(社説)再審法制の整備 早期救済 はかれる姿へ
命を奪われかねなかった冤罪(えんざい)被害を機に、制度を見直す議論が始まった。どうすれば速やかに救えたのか。その原点を忘れてはならない。
刑事裁判をやり直す「再審制度」の見直しに向けた法制審議会の部会での議論が一巡した。委員らの意見はわかれる。見直し全体が改悪になるのではとの懸念も出ている。
再審は誤判を見つけ、正すことで無辜(むこ)を救済する制度だ。だが手続きの進め方に関する具体的な規定が刑事訴訟法にはない。裁判所の裁量が大きく、担当裁判官の姿勢が積極的か消極的かが、救済につながるかどうかを左右する面もあり、「再審格差」があるとも指摘されてきた。
法務省は長く、見直しには消極的だった。流れを変えたのが、静岡一家殺害事件で死刑確定者として40年以上過ごした末、再審で無罪となった袴田巌(いわお)さん(89)の存在だ。
議論の最大の焦点は、証拠開示のあり方だ。法曹三者や学者の委員からも、条文に明示することに異論は出ていない。問題は、裁判所が検察官に開示を命じる範囲だ。
議論では「再審請求理由と関連する証拠」に限る意見がある。弁護側が提出する新証拠と主張に関連する範囲だけに絞って開示される想定だ。一方、より対象を広げるべきだとの意見も出ている。
再審開始には「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」が必要だ。過去には、長く存在が明かされなかった証拠が再審請求後に開示され、埋もれていた「新証拠」として、再審の扉を開くことがあった。
実際、袴田さんが再審無罪となる決め手になった「5点の衣類のカラー写真」は最初の再審請求から約30年、開示されなかった。こうした具体的な事例をもとに、過去の冤罪が浮き彫りにした制度の不備が新たな仕組みで正されることになるのか、綿密に確認しながらの議論を求めたい。
法制審の議論でもう一つ気がかりなのは、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てについて、現状通り必要だと訴える意見が少なくないことだ。だが、不服申し立てにより再審の前段階が長引き、救済が大幅に遅れる事例もある。不服なら、再審を開いて有罪立証を尽くすのが筋である。見直しは不可欠だ。
法制審は年明けにも答申案をまとめ、法務省は来年の通常国会に法案提出をめざす。一方、超党派の議員が、幅広い証拠開示規定や検察官の不服申し立ての禁止を盛り込んだ法改正案をまとめ、その法案を既に提出している。国会は、冤罪を真に救済できる制度に整えなければならない。
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