「実は男」というトンデモ陰謀論を流しているのは誰? ブリジット・マクロン大統領夫人の闘い
大統領夫妻、オーウェンスを提訴
当然ながら大統領夫妻はオーウェンスの主張を否定し続けていたが、急増するフォロワーたちの後押しを得たオーウェンスの勢いは止まらない。彼女のYouTubeチャンネルの購読者数は400万人を超えるようについに2025年7月に大統領夫妻はデラウェア州高等裁判所にオーウェンスを名誉毀損及びそれに関連する22件で提訴した。ちなみにデラウェアなのはオーウェンスのウェブサイトがこの州で登録されているから。大統領夫妻は彼女に対して実質的な被害に対する損害賠償と懲罰的な損害賠償、訴訟費用の支払いを求めている。金額は明記されていない。
大統領夫妻は「オーウェンスは自分の主張に反する証拠をすべて無視し、マクロン夫妻が事実関係を正そうとする試みに応じないばかりか、それを嘲笑した」と裁判書類に記載している。また弁護士を通して声明を発表。「オーウェンスは当方の弁護士が繰り返し撤回を求めたにも関わらず、これらの虚偽を組織的に繰り返した。そのためこの問題を裁判所に託することが唯一の救済策であると結論付けた」と話している。
トランプ大統領を巻き込み、米仏関係に影響も?
マクロン大統領がオーウェンスとのバトルを法廷に持ち込まずに、できるだけ目立たずに解決しようと動いていたことは間違いなさそう。オーウェンスは2025年8月のインタビューでこの訴訟について言及。同年2月にトランプ大統領から電話があり、このトピックについてこれ以上話さないように求められたことを明かした。マクロン大統領はその前の月にアメリカを訪問、トランプ大統領と直接対面している(写真)。またトランプ大統領もフランスを訪問し、ブリジット夫人に会ったことがある。マクロン大統領がオーウェンスを説得するように依頼、トランプ大統領がそれに応じた可能性もあると見られている。
自称霊媒師&ジャーナリストも提訴
大統領夫妻はオーウェンスとの裁判との他に、ネット上でこの陰謀論を拡散する人たちへの対策をとっていた。たとえば自称霊媒師のアマンディーヌ・ロイと自称ジャーナリストのナターシャ・レイ。この2人も2021年にYouTubeチャンネルでブリジット夫人が男性として生まれ、手術をして今の姿になったという主張を繰り返していた。さらにブリジット夫人の兄(彼女たちの主張によると、女性になる前のブリジット夫人)ジャン=ミシェル・トロニューの個人的な情報も暴露した。ブリジット夫人とジャン=ミシェルは2人を提訴、フランスの下級裁判所は2024年9月に2人に対してブリジット夫人に8,000ユーロ(約140万円)、トロニューに5,000ユーロ(約88万円)の損害賠償を支払うように命じた。しかし2025年7月にパリ控訴裁判所がこの判決を覆し、2人を無罪に。2人がこの間違いを犯したのは「誠意から」だったとし、損害賠償は支払わなくてもよいとした。つまり大統領夫妻にしてみれば大きな敗北。オーウェンスは、この逆転敗訴がきっかけになり「大統領夫妻が戦略を転換している」と分析している。