ブラッド・ピット、ハーレーダビッドソンとのコラボによる最新カシミアコレクションを語る
2019年に高級ブランド、ゴッズ・トゥルー・カシミヤを立ち上げたブラッド・ピットとサット・ハリが、ハーレーダビッドソンとの新作コラボ、「直感的」なブランドの成り立ちを語る。 【写真5枚】ブラッド・ピット×ハーレーダビッドソンの世界観が注がれた最新カシミアコレクションをチェック!
映画『F1®/エフワン』でブラッド・ピットが演じるベテランレーシングドライバー、ソニー・ヘイズは、ブラッド・ピット本人とよく似た服装をしている。その理由は簡単。いくつかのシーンで、ヘイズは実際にピット自身がデザインした服を着ているからだ。 「(自分のデザインの)売り込みは遠慮なくしますよ!」と、ピットは笑いながら言う。ヘイズのシャツ(そして、言うまでもなくピットが普段着ているシャツでもある)は、彼が2019年に友人のサット・ハリとひっそりと共同創業した小ロットの高級ファッションブランド、ゴッズ・トゥルー・カシミヤのものだ。 着実に拡大を続けるプロダクトラインを、ふたりは共同でデザインしている。ある金曜日の午後、ピットとサット・ハリは西ロサンゼルスのオフィスからビデオ通話でインタビューに応じてくれた。オフィスは、古着ディーラーの散らかったウォークインクローゼットのような雰囲気だ。非常に高価なフランネルシャツを販売するブランドにもかかわらず、その舞台裏はかなりDIY風である。 ピットはこのビジネスを「ガレージバンド」のようなものだと言う。「正直なところ、好きなことをやるだけやって、その日は終わりという感じです」。話の途中、ピットはテーブル越しに手を伸ばし、いくつかの生地見本をいじり始めた。「すみません、いい色の組み合わせが見えてしまって」 ■ブラッド・ピット×ハーレーダビッドソン 荒削りながらも、この“ガレージバンド”はよりビッグな舞台へと躍り出ることになった。ハーレーダビッドソンとのコラボレーションによるカプセルコレクションには、カシミアニット2点、チェック柄のカシミアスナップボタンシャツ、そしてメカニックジャケット(裏地はもちろんカシミア)が含まれる。おそらく史上最もラグジュアリーなライダースウェアといえるだろう。 ピットは、新たなコラボを着用した人々をハーレー主催のスタージス・モーターサイクルラリーで目にすることを期待しているのだろうか? 彼は笑って言う。「それはないでしょうね。展覧会のオープニングなんかで見かけられたら素敵ですよ」 ゴッズ・トゥルー・カシミヤはヘルズ・エンジェルスのようなバイカーギャングに向けたブランドではないかもしれないが、ハードコアなバイカーたちはピットも仲間のひとりだと主張する。なにしろ彼は、ミズーリ州でオフロードバイクを乗り回しながら育ち、今も熱心なライダーであるだけでなく、数台の希少なハーレーを含む博物館級のバイクコレクションを所有しているのだ。 「『パンヘッド』も、『フラットヘッド』も、『ショベルヘッド』も──。すべて揃ってますよ」と、彼は言う。これらは有名なヴィンテージハーレーのエンジンタイプのことだ。今年5月に『GQ』が掲載した『F1®/エフワン』舞台裏記事の動画で、ピットが旧型のハーレーに乗っていたのを覚えているかもしれない。撮影がニュージーランドで行われたため、彼はバイクを借りなければならなかった。バイクの主は、友人であり同じくバイクマニアのジェイソン・モモアだという。 ブラッド・ピットのハーレーコレクションは、彼が休日に糸の番手について語る理由をまた別の角度から説明してくれている。生粋のファッションオタクである彼は、クラフツマンシップと高水準のデザインさえ伴えば、様々な分野に夢中となるのだ。サット・ハリとともに訪れたミルウォーキーのハーレーダビッドソン博物館で、ヴィンテージのライダースウェアのコレクションを掘り起こしてインスピレーションを得た思い出を語る彼は、興奮を隠せない様子だ。 「それがスタート地点みたいなものでした。うんと昔から愛されてきたクラシックでごくアメリカ的なチェックシャツを、ラグジュアリーに格上げしたんです。1世紀にわたりアメリカの一部であり続けてきたマッスルマシン文化を、高級感あふれるものに変えるという発想が本当に楽しかったんですよ」 「ハーレーはまさに伝統の象徴。すべてが芸術的で細部までこだわって作られている。私たちも同じことをしていると思います」と、サット・ハリは付け加える。 ■直感がもたらした運命のブランド ピットは、アパレルブランドを共同経営するようになって「朝の着替えがずっと楽になった」と冗談めかす。「Instagramで昔の自分の写真を見かけると思うんです。『マジかよ……こんな格好してたのか?』ってね」。しかしピットのこの副業についてより深く説明すると、それは運命だったということがいえる。 陶芸制作や家具デザインも含まれるピットの創作活動のなかで、ゴッズ・トゥルー・カシミヤには最も意外な背景がある。サット・ハリはジュエリーデザイナーであり、長年レッド・ホット・チリ・ペッパーズに帯同してきたホリスティックセラピストでもある。彼女とピットは共通の友人を通じて知り合った。「ちょっと治癒が必要なことがあったとき、彼女が来て治してくれました。それですぐに親友になったんです」と、ピットはふたりの出会いを振り返る。 サット・ハリは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのアンソニー・キーディスが回顧録で「カブスカウトの指導者のような存在」「究極の相談相手」と評した人物だ。彼女は、ゴッズ・トゥルー・カシミヤの種は夢の中で蒔かれたと回想する。彼女の夢の中でピットは、頭からつま先まで緑のカシミアで身を包み、「人生にもっと緑と柔らかさが必要だ」と語ったという。サット・ハリが2日後にこの夢をピットに伝えると、彼は全く同じことをスタイリストに言ったばかりだったと明かした。「前日に私が発した言葉そのものでした」と、ピットは言う。 長い髪をなびかせたサット・ハリからは、Zoom越しでも知的な佇まいが伝わってくる。彼女は夢を前兆と受け止め、完璧なカシミアシャツを探し始めた。「ただ彼に温かく心地のいい、温もりを与えてくれる素晴らしいシャツを贈りたいと思っただけです。緑色のものをね」 「着ると安心するようなシャツですよ」。そう話すピットは日焼けした肌に口髭を生やし、緑のTシャツとパンツを纏っている。「緑色は確かに好きです。嘘はつけません」と彼は言いながら、マウンテンバレーの(緑色の)ボトルに入った水を一口飲んだ。 サット・ハリはすぐに、自分の探しているようなシャツは存在しないことに気づいた。そこで彼女は、自身のジュエリー制作の経験を活かし、7つのチャクラを象徴する7つの宝石ボタンを付けたシャツを自分で作り出した(ハーレーダビッドソンとのコラボで作ったフランネルシャツには、「グラウンディング効果のある石」だと彼女が言うカーネリアンが装飾されている。) 「彼に渡したとき、私は『ビジネスを始める』と言いました」と、サット・ハリは振り返る。「彼は『君と一緒にやりたい』と言ってくれました。それが始まりというわけです」 始まりは夢というロマンティックさからデザインプロセス、ハーレーとのコラボレーションに至るまで、ゴッズ・トゥルー・カシミヤは直感に導かれたビジネスに感じられるという私の指摘に、ピットはこう答えた。「それよりも深いものだと言っておきたいですね。といっても、(直感を)軽んじているわけではありませんよ。私は何でもそんな風にやってきましたから。映画選びもそう。ピンとくる、理解できる、やる。大抵はうまくいくし、失敗した場合はそこから学び、次の作品に活かす。常にそういう視点で動いてきました。チェスの盤面を理解しようとするよりもね」 2020年にゴッズ・トゥルー・カシミヤが正式にローンチした当初、ピットは自身の関与を表に出さず、そのベルベットのようなシャツの数々はロサンゼルスのブティック、ジャスト・ワン・アイでのみ販売されていた。セレブリティが関わるファッションビジネスの多くと異なり、必ずしも大規模なビジネスに成長させる意図もなかった。「あなたが今話している相手は、別に5カ年計画を立てていたわけではありませんよ」とピットは語る。「どんな風に転がっていくか見てみよう、という感じでしたね」 ハーレーダビッドソンのような大企業と実際に協業できる段階に至るまでには、想像以上の困難が伴った。ライン立ち上げ時に何を学ばねばならなかったかと尋ねると、サット・ハリは即座に答えた。「文字通り“すべて”です」。彼女は型紙の作り方を学び、価格設定をタクシーの後部座席でナプキンに書き出した(生地によってシャツ1枚が約2000ドルから3000ドル以上になる)。「生産体制やら工場やら」と、ピットはため息交じりに言う。サット・ハリは付け加えた。「最初の2年半はウェブサイトもなかったし、Instagramすらありませんでした」 もちろん、ピット効果と品質(シャツの肌触りは天にも昇る心地よさである)、そして「知る人ぞ知る」というエクスクルーシブさが相まって、ゴッズ・トゥルー・カシミヤは大成功を収めた。ブランドは昨年1000万ドル規模の売上を達成し、現在50店舗以上で展開中。シャツ類に加え、アウターやパンツ、今秋ローンチしたリネンラインへと拡大を続け、さらに新たな素材カテゴリーも準備中だ。 予想外の成功が、この“ガレージバンド”にプロ意識を芽生えさせた。ふたりには今や5カ年計画があり、より大きなスタジオへの移転も計画中でいる。ピットによれば、数枚の美しいチェックシャツで始めた当初、もしこれがつらく退屈な日常へと変貌したらやめることをお互いに確認し合ったという。 「成長は確かに負担を増やしましたが、それでも楽しさは変わりません」と、サット・ハリは言う。 「そういう面も受け入れました」と、ピットも同意する。 ゴッズ・トゥルー・カシミヤのデザインプロセスは今も変わらない。直感したら、実行する。ハーレーとのコラボではどんな人物像を念頭に置いたのか、私はふたりに尋ねたが、答えは既にわかっている気がする。 「私です!」と、ピットは答えた。 From GQ.COM By Samuel Hine Translated and Adapted by Yuzuru Todayama