基礎控除等を引き上げるとする税制改正を行うものである。
高市早苗政権は、当初国民民主と連立を模索したくらいなので、基礎控除等の引き上げには前向きである。しかし、結果として維新との連立となった。維新との連立合意では、基礎控除等の引き上げについて、インフレ対応型の経済政策に移行するとして「インフレの進展に応じて見直す制度設計については、年内をめどに取りまとめる」とされている。
国民との連立であれば、「インフレの進展」は「最低賃金の上昇」となっただろう。
要するに、いわゆる年収の壁は破れる。ただし、基礎控除等は引き上げるものの、その基準がインフレ率か最低賃金率かで引き上げ結果は異なるだろう。あえて言えば、自維はインフレ率、国民民主と公明は最低賃金率だろう。いつの時点から起算するかでいろいろな議論があり得るが、インフレ率の方が引き上げ幅が少なくその分穴埋め財源の議論はまずない。
一方、最低賃金率の方が引き上げ幅が大きく穴埋め財源の議論が大変になる。
国民民主は、手取りを増やすというキャッチフレーズが功を奏して人気を高め、昨年10月の衆院選で議席数を増やした。補正予算の成立と引き換えに、基礎控除額を「国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる」とした昨年12月の自公国の合意がある。
この合意は、高市政権でも引き継がれるので、基礎控除等の引き上げは、178万円以下で決着するだろう。どこまで178万円に近づくかは、今後の4党間の協議次第だ。
国民民主は、自民との連立を選択しなかったので、178万円の満額回答にはならないかもしれない。もし、自民と維新の連立の後でも、国民民主が連立に加わっていれば、178万円だっただろう。
なお、国民民主の連立参加の経緯は玉木雄一郎代表の腹のうちにあるが、結果として維新は支持率を上げ、国民民主は下げたのは事実といえる。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)