おはようございます、自宅の書斎から杉本です☆
『SAGBがよくわかる本』の連載がついに最終回を迎えましたね。
書き上げたばかりではありますが、記事を読み直したうえで田林さんと相談をして、改稿作業をはじめました。
より分かりやすいものにすると同時に、説得力や納得感を高めるために、さまざまな工夫をしていく方針です。
さて、4週間前と3週間前に私は、2回にわたって「運」の記事を書きました。
新作告知などを優先したために間が空いてしまったのですが、実はその記事は3回にわたってのものでした。
その記事を書くキッカケになったのは『SAGBがよくわかる本』の配信記事を読んでいたことでした。
めちゃくちゃマニアックな記事で、トンネルズ&トロールズ(T&T)がお好きな方のために発信したものです。
◆ケン・セント・アンドレの思想。
私が大好きなTRPGに、「トンネルズ&トロールズ(T&T)」があります。
作者であるケン・セント・アンドレの思想をうかがうことのできる言葉が『SAGBがよくわかる本』にも登場しました……次のくだりです。
(以下引用)
TRPG『ストームブリンガー』の作者ケン・セント・アンドレは、生まれ表が平等でないというプレイヤーの指摘に対し、「現実も不平等なもので、それが楽しいのさ」という発言をしており
(以上)
これは、ケン・セント・アンドレがデザインした別のゲームに関する発言です。
「生まれ表」と呼ばれる、キャラクターの出自を決める表の結果に、いいものと悪いものがあるという部分に対するものです。
◆能力値の決め方。
古い時代のファンタジーTRPGでは、能力値がサイコロによって決められました。
このやり方と対をなす決め方は「ポイントバイ」と呼ばれるもので、プレイヤーに一定のポイント(数値)が与えられ、そのポイントを使ってキャラクターの能力値、技能、特殊能力などを「購入」するというシステムです。
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をはじめ、最近ではサイコロによって決められるやり方よりも「進んだ」システムである考える向きがあるようです。
しかし、この「すべてのキャラクターが同じスタートラインに立っている」という思想は、ケンの「不平等が楽しい」という思想とは根本的に異なっています。
このあたりT&T完全版には葛藤らしきものが見られます……「ポイントバイ」のシステムはオプションルールとして導入されていますが、基本ルールとしてはサイコロを振ってキャラクターを作成するほうが採用されています。
◆T&Tと「武器表」。
話はいったん飛ぶんですが、T&T第5版のルールブックには、実に多彩な武器が登場します。
T&T第5版の武器には「使う際に振ることができるサイコロの数」と「固定で与えられる修正値」があり、その武器を使うための「必要体力度」と「必要器用度」が設定されています。
これに「価格」と「重量点」が加わって、さまざまなバリエーションを生み出しています。
一般的にみてファンタジーTRPGでは、「強い武器は値段が高く、必要な能力値が高い」ようにデザインされています。
しかし、T&T第5版で登場する武器は、必ずしもそうはデザインされていません。
たとえば、テルビューチェという武器はサイコロ3個+5の攻撃力を持ち、必要体力度6、必要器用度10の武器です。
これに対して、フォイルという武器はサイコロ2個+1の攻撃力を持ち、必要体力度7、必要器用度14です。
攻撃力はフォイルのほうがサイコロ1個+4ほど低く、必要体力度は1高く、必要器用度は4高い。
価格は金貨15枚ぶん安く、重さも20重量点ほど軽いので、フォイルのほうが単にコストパフォーマンスが悪いとは言い切れませんが……必要な能力値だけを比べるとき、どちらを選ぶかは一目瞭然です。
このように、T&T第5版の武器には「この武器が素晴らしい」というものがあります。
片手半ブロードソード、フォールチョン、テルビューチェ、ウォーハンマー、クックリ、ダークあたりが、「使いやすさの割に強い武器」であることが、ヘヴィなプレイヤーの肌感覚として染み込んでいます。
数字以外のメリットがある武器(魔法を封じるものや、相手の武器を破壊するものなど)もありますが、「この武器は買わないよなぁ」と思うようなものもあります。
たとえば、サックスはクックリと同じ短剣ですが、クックリと同じ攻撃力を持ち、クックリよりも必要体力度と必要器用度が高く、重く、価格が高い武器です。
このように、ケンは武器そのものに対しても、ごくごく当たり前のように「不平等」なまま、おそらくは目についたものをどんどんゲームの世界へと導入して、武器表を作りました。
ケンの思想は一貫していると私は思います。
一見異なることのような、3つの事柄……「生まれ表」「ランダムな能力値」「武器のバリエーション」……それらはすべて「ありのままの姿」、言い換えると「ゲーム的に歪めない世界」を描き出したいという欲求に基づいて、作られていると感じるのです。
ゲームを制作する際、「ゲーム的に成立すること」を優先することを考えると、何かを「歪める」ことでそれを成り立たせることへの誘惑が起こります。
たとえば、武器表を作るとき、私なら短剣、小剣、長剣という並びの武器に対して、強さを一段階ずつ(たとえば、修正+1、+2、+3というように)並べることを、してしまいます。
ケンのデザインは、おそらく根本から違っていて……武器の強さをその本当の威力や扱いやすさに基づいて、決めているのではないかと推察しています。
ゲームにおいて大切なことは「楽しむこと」であると、ケンは言います。
それはつまり、キャラクターが強いか弱いかはそれほど大事ではない、ということです。
だから武器も「ゲーム的な都合」を基準にしたのではなく、「ありのままの姿」の中にゲーム性が内包されている……そんなデザインであるように、私には感じられました。
ケンのような立場に立つなら、キャラクターづくりに「運」のよしあしは存在しないのだろうなと、思った次第です。
◆余談。
T&Tの第5版では、安い防具を部位ごとに揃えると、大枚をはたいて完全鎧を購入するよりもずっと安いという現象が発生します。
「完全鎧」と「部分鎧の寄せ集め」の差は見栄えにしかないという話に対して、子どもの頃に聞いた際は「なんだそりゃ」と思ったものです。
しかし、最近になって、その意味がよく分かるなと思うようになりました。
たとえば、趣味で登山をする場合、同じメーカーですべてを揃えようとすると、思わぬ出費が生まれることがあります。
すべての道具を同じメーカーにするというこだわりを持つと、周囲からは「すごい」と言われ、時に尊敬を得ることもあります。
しかし、高くつく。
現実的なことを言うならば、アウトレットで購入できたもの、友人から譲り受けたものなど、さまざまな方法で安く済ませることができるからです。
完全鎧は基本的に、見た目がいい以上のメリットがない(※)。
その「見た目」を、重要視するのかどうかという話なのかもしれません。
※……プレートアーマーだけは例外で、部分鎧では出せない防御点があります。
◆まとめ。
武器は好きなものを選んでいいし、防具はカッコつけたいなら完全鎧を選んでいい。
そう思い至るのに、35年もかかってしまいました。
それではまた!
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