SAP TechEd

SAP、エンタープライズ向け新基盤モデル「RPT-1」を発表--Snowflakeとの提携でデータ戦略を強化

末岡洋子

2025-11-07 07:00

 SAPは現地時間11月4~6日、ドイツ・ベルリンで開発者向けイベント「SAP TechEd 2025」を開催した。今回の目玉は、自社開発による基盤モデル「SAP RPT-1」の発表である。同社幹部は「初のエンタープライズ向けリレーショナル基盤モデル」と位置付け、強い自信を示した。また、データクラウド領域ではSnowflakeとの統合も発表された。

開発者は引き続き必要、だが役割は拡大する

 SAP TechEdは、2023年にインド・ベンガルールでリアル開催された後、2024年はバーチャル形式に移行していたが、ベルリンでの開催により2年ぶりに対面形式が復活した。会場には約3000人が来場し、オンラインでは2万人が視聴した。

SAPのMuhammad Alam氏
SAPのMuhammad Alam氏

 初日の基調講演には、SAPのExecutive BoardメンバーでProduct & Engineering担当のMuhammad Alam氏が登壇。AIの進展により「開発者は不要になるのでは」といった懸念に対し、「開発者は引き続き必要だ」と明言した。その理由として、「全ての企業がデータカンパニーになる」「あらゆるユーザー体験がAI主導になる」という2つの大きな潮流を挙げた。ただし、開発者の役割は変化していくとし、「インテリジェントなワークフローの設計」「AIエージェントの管理」「ビジネス成果の形成」など、より高度な業務が求められるようになると述べた。

 こうした変化に対応するため、SAPは技術プラットフォーム「SAP Business Technology Platform(BTP)」の進化を進めている。Alam氏は「BTPは開発者にとってのメインAIプラットフォームとして、アイデアを現実のイノベーションに変える機能を拡充してきた」と語った。

 開発者支援の方向性として、SAPは「オープン性」と「コンテキストに富んだエージェンティックなプラットフォーム」の2点を掲げている。今回のTechEdでは、オープン性の取り組みとして「SAP Business Data Cloud(BDC)」におけるSnowflakeとの提携を発表。また、開発者向けツール「SAP Build」では、Model Context Protocol(MCP)サーバーを通じて「Claude Code」「Cursor」「Windsurf」「GitHub Copilot」「OpenAI Codex」などの開発AIエージェントが利用可能となった。さらに、「Visual Studio Code(VS Code)」向けの拡張機能も発表され、VS Code環境内でSAP Buildの機能にアクセスできるようになった。

 一方、エージェンティックなプラットフォームの取り組みとしては、Agent2Agent(A2A)やMCPなどのプロトコルのサポート、そして基盤モデルの発表が含まれる。Alam氏は「SAPはオープンなエコシステムを受け入れ、エージェントに深いレベルでのプロセスとデータのコンテキストを提供することで、AIとエージェントの潜在能力を最大限に引き出す」と強調した。

SAPの基盤モデル「RPT-1」を開発した理由

 SAPが新たに発表した基盤モデルのRPT-1は、AI分野における最大のトピックとなった。RPTは「Relational」「Pre-trained」「Transformer」の頭文字を取った名称で、「ラピッド」と発音される。SAPは2年前のTechEdで基盤モデルの開発に言及しており、今回ようやく正式発表に至った。

SAPのPhilipp Herzig氏
SAPのPhilipp Herzig氏

 RPT-1は、SAPがスタンフォード大学との共同研究に基づいて開発した2本の論文をベースにしている。SAPの最高技術責任者(CTO) 兼 最高AI責任者でExtended BoardメンバーのPhilipp Herzig氏は、同社の「AI Foundation」では主要なモデルをサポートしているものの、「ビジネスに必要な予測機能が欠けていた」と開発の背景を説明した。

 配送の遅延予測、アップセルの機会予測、顧客離脱の予測など、ビジネスにおける重要な予測は、従来の大規模言語モデル(LLM)では得意とされていない。これらの予測に必要なデータはテキストではなくテーブル形式であるため、特化型AI(ナローAIモデル)を使う場合には用途ごとにトレーニングが必要となり、手間とコストがかかる。

 そこでSAPは、少量のデータでも学習可能で、ビジネスデータを理解できるリレーショナル構造を持ち、GPUで数万時間のトレーニングを施したTransformerベースの大規模モデルとしてRPT-1を開発した。Herzig氏によれば、RPT-1は予測の品質においてナローAIモデルの最大2倍、汎用(はんよう)LLMの最大3.5倍の精度を持ち、処理速度は50倍、必要なGPUフロップスは10万分の1以下、消費電力は5万分の1以下と圧倒的な性能を誇る。

 RPT-1は「Small」と「Large」の2種類が用意され、2025年内にAI Foundationを通じて一般公開される予定。オープンソース版(OSS)はすでに「GitHub」と「Huggingface」で公開されている。

SAP RPT-1 SAP RPT-1
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 AI分野ではこのほかにも、AI FoundationにおけるPerplexityの追加、プロンプト最適化機能「Prompt Optimizer」の一般提供(GA)、欧州向けのソブリンAI「AI for Europe」など、多数の新機能が発表された。

 AIエージェント関連では、エージェント間の相互運用を目指すA2Aの初期実装を年内に実現することや、「SAP Integration Suite」のAPI ManagementにMCPゲートウェイ機能を追加することが発表された。これにより、「Joule Agents」が非SAPシステムのデータにもアクセス可能となる。

 さらに、AIエージェントの管理を一元化する「LeanIX Agent Hub」のGA、プロセスマイニングツール「Signavio」におけるエージェントマイニング機能「Agent Mining」の導入も明らかにされた。

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